漫画の描き方のコツ備忘録・番外3【コミティア初参加します③】初めての同人誌を作ろう!
こんにちは、漫画描きの晏藝です!
いよいよ来週末、初参加を予定しているコミティア150が東京ビッグサイトにて開催となります。
いつもの【漫画の描き方備忘録】の一環として、私のこちらへの、人生初の即売会サークル参加に向けての動きを記録しております。
三回目の今回は、頒布物の制作【初めての同人誌を作ろう!】です。
よろしければお付き合いください!
頒布するものと、参加の目的を考える!
当たり前ですがサークル参加には、スペースで頒布するブツが必要です。
調べると最低一冊は新刊本を持参するのが良いとの事。
また、「よし!コミティアに出よう!」と直感で参加を決めたため、準備中に突然真顔になり、
「しかしながら私は、一体何のためにコミティアに出るのか…?
出る事に何の意義が?
準備し参加する暇があるなら作品を描くべきでは?」
と、たびたび哲学的になってしまうので、参加の目的も再考しました。
私が何らかの創作活動を始めてから20年以上。
漫画も10年以上描いてきているにも関わらず、コミティアやコミケに出ようとすら考えなかったのは、私の場合、描く事に重点があり、発表する事にはあまり興味がなかったためです。
どっちが重点でも、本人が楽しければ良いと思うんよ。
しかしながら、この発表非重視の描き方は、商業創作や知名度上げや集客と、非常に相性が悪いわけです。
現在の私の肩書は、〈電子配信のみにて描き下ろし自主連載をしている、元紙商業漫画家〉です。
発表の場を、自ら営業をかけないと見つけられにくい無所属の描き下ろし自主連載の電子配信のみにし、
愛しき稿料とはサヨナラする替わりに、ネームチェックや他人が裁量権を持った〈描いて良い作品の枠組〉からは自由になりました。
そして、デジタル作画に移行し、求めるクオリティの作品を少しずつ作れるようになってきたり、
締め切りに追われずに、質と腕を高めるための推敲時間も得られ、
これまで得にくかったレベルで創作者としての満足と幸福を感じております。
しかしその半面、自作の営業に全く興味がない私の、ここ最近の漫画描きとしての懸案事項は、
私が良くても、配信をお願いしたりお世話になりまくりの企業さんや、
鈍筆でも楽しみにして読んでくださったりする読み手さんに、
知名度低すぎて売れにくいのも、働きながらという免罪符はあるけども新作鈍亀なのも、「いつも申し訳なくね?」
…φ(´-ω-`)ヌヌヌン
あと、電書はスマホ読みが基本なので、どうしても表示サイズが小さい。
作成は商業B4サイズのまま、描き込みも多く、
読み手さんには拡大して見てもらったりもしているようで、もう少し大きいサイズでお見せ出来たらなと。
私がデビューしたのは、すでに紙雑誌が売れにくくなっていた時期です。
それでも雑誌に載っていれば読んでくださっていた方は、雑誌だからこその講読者として残っていて下さった方でもあるはず。
恐らく紙本自体が好きな方が多い。 その辺りも踏まえて、
☆いつも応援してくれる方へのお礼
☆いるかもしれない、紙派の人向けに本を出す
☆自分の作品を見つけて喜んで読んでくれる方を、もうちょい自分でも探しにいかないとなぁ(反省)
…という目標を立てました。
今回は完売より、そのへんが重要です。
そのためにまず今回は、完成済みで手元にある、配信作品を書籍化する事にしました。
配信代行社様のお力添えにより、広域電書店での配信は行えておりますが、知名度も高くないので、会場で初めて目にする方のほうが圧倒的に多いはず、という目算です。
これらの配信作品達をお願いしている配信代行会社様に許可も取り、後方の憂いもなくサークル参加応募。
無事、当落無しでのコミティア150参加も決定しました。
同人誌入稿ってどうするの!?
