図22

学びのデザイン〜「動機づけ」と「体験」と「振り返り」〜

研修や教育系のワークショップでよく起こってしまう問題として「学んだ内容を自分たちの仕事にどう応用すればいいか分からない」「研修を受けたその日だけ盛り上がって満足する」「上司の命令で仕方なくセミナーや研修に参加する」…などがよく聞かれる。人に教えることが決して得意でない僕が、研修やワークショップでこれらの問題を起こさないために大事にしているのが「動機づけ」「体験」「振り返り」という三構造で考えるということだ。この3つをきちんと押さえれば大きな失敗はしないし、逆にうまくいかないときは3つのうちのいずれかに問題があることが多い。シンプルで当たり前のように見える簡単なエッセンスだけれど、簡単なだけに初心者には分かりやすいと思うし、経験豊富な研修講師やワークショップデザイナーにも共感してもらえるんじゃないかと思う。

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<動機づけ>〜主体性を植え付ける〜

プログラム冒頭での導入部分で、参加者への動機づけを丁寧にやるようにしている。なぜ自分がそれを習得しなければいけないのか、といった目的や背景を論理的にきちんと理解させると同時に、それを学習することに前向きになってもらうような仕掛けを入れることを心がけている。受講者本人が「学んでみたい!」「これを学ぶとこんなことができそう!」みたいな学習への前向きなモチベーションを持ってもらうことが大切だ。なので、ワクワクするような刺激的で楽しい話を入れたり、ちょっとしたエクササイズを入れたり、笑いの要素も入れたりしながら、その場のムードを盛り上げることも意識しながらやっている。

動機づけが重要なのは、学びに対して本人が主体性を持つことこそが学習効果を高めるからだ。研修講師がいくら分かりやすい指導をしたとしても参加者本人が受け身だと効果的な学びにつながらない。それどころか研修講師が話せば話すほど、主導権は講師へと移り、教える側と教わる側の関係性・構図が強化され、参加者は受け身で待つ姿勢になってしまう。逆にいうと「動機づけ」が完璧にできれば、その後は研修講師が何もしなくても参加者自身が主体的に学んでくれるようになる。

<体験>〜具体から抽象へ〜

抽象は具体からしか導き出すことができない。スポーツでも「親指の付け根に力を入れて…」といくら言葉や知識でインプットしたとしても、その感覚は身につかない。実際に体を動かしてやってみて肌感覚として体感することで初めて「親指の付け根に力を入れて…」の意味が理解できる。ビジネスにおける学びも同様で、具体から抽象を理解させる学習構造をつくることが重要だ。

指導の上手な研修講師は「具体」がまず先にあり、その上で「抽象」を理解させる。逆に指導が下手な研修講師は「抽象」をいきなり教えようとする。トレーニングで習得を目指すスキルや知識は、その本質を追求すればするほど抽象的で概念的な「原理原則・理論」の形になっていく。しかし本質的な原理原則・理論はそれだけではその意味を理解することができないため、まずは「具体の学習=実体験」が必要なのである。

<振り返り>〜学びを定着させる〜

振り返り(=リフレクション)も研修や教育プログラムの構造において重要なプロセスだ。研修やワークショップの中で、どんなことから何を学んだのかを振り返っていく。気づきや発見は何か?難しかったことは?分からなかったことは?どうすればうまくできたか?…などなどその日一日の学びを丁寧に振り返る。個人で内省しながら振り返ってもらい、その後にペアやグループで共有するのがオススメだ。

この振り返りによって、学びを一般化させ、汎用的に再現できる知識やスキルとして定着させていく。そして最後はこの一般化されたエッセンスを自らの業務や所属組織に当てはめてどう活用できるかを考えていく。具体から抽象へ、そしてまた具体へ、というプロセスによって振り返りをしていくのである。

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「動機づけ」と「体験」と「振り返り」。まずはこれまでにやった、あるいはこれからやる研修やワークショップについて、ぜひこの三構造の切り口で考えてみてほしい。

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