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#4 ワイン醸造の基礎知識【亜硫酸・酵母・タンク・アンフォラ・樽・クロージャー】
こんにちは。
ソムリエ見習い中の愛希葉です!
前回、ワイン造りには「ブドウの栽培」と「ワインの醸造」の2つの工程があるとお話しましたが、今回は後者の「ワインの醸造」に関する基礎知識を見ていきましょう。
ワインの種類(赤・白・ロゼ・スパークリング等)によって醸造方法が大きく異なるため、ここでは共通項となる基礎知識を主に取り上げます。
この記事を読むとどうなる?
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ワイン醸造の基本知識を習得できます。
どうやってワインが出来るのか知識が深まります。
好みのワインを選ぶための指標が増えます。
醸造の工程を知ることで、ワインについてより多く語ってもらえると嬉しいです!
酸化防止剤「亜硫酸」とは?
ワインは長時間空気に触れて酸化すると、色調や風味の質を落としてしまい、酸っぱくなったり渋くなりすぎてしまいます。
そんな酸化を防止するために亜硫酸(二酸化硫黄)が添加されます。
還元剤として効果を発揮するだけでなく、静菌作用によって酸化酵素の増殖を抑える効果もあります。
酵母について
ワインにおけるアルコール醗酵は、ブドウに含まれる糖分が酵母のはたらきによってエタノールと二酸化炭素に分解されることで起こりましたね。
そんなアルコール醗酵に使われる酵母は「サッカロミセス・セレヴィシエ [Saccharomyces Cerevisiae] 」に分類されます。
ブドウは高濃度の糖と豊富な酸を有するため、高い糖濃度と低いpHに耐性のある酵母が必要です。
元々ブドウに付着しているセレヴィシエ酵母は非常に少ないため、培養酵母(乾燥酵母)の使用が認められています。
「培養酵母(乾燥酵母)」:
醗酵タンクの中から優秀な酵母を選抜し、大量培養し、凍結乾燥によって乾燥状態にした酵母。
色々な醗酵・貯蔵容器
醗酵や貯蔵の容器として、「ステンレスタンク」、「コンクリートタンク」、「木桶」、「オーク樽」が使用されます。
それぞれの特徴を見ていきましょう。
▶ステンレスタンク
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近年多く使用されている容器で、ワインの酸に耐えうる強いスペックのステンレスが使用されます。
金属製のタンクは熱伝導性が良く温度管理が容易、殺菌しやすく衛生管理が容易、ワインの酸で腐食しにくい等のメリットがあります。
┗白ワイン用:
酸素に触れる面積を減らすため縦長の形状。
┗赤ワイン用:
果帽が液に浸りやすいように寸胴型の形状。
▶コンクリートタンク
フランス語ではキューブ・ア・ヴァン・アン・ベトン [Cuves à vin en béton] といい、保温性が良く、内部の殺菌や清掃がしやすい。
従来は建物の一部として設置されていましたが、現在は様々な形状のものもある。
▶木桶
赤ワイン(特に高級な赤ワイン)の仕込みに使用される事が多く、オーク材を使用した木桶が一般的。保温性が良い。
木桶の上部から先端に円盤のついた棒でピジャージュ [Pigeage](人力による櫂つき)することで、果帽を液中に押し込む。容量が大きい場合は、ルモンタージュ [Remontage](タンクの下から液を抜いて上から散布することで果帽液中に沈殿させる)と併用する。
【補足】
果醪(かもろみ)液に果帽(果皮・果肉・種子等の塊)を漬け込む「醸し(かもし)」によって、酸素供給や温度調節、成分抽出を行います。
▶オーク樽
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貯蔵容器としてだけでなく、輸送容器としても発達してきたが、ボルドーとブルゴーニュによってその容量や形状が異なる。
(1)バリック [Barrique]
ボルドーで使われる樽のことで、容量は225リットル。バリック4つ分にあたる900リットルは、ワインの国際取引に使われてきた単位であるトノー [Tonneau] に値する。750mlのワインボトル1200本で100ケースに相当する。
(2)ピエス [Pièce]
ブルゴーニュで使われる樽のことで、容量は228リットル。やや細い形のボルドーのバリックよりも寸胴型。
▶素焼きの壺
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英語ではアンフォラ [Amphora] 、ジョージアではクヴェブリ [Qvevri] と呼ばれるこの容器は、紀元前から存在し、樽が登場するまでの間貯蔵・輸送共に広く使われた。
オーク樽にまつわるあれこれ
醗酵、貯蔵、輸送共に昔から現在まで世界中で使われているオーク樽ですが、その種類や加工方法によってワインの風味にも大きく影響を与えます。
そんなオーク樽についても詳しく見ていきましょう。
▶樽育成
タンクや木桶で醗酵を終えたワインはオーク樽に移し替えられ、セラーで1〜2年間ほど育成(エルバージュ [Élevage] )させる。
その間、ワインは樽の木目に吸収されたり、蒸発したりするため、目減り分の補填(ウイヤージュ [Ouillage] )を定期的に行う。
樽育成はフランス語で、エルバージュ・アン・トノー [Élevage en Tonneau] という。
【樽育成の主な効果】
