
AIが教えてくれたもの
アルファ碁に敗れた人間は何を学ぶべきか
囲碁の人工知能(AI)「アルファ碁」と、世界で最も強い棋士の一人、韓国の李セドル九段の対局は4勝1敗に終わった。
世界屈指の棋士が勝利したのはわずかに1回のみ。
残りはすべてプロに勝つにはあと10年はかかると言われていたコンピューター囲碁が勝利した。
この対戦を通して、私たちが否応でも認めざるを得なくなったのがAI(人工知能)の進化だろう。
アルファ碁のAIには従来のAIとは違い、「ディープラーニング(深層学習)」という手法が採用されていた。
「ディープラーニング(深層学習)」とは、データの内容を区別したり識別したりする「機械学習」と呼ばれる技術の一種で、人間の神経の働きをマネした手法とも言われている。
アルファ碁の場合は、「盤上に並ぶ石の形の良さ」を膨大な数の人間の棋譜から学び、AI自ら気づくことが可能になっているという。
「過去のデータを学び、得た知識をもとに自分自身で学習し、知識を深める」ことは、これまで人間しかできないと思われてきたことだが、アルファ碁はそれを自らに取り入れることで人間に勝利している。
このことから、AIは確実に進化を遂げ、私たち人間に近づきつつあることがわかる。
そして、その進化の領域は従来では不可能だと考えられていた「感覚」の分野にも及んでいる。
その点を考慮すれば、AI技術は計算処理能力に長けた「機械」だとする認識は改めた方がいいだろう。
それはもはや知能をもった「生物」に近い存在になりつつあるといえる。
しかし、アルファ碁がいくら人間に近い知能をもっているとはいえ、たんに模倣しただけでは人間を負かすことはできないだろう。
そこにはもう一つ理由があるようだ。
李セドル九段との対戦「第2局」で、アルファ碁は「人間とは違う感覚」で碁を打ち、プロの棋士たちを驚かせた。
盤上の石の流れから明らかに形勢が不利だったアルファ碁が、中盤から優勢に転じたのだ。
この第2局を解説していた高尾紳路九段は、この現実を目の当たりにして、次のように述べている。
「人間は、従来、打たれてきた形の固定観念に縛られているのかもしれない」
人間と違って、アルファ碁にはこうするのが絶対に正しいという固定観念は持っていない。
そのため、アルファ碁の方が人間よりもより広い視野に立って判断し、有利に戦いを進めることができたのだった。
ここから私たち人間が学ぶべきことは、人間のクセや常識、固定観念がいかに弱さをもたらすものなのかということだ。
私たちは、うまくいった体験を重ねれば重ねるほど、それが「絶対的に正しいもの」と思い込む習性がある。
だが、アルファ碁が示した通り、それは絶対的なものではなく、まだあったはずの「よりよい可能性」を閉ざしてしまう。
成功してもなお、よりよい方法がないか模索し、挑戦し続けること
私たち人間は自ら生み出したAIから、そのことを教えてもらったのだ。
ニュース
http://www.asahi.com/articles/ASJ3P6F3VJ3PUCVL00G.html
http://www.asahi.com/articles/ASJ3H61JGJ3HUHBI02K.html
ディープラーニングについて
http://diamond.jp/articles/-/88656
アルファ碁の学び方
http://www.asahicom.jp/articles/images/AS20160312003037_comm.jpg
http://trendy.nikkeibp.co.jp/atcl/pickup/15/1003590/031700211/?rt=nocnt
ツイッターのつぶやき
https://twitter.com/akiba_burari/status/713077541209112576