
#11和食居酒屋での修行の日々
こんにちは。
49歳男性、起業して30年の経営者です。自分の失敗談、体験や考えなどを綴っています。
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2005年、それまでの個人商店から法人化をします。
当時僕を除いて社員は3名。
飲食業への進出を決めます。それまで飲食店での接客経験はあるものの、飲食のマネジメントなんて何もわかっていませんでした。
そこでせめて飲食店をやるには修業が必要だろう、ということになり・・僕は和食屋へ、一人はBarへ。一人は洋食屋へ修行という名のアルバイトを兼業としてすることにしました。
それぞれ仕事が終わってからの、夕方からの深夜の仕事。3人とも結構辛い6か月間だったと思います。その中でも経営者の僕は必死でしたので、労働時間も社員並みに8時間10時間と働いていました。
僕が体験した和食屋は和食屋という名の焼鳥居酒屋でした。
肉は焼かせてくれませんでしたが、仕込みの大切さと料理の奥深さを教えていただきました。僕は未経験だっただし巻き卵づくりに苦しみました。
来る日も来る日も・・・毎日何十個と卵を割って、作って、の日々でした。
その他は基本的には料理を作る前の野菜カットや生地作り、肉の切り分け、魚の下処理・・・仕込みにあたるものでした。どれもが大変でしたが、仕込みあっての飲食店ということを1から学べました。
ただ、肉は焼かせてもらえませんでした。店主が絶対に焼き係でした。
どうして肉を焼かせてくれないのか・・・悲しみと悔しさを通り越して怒りさえ当時は覚えていました。花形というか、店の一番の売りは店のオーナーが直接焼いている姿を見せ、コミュニケーションする、、、これが売りなわけですから、オーナーがバイトにやらせるわけがないのですが^^;
仕込み仕込み仕込み、、、料理の基礎を徹底的に学べたこの経験は、のちに僕の大きな財産となりました。
そんなある日。
僕はいつものように早出をして店の掃除から始めていました。
タイムカードを切ったものの、このタイムカードの機械は1日で時間が狂ってしまいます。毎日時間を合わせるのも僕の仕事の一つでした。
そうして、時間を合わせて、一生懸命、感謝の気持ちを込めて掃除をしていました。
しばらくして、まだ薄暗い店内で掃除をしていると・・・
通りの反対側の喫茶店に、店主がガラス越しに見えました。
ん?見ている、という感じではありませんでした。
どうやら通りの向こう側からこちらを「監視」しているようでした。
その時はなぜかピンと来たのです。
あれ??タイムカードの時間をずらしていると疑っているのかな!?
まさかな・・・
翌日、僕はいつもより10分早く店に行きました。
(いろんな疑問を解決するためだったのか、僕はごまかしていないという気持ちだったのか。いまとなっては正直覚えていません^^;)
すると、店の中に大きく足を開いてドーンと座っている近所の同業者の店主がいるではありませんか。
彼は店のオーナーの友達です。
びっくりした僕が「ど、ど、どうしたんですか!?こんな暗い中で・・・」
すると彼が言います。「やっぱりね。俺は違うって言ったんだけど。彼(店のオーナー)が君(僕)がタイムカードを操作して出勤時間を誤魔化している、っていうんだよ。だから、俺が今日それを確かめに来たんだ」と。
やっぱりオーナーは店の反対側から偶然ではなく、僕を監視していたのでした。
彼とはやっていけないな
当たり前ですが、僕なりに一生懸命掃除をし、仕込みをし、少しでも店のためにも貢献をしてきたつもりでした。それが終わりに近づいていることを予感させる出来事でした。
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和食居酒屋での修業の日々は、仕事に対する向き合い方、仕込みがいかに大切なことか。経営者としての顔を広げることの大切さ、、、色々なことを学ぶ貴重な経験をさせていただいた6カ月でした。
仕事を1日フルに働いてから、さらにフルに働くわけですから、それはそれはキツい日々でした^^;
ただ、山手線で人目も気にせず仕事終わりの朝方に飲むビールの味は今でも忘れられません(今だとかなり迷惑ですが、当時は誰も気にしていませんでした→いや、当時も迷惑だったでしょうね。すみません)
いろんなことを学んだけれど、経営者として従業員にどう向き合うべきか。それを学べたことが一番大きな収穫でした。
そう思うと、僕は「監視」していた彼が少しかわいそうになりました。多分店のアルバイトの中でダントツに意識高く仕事をし、働いていた僕さえも、疑ってしまう、疑いの目を向けてしまう、、、そういう彼は、人というものを根本信じていないんだろうな、と。
もしかすると、たくさんの嫌な経験を積まれたのかもしれません。それがそうさせていたのかも、、、
でも、、、
違うな。
僕はそう思いました。
6カ月後、僕は満を持して赤坂に和食料理屋をオープンします。
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僕の開いた和食料理屋については、また後日お話したいと思います。
「人」がいてこその経営者。
ただ、経営者は、その「人」に翻弄され続けるのも、また事実です。
後に僕自身も揺らぎ、振れることになるわけですが、人を信用し、任せることの大切さを実感した期間でした。
切っても切れない従業員との関係。経営者のストレスの大半は、従業員の扱いに対するストレスなのだと思っています^^;
目の前の刺身を見ながら、ふと思い出す修業の日々のことでした。