コロナの逆風を追風にした1年を振り返る
【はじめに】
僕はもともと個人ツアーガイドとして生計を立てていた人間です。
東京・秋葉原に特化した「アニメオタクによるアキバツアー」という内容で、海外から来る日本のサブカル(漫画・アニメ・ゲームなど)ファンをもてなすツアーを実施していました。
アキバツアーの様子、メイドカフェでの1枚。
2019年の「コミュニティに貢献したホスト」としてAirbnbから表彰されたこともあります。
【コロナが与えた働き方のシフト(2020年3月)】
「オタクによるツアー」という特異性で差別化できていたおかげで、安定した収入を得る状況が1年半ほど続いていました。
が、それも束の間、コロナ禍はそんなインバウンド需要に基づいた生業を一瞬でゼロに。無収入になった首をつなぐため、スーパーでバイトしたりUberEatsの宅配をしたりとその場凌ぎの日銭稼ぎを3-5月頃まで続けました。
朝:スーパー勤務、昼&夜:UberEats配達を週6くらいのペースで続けた日々。慣れるとUberEatsは結構楽しかったです。
こんな感じで都内30-40kmほどの距離を自転車で配達し回ってました。(この時で1週間7-8万円くらい稼いでます)
【オンラインツアーとの出会い(2020年4月)】
そんな最中、Airbnbチームからこんなオファーが。
「今度うちで新しく"オンライン体験"というサービスカテゴリをローンチするんだけど、よかったらベータテスターとして初期参加してみない?」
(Airbnbより抜粋)
当時の僕は「オンラインで体験ツアーってそれ意味あるの?」という疑問を抱きつつも、即飛びつくことにしました。
オンラインツアー登録→実施までのフロー(詳細はコチラを参照)
上記の様な登録審査に習い、今まで行っていたアキバツアーの内容をプレゼンにまとめた「オンラインアキバツアー」を実施したところ、予約が入れ食い状態に。多い時は月100-150件以上のツアーを実施することで、コロナ前にも劣らない収入を取り戻しました。
オンラインツアー実施時の様子。対面でなくても参加者を楽しませられるということに我ながら驚きました。
サービス開始後1ヶ月で100件以上の予約が入ったのはいい思い出です。
以下動画でも対談形式で紹介いただいてます。
【オンラインサービスの幅を広げる(2020年5月)】
そうしてオンライン体験ツアーをメインに動いていたところ、日本人の参加者さんからこんな提案が。
「アニメファン向けにここまで楽しくツアーができるなら、日本語講師としてオンラインレッスンサービスに登録してみたらどうですか?」
最近では教員免許どころか、家庭教師のアルバイト経験すらも無い僕の様な人間でもチューターとして登録できるということを教えてもらい、とりあえずその日のうちに登録しました。
登録したのは香港系のプラットフォーム"italki"。予約・日程調整・料金支払までやってくれるのでとても重宝してます(プロフィールページはコチラ)
僕のレッスンコンセプトは「オタクのための雑談力向上」。オンライン体験で培ったノウハウとアニメ・漫画知識を用い、生徒さんが最も興味を発揮するような雑談形式のレッスンを展開しました。
こちらもあれよあれよと予約が殺到。2021年3月現在、128名の生徒さんを持つまでに至っています。
レッスンの様子。生徒さんの表情を確認できるだけでなく、板書や参考資料を共有しつつ進められるので対面授業よりも効率よく教えられています。
【住居の撤廃&アドレスホッパーとしての活動開始(2020年8月)】
Airbnbのオンライン体験にitalkiのオンライン日本語レッスンという、二足の草鞋を手に入れた僕ですが、問題もありました。
それは騒音問題。当時シェアハウスで3畳の個室に住んでいたのですがサービスの特色上海外の時差に合わせ朝5時からレッスンをするということが多くなっていました。
それに伴って生活スタイルに変えたところ、シェアハウス住民の平均的な生活時間と大きなズレが生じるように。
そうなると当然隣人との折り合いもつけにくく、「このままここには住み続けられない」と感じるとともに、「対面でのアキバツアーが出来ない以上、そもそも都内に住み続ける意味はあるのか?」という疑問も抱くようになりまっていました。
そんな中、一部のWeb界隈で話題になっていた「定額住み放題サービス ”ADDress”」と出会います。
「日本各地の一軒家やゲストハウスに泊まり放題で月額44,000円(税込)」
