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機械式フィルムカメラ Nikon FM10 彼女の娘へのプレゼントで欲しくなった。


Nikon FM10 ズームレンズキット

⒈彼女の娘、カメラに興味を持つ。
ペンタックスLXを買って、その後、山にも行かなくなり、写真から離れた。
就職後は障害馬術と馬場馬術、フリースタイルカヤックに狂ったということもある。

そして、いつしかカメラはカメラ屋さんではなく、大手家電量販店にならぶことになった。

カメラに全く興味がない女子中学生だって、ヤマダデンキには行く。
で、カメラって結構、誰でも通る所に陳列されてたりする。
そして、ふと、スマホに付いているカメラよりも優秀なカメラ自体に興味を持っちゃう子も出てくる。
子供って、自分が買う用事が無くたって、親に連れられてくる事も多いしね。
暇だし、ちょっと、そこにあるカメラでも触ってみようかな?
って、手にする子供も出てくる。
そこに詳しい販売員がやってくる。

私の彼女の娘もそんな感じだった。
驚いたのは販売員はそこにないより機能性に富み、値段の高い機種を勧めるのではなく、そこにある可愛い色の安いエントリーモデルをシキリに推すことだった。この瞬間に娘が欲しくなってお金を出す親がやってきた時に
「あら、うちの娘ってこんな事に興味あったんだ。これくらいなら買ってあげようかな?」
と思わせる?取り寄せている間の時間に冷める事を警戒している?「そこにある」そのものに対する欲望で買わせる?。。。って、そんな甘くない。
世の中のお母さんがこういう時、どう言うか知っている。
「あんた、こんな高いの買っても使うの?スマホのカメラでいいじゃない。」

私に子供はいないし、姉妹もいない。
が、周りのお父さんは口を揃えて言う。
「女の子は生まれた瞬間からオンナだ。。」
元々、彼女の娘、特に長女の方は家庭内で孤立していた事もあって、私は可愛くて可愛くてしょうがなかった。
娘はママにじゃなくて、私に問う。

「ね、どう思う?」
「欲しいの?」
「わかんない」

あ、買ってあげたい。いかん。販売員の口車にのせちゃいかん。え、今、カメラってこんなにするの?って私自身思ったし。

「どれがいいか、わかんなくて」

え?

「でも、友達はこれがいいって」

今、ここの売り場に居るってたまたまじゃないってこと?

同期が社内結婚していく中、つくづく思うのは、女性って例え会社を辞めたって、コミュニティは継続され、そこでの情報網と絆はいつまでも凄まじいということ。専業主婦になったのに旦那の人事を本人が知る一年も前に知っていたケースすらある。

娘はスマホの画面を見せてくれた。

さっきまでいじっていたカメラによく似ている。しかし、色は黒く、より上級種の雰囲気を醸し出していた。
が、カメラから長く離れてはいても、レンズ交換式でもなく背面液晶のみでファインダーすらなかったそのモデルが、本格的上級カメラでない事はわかった。
私は仲間がいるなら趣味としても続くだろうと思ったし、カメラコミュニティに入れてあげたいって思った。よく知らないけど、コミュニティ内で同レベルの機材の方が上手くいくかもしれない。
自分と同様に夢中になって欲しいなんて気持ちはこれっぽっちも無かった。

「これは置いていないの?」
「すいません、置いてありません。」

もっと凄いカメラ置いてあるのに。

そして、どういうやり取りがあったか忘れちゃったけど、上位モデルは差し置いて、さっきまで娘がいじっていたカメラを私はいじくり、販売員を質問攻めにする。これ、出来ないの?これはどうなってるの?

うるさいママの彼氏だ。。そういうことを求めているんじゃないのに。

そう思ったかどうか知らないけど、後に「ふつう、そこまでするぅ?って思った。」といわれる事になる次のことで、娘の私へのカメラ技術信頼度が爆上がりすることになる。

初期のカラー液晶って、日向で殆ど見えなくなることが多かった。
ズームってどうなんだ? しかも、光学式とデジタル式の併用。

「ちょっと1時間くらい外に持ち出して、試させて? これとこれの二つ。」
「それはちょっと。。。」
「何で?」
「。。。」
「わかった。
 ヤマダデンキって社長と店長とどっちに権限持たせてる? 
 繋いで?
 交渉するわ。」

モンスターカスタマーだ。今だとカスハラって言われるかも。
でも、責任の所在がはっきりしているアメリカなんかでは企業と国防上に関わるような重要な話をこちらに有利に詰めたい時は、直接の相手と責任や秘の管理をしている人間と両方にこちらが何を望み、どうしようとしているのかを明確にしておくのかは常識だ。

結局、直接、社長や店長に交渉することなく、免許証を預けるだけで、さっきの機種、似てるけど異なる画角のズームレンズに交換できる機種を借りることが出来た。交換レンズは無かったけど。