さあ、いよいよ初めて同人誌を作っていきます。
今回私が作りたい作品は、前回も貼ったこちらのサークルカットの二作です。
説明のため、もっかい失礼して。
下の左右二作品とも現在、私が電子配信のみにて描下ろし自主連載をしているシリーズです。
①左は『物見の文士』。
明治初期の日本っぽい世界線を舞台にした、怪奇幻想小説作家・夜都木先生の不思議な非日常を描いた作品。
今回はこのシリーズから、往復書簡のノスタルジーもの26頁『狸囃子が聴こえる』という読切を。
こちらは2019年夏初出で、東京の本所七不思議の一つ『狸ばやし』を題に取った作品です。
★元原稿はモノクロ二値の、アナログ原稿。
電子版を持っていてもお得感が欲しいため、特典がわりに別途、カラー表紙を描き下ろします。
②右は『神垣は緋』。
こちらは現代の日本っぽい世界線を舞台にした、ダークファンタジーです。
主人公は冥界に続く窩があると言われる街を護る一族の当代である少年・京。
彼の一族には魔物を寄せる特徴があり、ある時、彼の元に一匹のおかしな魔物が現れ…というお話です。オーソドックスな西洋東洋の魔物妖怪等が出て来るバディアクションもの。
続き物なので、続く…で終わってしまうのですが、ひとまずエピソード1の三話分を纏めた〈前編〉の発行を決めました。
引き続き参加して順次、中編、後編(←ここはまだネーム段階)を出していきたいなと。
こちらも、電子版とは別装丁を予定。
★元原稿はグレースケール制作の、デジタルデータです。
そして、ここでハタと気付きます。
あれ?待ってこれ。
初めての同人誌作成で、アナログとデジタルの両タイプの元原稿を、編集と入稿せなあかんやつ?
そうです。
キョーフの「初めての同人誌入稿で、アナログとデジタル両方タイプの元原稿の、グレースケールデータと二値のデータ両方の仕様で、編集とデータ入稿せなあかんやつ」です。
何を言っているか、いまいち分かりません。
しかも、それぞれ別のサイズの本で作りたい。
①『物見の文士』は読切、26頁と薄めなので、B5サイズ無線綴じ。
こちらは本文モノクロ二値仕上げで、カラー表紙が良い。
②『神垣は緋』は、三話分を収録するので少し厚くなるため、読みやすさや保管のしやすさを考えて少し小さめのA5サイズ無線綴じ。
本文グレスケ仕上げで、表紙は特殊加工にしたい。
初心者が仕様の全く違う二冊の入稿とは、無謀の極みですが、やりたきゃやるしかないのでやっていきます。
作り方を調べる所から
さて、ここからが、なかなか大変でした。
まず同人誌を買った経験すらないため、基本どんなものかも分かりません。
(ん?そこから?)
勿論、作り方も不明だぜ!
哀れな私に、知人友人が手持ちの同人誌を見せてくれました。
スッ…ホレ( ´・_ゝ・)、_ (´・ω・`)ドモ
おお…この空気感、これはあれだ。作った人の愛に溢れているね!
同人誌って愛で出来ているんだね…!
なんてリアルでいきなりプレイボーイみたいな台詞を言うと、ドン引きされ私の心証が危ういので勿論、口には出しません。
物理的には、普通のコミックスと言うよりは、美術館の図録や、何らかの社報や会報誌に近い様子。
同人誌の超基本系はこの【無線綴じ本】と。
他に、遠足しおりのような速い安いコンビニでも作れるコピー本。ハードカバー、和綴、リング綴じなど。
いずれも同人印刷中心の印刷会社さんに、個人で発注をかけて刷ってもらうようです。
印刷所の選び方は?
次は、印刷所について調べてみました。
が、請け負ってくださる会社さんからして、目茶苦茶沢山あります。
そこから、何を基準に選ぶのかも、ど素人には全く分かりません。
オンデマンドオフセット箔押し口絵カドマル遊び紙本文用紙表紙用紙サテン金藤コミックペーパー上質70上質90RGB白版ホログラムクリアPPマットPP早割割増、○○セット□○セット
んああ!?何だって??
分からん!もう全っ然分からん!呪文!?
MPが足りなくて唱えられませんけどお!!?