このキャッチコピーは3畳のシェアハウスに月55,000円(税込)で住んでいた僕に犯罪的に刺さりました。
出典:「逆境無頼カイジ」
今まで同様、サービスを見つけた1ヶ月後には行動に移し無事アドレスホッパーへの転身を果たしたのです。
荷物をまとめ、シェアハウスを発つ図
騒音と電波環境を気にしながらの都会暮らしから一転、田舎の広々とした高速Wifiも兼ね備えたADDressの物件環境は僕にとってまさにオアシスでした。
午前中は仕事→午後は地域の人たちや観光スポットを廻るというライフスタイルも自分の働き方と見事マッチし、こうして僕の悠々自適なアドレスホッパーライフが始まったのです。
記念すべき1件目は千葉県・いすみ物件。個室の広さが今までの倍以上で驚愕しました。
千葉県・茂原物件では家守さんに誘われ初サーフィンに挑戦(なみには1度も乗れなかったけど楽しかった)
8月後半からはLCLで北海道へ(小樽物件)。ゲストハウスもADDress加盟物件。
道内は札幌・小樽・富良野・旭川・稚内・室蘭を周りました。もちろん午前中はオンラインツアー/レッスン通常稼働。
福島県・南相馬物件として加盟している「小高ワーカーズベース」。行動力マックスな地域おこし協力隊や大学生の人たちがいっぱいいる愉快な場所でした。
神奈川県・鎌倉B邸物件。トップクラスのオシャレ空間と賑やかな交流が楽しめる場所でした。
神奈川県・藤沢物件。同じADDressユーザーというだけですぐに仲良くなれるのはシンプルにすごいことだと思います。
京都・聖護院物件。さっきから写真に映ってるのは僕がいつもコミュニケーション用に持参しているボードゲームです。
【サービス単価の見直し(2020年7月)】
アドレスホッパーライフを始めた頃から、オンラインツアーとレッスンの予約が過密に入るようになってきます。
日本語レッスンプラットフォーム"italki"の去年7月の予約カレンダー。平均1時間のレッスンを月100コマ以上行うのは正直キツかった。。(単価も低い頃だったので、これでも月15万円くらいの収入です汗)
嬉しい悲鳴ではあるものの、値段に対して利用者からの需要が強まり、多すぎる予約に僕のリソースが足りない状況になっていました。
「いいものを安く提供する」というかつての考え方から、「より良いサービスを提供するため、正当な価格設定をする」と考えを改めていた僕は、恐る恐る価格を月毎に上昇させていきました。結果としてその場の予約は減りましたが、利用者全体のモラル・リテラシーの底上げ、そして何より急務だった可処分時間の確保が可能になりました。
今ではツアー・レッスンともに当初の3倍以上の価格で提供しています。これからも状況に応じて値段を上げていくつもりです。
今でも、このスケジュールで毎日動ける様に価格を上げることでスケジュール調整しています。
【ファン獲得を意識(2020年7月)】
サービス単価を上げることで生まれた時間の余裕、ただただ緩慢に使うのは無意味&利用者へも失礼というもの。
サービスの質を上げる勉強時間へ費やすことのほかに、集客力を高めるために「自分のファンを増やすこと」を考え始めるようになりました。
この頃出会ったInstagram上でのインフルエンサーIssekiさん(フォロワー15万人超)をはじめとした、SNS上で影響力を持つ人たちを見て「自分も、発信した情報を受け取ってくれるフォロワー・ファンをもっと増やさないと」という思いに駆られるようになります。
IssekiさんのInstagramアカウント。外国人向けに日本の魅力や役立つ情報を発信しています。
Issekiさんの様なインフルエンサーの人たちが、僕と同じく日本の魅力をどでかく発信している姿がとても眩しく映ったのです。
そうして僕もInstagramで情報発信をはじめるようになりました。「オタクのための日本語学習」という軸をブらさず、コツコツとコンテンツ投稿を続け現在は6-7千人のフォロワー数まで成長しています。
僕のInstagramアカウント。サブカルファン向けに寄せた情報発信をしています。
【オンラインセミナー業(2020年5月,6月)】
体験・ツアー合わせて数百件のオンラインセッションホストを繰り返すうち、Airbnb/italki内で徐々に知名度が高まってきました。
そんな中、株式会社地域ブランディング研究所さんからのオファーで「オンライン体験コンテンツ」について語るウェビナー登壇のお話をいただきました。