電池とメディアは何と販売員が個人所有しているものを貸してくれた。フォーマットまでして。
こればかりはマジで感謝しかない。
日本じゃ無かったらチップ弾んでるところだ。

液晶は意外と見れたし、自撮りの時にレンズ側に向けたり、ハイアイフォーカスやローアイフォーカス時に傾けて見れる裏面液晶は便利だと思った。レンズ交換が出来るモデルは光学ズームの範囲内で露出が変更出来て(その代わり露出変更したい時はシャッタースピードは自動的にオートという変わった仕様だったけど。)よかった。当時のiPhoneではボケ表現は出来なかったので、それが出来るのはポイントは高かった。中央でAFピントロックしてから構図を変えられるというのも良かった。全てをマニュアルでコントロールする事は出来なかったけど、逆に言うと全てをマニュアルでちゃんとコントロールしなければ、出来上がるものは悲惨だった時代で育った私にとって、写真を変えたいためにコントロールしたい項目はマニュアルで他はオートにするという潔さは新鮮で意外にいい写真をきちんと撮れるもの何だなと感心した。

娘は私の撮る画像の種類に驚き、借りている間ずっと質問攻めだった。
男の常で、その質問に対して理論的に何故、どうすればこうなるのかを得々と答えていったのだが、決して理数系の頭脳ではない女子中学生にとっては聞いているだけでも苦痛だったと思う。よく、男性と女性とでは会話に求めるものが違うって言いますよね。

結局、カメラはレンズ交換式のをママが買ってあげるんじゃ無くて、私が買ってあげていた。
その時に、涙を浮かべながら言った娘の言葉はいまでも思い出せばターンしてくる。

「ありがとう。ありがとう。ありがとう。大切にするね。カメラって凄いね。絶対辞めないから。」

⒉ 親じゃないけど、親の欲目?ちょっとウチの娘、すごいんじゃないの?
それから、彼女の家に行くと引きこもりがちだった娘がいない事が多くなった。
もはやお互いに顔馴染みになった娘の幼馴染と一緒に帰ってきて

「写真撮ってきた!見て!」

一週間分の写真を見せられる。(毎週土日は彼女ん家だった。)
幼馴染の彼女は写真を撮らないけど、例えば傘とかを彼女が投げて娘がそれを撮るとか、色んな方法、角度や色のライティングなど、娘の撮影アシスタントみたいな事をやらされているらしい。
驚いたことに、そのアイディアの殆どは娘からくるらしい。
指示を勘違いして起こった珍事とかを話すのは彼女の役目だ。

何故これをこういうふうにして撮りたいと思ったのか、出て来る写真は宝箱である。ちょっと普通じゃない。
そこにあるそのものを撮るというよりも、日常的なものを非日常な状態にしてその瞬間を撮るという事が好きみたいだ。
その非日常にするアイディアが面白くて。

「あきひでさんが居たら、何思うかなって考えると色んな事が浮かんでくる。」
「ふたりともオカシイから」

娘も娘の幼馴染もそういうけど、私と娘とは血繋がっていない。

「あきひでさんに全部教えてもらうって決めてるから。」

って、ある時言ったので、写真ごとの設定をメモしておく事と失敗した写真を消さない事を義務付けたら、膨大な量の画像とデータ、こうしたかったんだけど、どうやったら出来たの? って具合の質問が一日中。
ちなみに「こうしたかったんだけど」については自分で考えさせることを徹底して、その代わり、「こうなっちゃったね」という事についてはなるべく結果を肯定的に捉えてあげるようにしてました。
「こうしたい」の幅を広げてあげたいのと「こうなるはずだった」ことへの乖離を寧ろ楽しんで欲しかったから。
何で乖離したか、どうすれば意図どおりに出来たのかは、専用のノートに書き込んでいきました。毎週。向上意欲が高い。

でも、写真にそこまで真摯になれるのに、学校は簡単に休んじゃう。
困ったもんだ。
本当にお前、私と血繋がっていないんか?私も部活とバイクに明け暮れて中高はあまり学校いかなかったぞ。

⒊ そして別れ。
えっ?
ですよね。
はい。

写真撮影にまつわる3人の蜜月(?)は女子中学生だったあの時から始まって、実に女子大生になるまで続きました。
にも関わらず、私自身が彼女達の撮影現場に赴くことも、私がスマホ以外のカメラを買うことも無かったんです。何故か。あんなに娘に影響されたのに。これはお金の問題じゃ無いです。稼いでましたから。
仕事や他で時間が取れなかったってのも無かった。
旅先や近くの公園でどんな写真を撮るか見てみたいってカメラを手渡されたりする事はあっても。
そういえば、そんなに娘の信頼を一身に受けながらも改めて写真を勉強するとか情報集めするとか、ってのもしなかったなぁ。全く。
口だけか!

