橘玲 『もっと言ってはいけない』

★★★☆☆

 ここのところ著書の出版ラッシュが続いている橘玲氏。ベストセラーとなった新書『言ってはいけない』の続編とでもいうべき本書は今年の初めに出た一冊です。内容は前作の補足といったところでしょうか。

 前作が、現代社会にまつわる様々な事象を脳科学や進化論といったエビデンスをベースに展開していたのに対し、本書は文化人類学的な内容にけっこうな分量が割かれています。

 読後の印象としては、『言ってはいけない』の方が扱っている対象がポップというか、取っ付きやすかったように感じました。
 とはいえ、基本方針は同じです。根拠のない論は出てきません。徹底してエビデンス・ベースド。うーん、清々しい。

 書かれていることすべてに納得できる人ばかりではないかもしれませんが、事実が事実として提示されているだけなので、反論の余地はないでしょう。

 氏の著作は、著者の主張が前面に出てこないので(どういうデータを選ぶかの部分に作者の主張があるとはいえますが)、本書に反発するとしたら、それこそ「本能が目を背けたい事実」が書かれているからなのかもしれません。

 優れた作家は同じことをいろいろなかたちで書くと言います。橘玲氏の主張は一貫しています。ぶれずに主張し続けた結果、ようやく時代が追いついてきた感すらあります。

『言ってはいけない』をはじめとして、氏の著作が好きな人なら楽しめるでしょう。初めて読む人は前作から読むのをお薦めします。

 ところで、ここで橘玲の著作を取り上げることが多いような気がします。僕も根がリベラルなのでしょうか。ううむ。

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