「鬼滅の刃」と日本神話の深い繋がり~「日の呼吸」と「柱」に込められた神道の象徴【第一部】
● はじめに
『鬼滅の刃』の柱稽古編のテレビ放送が終了してから数ヶ月が経ち(前回の私の更新からは果てしなく月日が経ち。。)、
次は無限城編の映画化が発表され、ファンとして期待感が膨らむばかりです。
そんな中、先日、海外の友人との会話がきっかけで、改めてこの作品に込められた深い文化的要素に目を向ける機会がありました。
友人は「鬼滅の刃のヒーロー設定は本当に素晴らしい。アメコミのヒーローとは全然違って見ていて飽きない」と言い、私もその通りだと感じました。そこで、鬼滅の刃が日本の文化や宗教観を多く取り入れているからこそ、アメコミとは異なる独自の表現が生まれているのだと説明したのです(作者でもない一読者の分際で。。)。
その際、友人から「具体的にどのような宗教観を取り入れているの?」と尋ねられ、神道との繋がりについて話したものの、自分でもあまり深く考察したことはなかったと気づきました。
そこで、この機会に鬼滅の刃と日本の文化・宗教観、特に神道との関係を掘り下げて調べてみようと思い、この考察記事を書くことにしました。
この記事では、『鬼滅の刃』のキャラクターや物語に影響を与えた日本神話や神道の要素について、考察していきます。
特に、「日の呼吸」や「柱」という概念が、どのように日本の神々と結びついているのかを探っていきます。
● 第1部: 『鬼滅の刃』と日本神話の神々とのつながり
『鬼滅の刃』は、圧倒的なアクションシーンや心に残るキャラクターたちが人気の理由ですが、その背後には日本の深い文化的背景があります。
特に、日本神話や神道の影響は、物語やキャラクターの設定に大きく反映されています。この第1部では、特に「日の呼吸」と「柱」の概念に焦点を当て、日本神話との繋がりを探ります。
● 1. 「日の呼吸」と天照大神の関係
「日の呼吸」は、『鬼滅の刃』に登場する呼吸法の中でも最も象徴的な技です。炭治郎の父が代々伝える「ヒノカミ神楽」から受け継がれたこの技は、太陽の力を象徴しています。日本神話に登場する太陽の女神 天照大神(あまてらすおおみかみ)との関連性は明白です。
※花札の耳飾りも旭日旗ですしね。
天照大神は、光と生命の源であり、邪悪な存在を浄化する力を持つ存在です。『鬼滅の刃』においても、鬼は太陽の光に弱く、太陽の力が彼らを滅ぼす鍵となります。これは、天照大神が邪悪を照らし、清めるという神話的な力と一致しています。炭治郎が「日の呼吸」を習得する過程は、まるで神の力を人間が受け継ぎ、闇に立ち向かうための旅をしているかのようです。
炭治郎の成長や彼の内に宿る決意は、まさに光の戦士としての役割を体現しており、これは天照大神の持つ太陽の力と深く結びついています。彼の戦いは、ただの力だけではなく、精神的な成長や自己犠牲の象徴として描かれているかと思います。
●2. 柱と神道の「柱」の象徴性
『鬼滅の刃』の中で、鬼殺隊の最高戦力を誇る「柱」たちは、まさに組織の要となる存在です。この「柱」という言葉自体、神道の中で神々を数える際に使われる単位でもあります。
神道では、神々を「柱」として数え、その存在を象徴的に表現します。
同様に、鬼殺隊の「柱」たちは単なる戦士ではなく、人々を守るために存在し、組織を支える中心的な存在です。
彼らの技や能力は異なり、それぞれが個性を持ちながらも、全体で一つの大きな力となります。この点は、神道における八百万の神々がそれぞれの役割を持ち、自然の秩序や人々の生活を守る姿に通じます。
9人の柱が協力して鬼に立ち向かう姿は、まるで神々が協力して世界を守るようなイメージを抱かせます。
柱たちは、人間を超えた力を持ちながらも、心の強さや仲間との絆を大切にしている点も、神道の神々の特性と重なり、まさに神々のような存在として描かれているように思えます。
● 3. 自然と神道の繋がり
神道の中心的な考え方の一つに、自然の中に神が宿るというものがあります。山や川、木々などに神が宿り、自然そのものが神聖なものとして崇められるのです。この自然崇拝の思想は、『鬼滅の刃』にも色濃く反映されています。
炭治郎の修行は、常に自然の中で行われます。彼が修行を通じて得た力や精神的な成長は、自然との調和の中で生まれます。
また、彼が使う「水の呼吸」や、風柱の「風の呼吸」など、呼吸法自体が自然の力を具現化しており、その技は自然との繋がりを強く感じさせます。
さらに、柱たちが自然の中で己を鍛え、命を懸けて守る姿は、神道における自然との共生の精神を象徴しています。彼らが戦う目的は、単なる個人的な利益や復讐ではなく、世界の秩序や人々の平和を守るためです。この点においても、柱たちは神々が秩序を守るために活動する姿と重なります。
● まとめ
『鬼滅の刃』には、日本神話や神道の影響が随所にちりばめられており、特に「日の呼吸」や「柱」の概念に顕著に表れています。天照大神の太陽の力が鬼を打ち倒す象徴となり、柱たちはまるで神道の神々のように、鬼殺隊を支える存在として描かれています。さらに、作品全体に流れる自然崇拝の精神が、神道と『鬼滅の刃』の深い繋がりを感じさせます。
次回の考察では、各「呼吸法」に焦点を当て、その背景にある神話的な神々や日本各地の神社との関連性を詳しく掘り下げます。呼吸法が持つ自然の力や象徴を日本神話の視点から分析し、作品のさらなる奥深さを探っていきます。
注
この考察は個人の解釈に基づくものであり、作者の意図と完全に一致するとは限りません。
神道や日本神話との関連性は、作品を楽しむための一つの視点であり、他の解釈の可能性も排除しません。