僕はもともと人前で話すことが大の苦手だったのですが、オンラインセミナーとなれば自分だけがいる自室から多数に向けて発信する形態はどうやら合っていたようです。数十人~数百人を相手にしても淀みなく発表ができているようになっていたことには自分でも驚きました笑
【ファンとの相互コミュニケーションを意識(2020年5月)】
これだけ多くのオンラインサービスを展開してきた中で気づいたこと、それは「サービス業において重要なのは一方的でなく、参加者との相互コミュニケーションである」ということです。
この考え方はSNSでの情報発信でも意識的に取り入れ、一方的な投稿ではなくフォロワー参加型のInstagramライブや質問アンサー形式の投稿を作るというアイデアへと繋がっています。
フォロワーと1対1でリアルタイムの日本語レッスンを行う「1on1 Japanese Lesson w/ Anime Sensei 」の様子
【他エリアでのオンライン体験発信とNHK取材(2021年2月)】
「オンライン体験界隈ではちょっとした有名人」的なポジションを確立していた甲斐もあってか、知人の紹介で群馬県・赤城山エリアでの地域の魅力をオンラインで発信するプロジェクト依頼を受けました。
普段は秋葉原のことしか発信していなかったので、それとは真逆な自然豊かなエリアの発信ができるか不安でしたが、実地調査やローカルの人々とのふれあいを経ることでしっかりとしたプレゼン資料が作成でき、それを海外に向けて発信するところまで達成できました。
準備したプレゼン資料
参加者ゲストさんにも、群馬・赤城の魅力が伝わったようで何より。
そしてなんとこちら、NHK関東甲信越エリアの朝番組「おはよう日本」内でも特集を組んでもらうことができました。実は赤城エリアでの情報収集にはほとんどNHKのスタッフさんの密着取材を受けていたので結構緊張しました笑
情報収集をする僕(右)とその様子をさらに取材するNHK局員さんたち(左)
そして初テレビVTR出演!思ってたよりかなり名前や活動内容を紹介してもらえたので感動しました。
【2021年の目標】
オンライン体験・ツアー・アドレスホッパーという軸を2021年も継続していくつもりです。
今後はAirbnbやitalkiを用いた富裕層向けのサービスのみでなく、Instagramのメインフォロワー層になっているインド、インドネシア、フィリピンといったアジア諸国にも向けた少額のサブスクリプションモデルでの課金サービスも広げていくつもりです。
そのために現在利用しているのが「Discord」、「Patreon」といったプラットフォームサービスです。
Discordは共通の目的・興味を持ったユーザーがコミュニケーションを深めるクローズドな掲示板サービス。
Discordで僕が始めた「Anime Sensei」コミュニティ。現在100人以上のメンバーがアニメ・漫画の趣味を通してお互いに日本語を学び合う環境がどんどん出来上がっています。
対するPatreonはクリエイター個々人が自分のサービスをサブスクリプションモデルにして支援者を募ることができるサービス。
Patreon上の僕のサポーター向けページ。今はまだお金を払ってくれるサポーターは一人しかいないのでもっと魅力的なコンテンツを配信せねば。。
将来的には時間を引き換えにした働き方からも離れてより多くの可処分所得を得るためここは特に力を入れていきたい分野です。
また、2021年の流行りともなっている音声発信の波にも乗るべく、「Podcast」、「Clubhouse」での活動も細々とはじめました。
前述したインフルエンサーIssekiさんとの、SNSメディアを活用したインフルエンサーになるための情報発信ノウハウを語る番組や
僕同様、日本語学習者向けに情報発信している日系アメリカ人インフルエンサーTannerくんと定期的に開催している日本語学習者向けClubhouse部屋でコツコツと音声情報発信をしています。
【この1年を振り返って思うこと】
ここまでご覧いただきありがとうございます!
コロナショックが開始してからの僕は本当に多くの変化が目まぐるしく起こっていたことが分かっていただけたと思います笑
結果としてどれも良い方向に動きましたが、これはひとえに自分のフットワークの軽さがもたらしてくれた結果だと感じています。
これからも現状に満足することなく、常にさらなる安定を目指してフッ軽でどんどん新しい分野・コンテンツに目を向けていくつもりです。
北海道・札幌での1枚