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ショート小説

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5分程で読める『#ショート小説』と、1000文字ぴったりの小説『#1000文字の物語』を書いています。
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#ショート小説

#1000文字の物語『手ぶらの友達』

 帰宅する人々が行き交う駅の改札前で、俺は友達と待ち合わせた。 「すごいな、都会は。祭りでもやってるのか?」 「なんだ、その田舎者のテンプレみたいな台詞は」 「いや、言ってみたかったんだよ。あるだろう? そういう言葉」 「え、無いよ」 「ほら、例えば『レギュラー満タンで』とか」 「いや、無いだろ」 「『私と仕事どっちが大事なの⁉』とか」 「無いよ。てか荷物は? 手ぶらで来たのか?」 「まぁな」 「凄いな。とりあえず行こうぜ、いい店知ってるんだ」 「あ、いいね、それ!『いい店

#1000文字の物語『次の駅で降りた。』

 ゆりかごのような心地よいリズムが繰り返されている。目の前にある窓には、左から右に、捉えきれない速度で景色が流れている。  ガタン、ゴトン、という音が、一定の間隔で耳に届く。寝過ごしたことに気づいたのは、その音が聞こえ出して数秒後のことだった。  電車内に人はいない。どこを走っているのだろうか。窓から見える景色には、まるで見覚えがない。  煌めく海。そして港町。かもめが優雅に空を泳ぎ、電車の音にかき消され、聞こえないはずの波の音が、私の耳にはしっかりと届いている。  

ショート小説『外の世界へ。』※1700文字

この世界はせまい。 たまたま入った飲食店で親戚が働いていたり、ゴルフ場で出会った人が取引先の社長だったり。 ただ、今はそんな話じゃない。僕のいる「この世界」の話をしているんだ。僕のいる「この世界」、ここは物理的にせまいんだ。 ただこのせまい世界には仲間がたくさんいる。何故かみんな集まって同じ暮らしをしている。同じような日々の繰り返し。 そして、この世界にはルールがある。みんなが「神」と呼ぶヤツ。時間は決まっていないけど、だいだい明るい時間に「神」が上から食料を降ろして