彼女ん家は彼女、長女、末娘の3人でした。
彼女は末娘にベタっベタ。
末娘もママ命。
そんなわけで長女は多少浮いていました。
可哀想だったし、長女も戸惑うくらいひどく懐いてくれましたので、可愛がりました。が、無論、家族になるつもりだったので、長女と末娘への愛情のバランスは物凄く気を遣っていました。
末娘は写真に全く興味を示しませんでしたが、琴に興味を持ちましたので、当時、まだヴァイオリニストでもあった私はあらゆるコネを使って、普段なら幼少の弟子は取らない琴師、しかも、ともすればお稽古事で終わってしまいがちの邦楽の世界でワールドワイドで家族で邦楽をやっている人を先生に迎えたりしました。
それもいけなかったのかも。
長女の方はハープやっていたので、先生は他にいましたが、同じ五線譜音楽として、音楽面でもサポートが容易でした。
しかも、故郷の福井には青山ハープという世界屈指のハープメーカーがあり、当然のように懇意にしていました。
年も違ったし、やってあげられる事の幅が異なり、末娘は不満だったのかもしれません。早く結婚してしまえば良かったのかもしれませんが。
次第に末娘が私に対する不満を言うようになりました。それについて元々妹が嫌いだった長女による妹への締め付けが強くなり、そういう関係を見て、彼女は長女はあんたに任せるわ なんてことを言い出して末娘へのベッタリ度が激化。
長女からの懐き度アップ。長女から妹への締め付け激化。末娘の私嫌い度アップ。彼女は末娘の影響により、彼女宅でのお泊まり禁止。旅行先での部屋別。を制定して、ある年に年末年始に嘘をつかれてまで一緒に食事する事を拒否された事から別れをする事になりました。

⒋ やっと物語は私が再びカメラを手にすることに繋がる。
そんなわけで、彼女ん家とは他人になりましたが、長女からはメールが途絶える事はなくなりませんでした。課題手伝って〜って依頼含めて。

そんなおり、不思議な描写の写真が送られてくるようになりました。
懐かしい感じの写真も。

きっと、同時代を生きたフォトグラファーは思いついたかもしれません。
オールドレンズでのデジタルカメラ撮影の流行。
写るんです の再ブーム。

「フィルムにも興味あるんだけどねー。」

と、娘になる可能性が無くなった彼女は言います。

へー。
今、フィルムカメラって売ってんのかな?
ググりました。
基本の掲載年度に気をつけて。

どんなパスワードでググったのか覚えてませんが、びっくりしたことが二つ。
最後期のフィルムフラッグシップ機を見たのかデジタル一眼レフフラッグシップ機を見たのか覚えていないのですが、レンズ無しのボディだけで百万円を超えている事。
完全機械式MF一眼レフフィルムカメラが現行品としてラインナップされていること。

それがニコンのFM10でした。
私が写真から遠ざかった遥か昔の時代ですら、既に各社AF技術、電子制御技術に鎬を削っていた時代でした。

しかも、どういう仕組みなのか、定価では結構したカメラ(って言ってもレンズキットで10万円しなかったと思います。)なのに、Amazonだと新品のレンズキットが2万円しない。
そして、レンズキットの35-70mmズームレンズはFM10のレンズキット以外では販売していないなんて書いてある。

FM10のレンズキットでしか販売していなかったというAi Zoom-Nikkor 35-70mm f/3.5-4.8S

マニュアルが面倒になったらデジカメに戻れば良いんだし、オートの選択がない以上、徹底的にマニュアルってのも中途半端にオートがある機種よりもあの娘なら楽しめるんじゃなかろうか?
何てったって2万円しないし。35-70mmって画角絶妙だし。ニコンだし。
あの植村直己が使ってたニコン。

住所も名前も電話番号も勿論まだ覚えてる。
えっと、入力して。。。。
ポチッ!
ふっふっふ。これで何日か後に予告無しで送り付けられる。。。
変態か!

ん?
本商品は純正のレンズキットのレンズは付きません。
。。。

慌てて確かめる。
うん、送り付けた商品には35-70mmニッコールが間違いなく付く。
よかった。
あれ?
ちょっとまてよ。
じゃあ、どうなってるんだ?

詳細を調べると、35-70mmニッコールが付いてくるFM10のレンズキットで送り付けたのと同じ最安値の商品は残りあと1個。
ええええええ
私も買おう!

ポチッ!

ハッ!
久しぶりにカメラをイジリ倒せるのも写真撮影活動をするのも計画的でないわりにはワクワクしてるけど、35-70mmズームレンズは私は別にいらんかも。。

こんなに小さくてボディもレンズ筐体もプラスチックのFM10レンズキットは軽い。女の子に送り付けたモデルとしては良かったかも。レンズもボディも信頼のニコンだし。


長くなりました。
すいません。短歌の国の人なのに言いたいことを短くまとめられない。
次回と分けようと思います。
次回は 彼女の娘だった娘とお揃のNikon FM10レンズキット深掘り について書こうと思います。








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