・木目を通しての穏やかな酸素との接触。
・樽からの成分抽出(タンニンやココナッツ香)。
・清澄(せいちょう)化の促進。
・赤ワインの色調の安定化。
・フェノール成分の重合による沈殿。
・風味の複雑化。
▶樽醗酵
樽の中に果汁を入れて醗酵させる過程を樽醗酵(フェルマンタシオン・アン・トノー [Fermentation en Tonneau] )という。
通常、白ワインの醗酵で行われるもので、必要に応じてマロラクティック醗酵も行う。
「マロラクティック醗酵(マロラクティック・フェルマンタシオン [Malo-Lactic Fermentation] )」:
果汁やワイン中に含まれるリンゴ酸が乳酸菌のはたらきによって、乳酸と炭酸ガスに分解される醗酵のこと。
▶オークの種類
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樽材として主にオーク材が使用されている。そのオークにも多数種類があるが、いずれもケルカス属に分類される。
ヨーロッパとアメリカではオーク材の種類が異なり、その製材方法も違ってくる。
(1)アメリカン・オーク
・タンニンは少なく、ヴァニラ香やココナッツ香が強め。
・板目(いため)取り(寝かせた丸太から水平に板を取る)が主流。
(2)ヨーロピアン・オーク
・タンニンが多く、ヴァニラ香やココナッツ香は控えめ。
・柾目(まさめ)取り(木の中心から放射状に板を取る)が主流。
▶オーク材の産地inフランス
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(1)トロンセ [Tronçais]
(2)アリエ [Allier]
(3)リムーザン [Limousin]
(4)ヌヴェール [Nevers]
(5)ヴォージュ [Vosges]
(6)ブルゴーニュ [Bourgogne]
▶自然乾燥
森から切り出されたオーク材は水分や収斂味(しゅうれんみ)のあるタンニン分や樹液を多く含むため、2〜3年間自然乾燥させる。=シーズニング [Seasoning]
▶樽のトースト
樽をトーストすることで、熱によって樽に含まれるリグニンが分解され、ヴァニラ香を持つヴァ二リンなどが生じる。
┗軽度トースト
ワインが樽に浸み込みやすく、樽材からのタンニン抽出が多くなる。
┗強度のトースト
樽の内面が焦げることでワインが浸み込みにくくなり、樽からのタンニン抽出は少なくなる。
色々なワインのクロージャー
ワインを瓶詰めする際、生産者やワインによって使用する蓋や栓(=クロージャー [Closure] )が異なります。
大きくわけて「コルク栓」と「スクリューキャップ」の2種類があります。
▶コルク栓
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(1)天然コルク:
コルク樫から取れるもので、主要産地はポルトガルやスペイン。
コルクに含まれる「TCA(トリクロロアニソール)」によってワインの劣化を引き起こす「ブショネ [Bouchonné] 」が起こることも。
(2)圧搾コルク:
天然コルクを打ち抜いた後の残りの部分を細かい粒子状にして栓の形状に固めたもの。
(3)合成コルク:
プラスチック製のコルク。
▶スクリューキャップ
外側はアルミニウム合金で作られ、内側はライナー(リネール [Liner] )という合成樹脂でできている。
コルクと違ってスクリューキャップは酸素を通さないため、還元臭が出るリスクを抑えることができる。
【スクリューキャップのメリット】
・開けやすく再栓も容易。
・コルクくずが瓶内に落ちない。
・コルク由来の悪臭がしない。
・酸化の恐れがない。
安物ワインのイメージのあるスクリューキャップですが、オーストラリアやニュージーランドではスクリューキャップのタイプが、ブショネ防止やコルク樫の保護等の観点からシェアが拡大しているようです。
これだけ!本日のまとめ
▶亜硫酸はワインの酸化を防止する還元剤であり、静菌作用もある。
▶ワインのアルコール醗酵に使われるのは「サッカロミセス・セレヴィシエ」という酵母。
▶醗酵や貯蔵にはステンレスタンク、コンクリートタンク、木桶、オーク樽が使われる。
▶ボルドーではバリックが、ブルゴーニュではピエスという樽が使われる。
▶醗酵後のワインはオーク樽で1〜2年間樽育成する。
▶白ワインは樽の中で醗酵する樽醗酵を行う。
▶ケルカス属に分類されるオーク材はアメリカン・オークとヨーロピアン・オークの2種類がある。
▶フレンチ・オークで有名な産地は、トロンセ 、アリエ、リムーザン、ヌヴェール、ヴォージュ、ブルゴーニュ。
▶オーク材は2〜3年間自然乾燥(シーゾニング)される。
▶樽のトーストが強いほどタンニンの抽出は弱くなる。
▶ワインのクロージャーにはコルク栓とスクリューキャップがある。
以上、いかがでしたでしょうか?
ここまで、酸化防止剤の亜硫酸、酵母、醗酵・貯蔵容器、オーク樽、クロージャーについて見てきました。
どんなワインにも共通する基礎となる知識を集結しましたが、少しでも知らなかった事が増えたり、何となく知っていたことが100%腑に落ちたりしていただけると嬉しいです!
次回は赤ワイン、白ワイン、ロゼ、スパークリング、その他オレンジワイン等の種類別の醸造方法やその工程を説明していきます。
本日も最後までご覧くださりありがとうございました☆
AKIHA
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