企画から診断・実行へ目を向けよう〜組織変革と人材育成の取り組み〜
組織変革や人材育成の取り組みに注力しようとする組織が増える一方で、それがなかなかうまくいかないという話もよく耳にする。大前提として、組織や人を変えていくことは容易ではないという話がある。組織や人が長年かけて形成してきた文化やスタイルはそう簡単には変えられず、「うまくできないのは当たり前」だと思っている。そういった大前提がありつつも、組織変革や人材育成の取り組みにおいて陥りがちだなと感じるパターンがある。「診断」「実行」に目を向けず「企画」にばかり目がいくというパターンである。
診断と企画と実行
組織(OD)や人材(HR)の取り組みには、1.診断 2.企画 3.実行 の大きく3つのプロセスがあると思っている。「診断」は現状の組織や人材の状態を客観的にモニタリングし、課題を特定するプロセス。「企画」は特定された課題に向き合い、課題を解消するための施策を設計するプロセス。「実行」は設計された施策をきちんと作用するように適切に実行していくプロセスである。
ODやHRについて相談があるとき、大抵の場合、スタート地点は「企画」の話であることが多い。「...みたいな課題があって、だから...みたいな取り組みが必要なんです。何か具体的な施策を提案してもらえませんか?」といった感じだ。こういったときは必ずまずは診断をすることを提案する。具体的には社内外の関与者へのアンケートやインタビューなどを行い、そこから課題を再定義するようなプロセスである。クライアントの担当者は「何をやるか」という企画の話題に関心が行きがちで、実は課題に関する情報が散漫で整理されていないということがよくある。もっと言うと担当者の思い込みや恣意的な意図によって課題設定がなされていることもある。なんとか担当者を説得し、診断のプロセスに進むと事前情報とは全く違う実態が浮かび上がってくる。こうして初めて本質的な課題が特定される。課題がきちんと特定され、メンバー間で共有されれば、課題に対して何をすべきかという企画のプロセスが正確で効率的になり、結果としてODやHRの活動のパフォーマンスが上がる。(実際には課題が特定されてもそれに真摯に向き合おうとしないケースも多いけど…)
そしてもう一つ、「実行」への関心が薄いケースも多い。ODやHRの活動は、本来とてもタフな取り組みで、実行フェーズにおける推進者のパッションが欠かせない。ところが実際は、美しい取り組みをプランニングするところにモチベーションがあり、実行に対する熱量が低いということがよくある。こういった実行力の低さが引き起こす問題は、その取り組みが失敗に終わることだけではない。取り組みそのものが否定されてしまうことに繋がるという意味でも損失が大きく、その後の活動にも影響を与える。のちに同じような取り組みをしようとしたときに「前にやったけどダメだった」というレッテルを貼られてしまうことになるのである。
結局のところ、診断・企画・実行の3つの工程を順番に丁寧に進めていくこと、そして3つの工程が一連のパッケージとしてきちんと繋がっていることが重要なのである。ODやHRの活動に取り組もうとするとき、「企画」偏重になっていないか、きちんと「診断」は行ったか、本気で「実行」に向き合えているか、をチームでよく話し合ってみてほしい。組織変革や人材育成の取り組みは非常に難易度の高い取り組みではあるんだけれど、まずは診断・企画・実行のプロセスを丁寧に進めていくことで、解消される問題は多いと思う。