…とかくまず有料無料の用紙や加工のサンプルセットなどを、目星をつけた印刷屋さんで注文。
それらを見つつ、呪文を読み下し理解を深めます。
「φ(・ω・*)フムフム...要するに、
印刷所さんによって、サービス差、得手不得手もあり、自分の印刷ニーズに合った所をチョイスするようだね?」
例えばいくつか特色あげると、下記のような違いがあると。
・データ入稿のみ。
・紙原稿OK!むしろ、紙ならお任せあれ。
・懇切丁寧に初心者印刷サポートしてくださるが、締め切りが早い。
・完全原稿推奨の上級者向け。通常印刷クオリティが高い。
・箔押しやホログラム、トレペ加工などの特殊印刷特化。お値段がはるとか、その割には安いとか。
・親切丁寧、スピード印刷、お安い、老舗
などなど。
それらを踏まえ、以下のようなポイントを判断基準として見るべし!と。
◎印刷会社選定のポイント
数ある印刷所さんの中から、
【自分自身は何を重視して刷るつもりか?締切守れる度はどれくらい?】
で選ぶのが良いようでした。
私の場合の条件は、
◎ある程度の印刷系知識や、商用原稿の入稿経験があるため、印刷サポート薄めでもサイトの説明が理解できる所なら、完全原稿のみ※と書いてある所でOK。
◎カラーは、色数が多めで鮮色を使いがち。紙標準のCMYK4色カラーでは、出力色数の不足が気になる。
出来るだけ、作成したデジタル上のRGBに近い印刷がしたいため、RGB印刷機か6色インク以上対応※の印刷会社さんにしたい。
また、デジタル原稿はグレースケール作画のため、グレスケ印刷が可能で、綺麗な所を選びたい。
◎夜のシーンやベタが多いので、テカりにくいというオフセット系の印刷がしたいが、冊数は少なめなので大ロット用のオフセットは非現実的。
オンデマンドでもベタがテカりにくい所または、少部数でも刷れるデジタルオフセット印刷が可能な印刷所。
◎電子でも読める作品を頒布予定なので、お出しする値段を電子版より高すぎないようにしたいため、印刷費もなるべく抑えていきたい。
そこに、出来るだけ印刷の綺麗さを両立をしたい。
以上の条件から私は今回、大阪印刷株式会社さんにお願いする事にしました。
サイトやネットレビュー等で調べまくった結果、入稿についての概要は下のような感じ。
ザックリ言えば、印刷レベルは高く、そのクオリティのわりに値段もリーズナブルだけれども、入稿がかなり難しい部分もあり、無料サポート制度もないため、規約が順守できなかったり、ぎりぎりに入稿したり、そもそも分からない事だらけの初心者だったりすると、ドボンしやすい感じという、これは…スーパーマリオの後半のステージ…?というような印象。
ん?何て…?
もう一つ悩んだ会社さんがありましたが、折よく、作りたい特殊仕様印刷のサンプルキャンペーンがあり注文、その仕上がりも確認し、良い感じでしたので大阪印刷さんにお願いする事に。
あとはもろもろ刷っていただいて、確認していきます。
実作業の工程
◎入稿データ作成メモ
◎紙の原稿からの、データ本文作成の手順
紙原稿からのデータ入稿には、まずは1200dpiから600dpi高解像度でスキャンした原稿の、モノクロ二値データ化が必要です。
しかし、普通の家庭に漫画原稿最大サイズのB4のスキャナーはありません。
コンビニも多くは400dpiまでの模様。
その場合、スキャナーの自宅レンタルや、原稿のスキャンが行えたり、郵送にて紙原稿を送付してデータ化してくれるサービスを利用します。
私は、時間料金制で店舗にて、漫画原稿のスキャンとデータ化が行えるサービスを利用しました。
受取はPhotoshopデータになりますが、CLIP STUDIOでは、Photoshopのpsdデータを統合画像として扱えますので、Photoshopがなくてもクリスタがあれば、ひとまず問題はありません。
このpsdカラーデータを、線や網点が劣化しないようにベクターのままで、
入稿先からダウンロードしたテンプレートのサイズに合わせて作成した、クリスタの漫画原稿用紙に入れ込んで縮小などをし、
さらに減色などをかけつつ、ほどよく二値(モノクロ2色)化して行きます。
このようなデータ化は、詳しく解説してくださっている方がネットで探せます。
グレスケが混ざると印刷がうまく行かない場合があるので、モノクロのみとなっている事を確認。
トーンがつぶれてしまった所はデータでの張り直しや、修正を行いました。
さらに同人誌には、奥付が必須との事なので、入稿先の仕様を確認して作成します。
おまけ頁なども編集し、モノクロ二値の本文完成。
お疲れ様です。
◎データ原稿(グレスケ)からの、データ本文作成の手順
もう一つの原稿は、グレスケ入稿予定ですが、こちらは印刷の場合、トーンの濃度が濃すぎると、ほぼ黒として印刷されてしまうらしいので、すでに完成済の原稿ファイルのコピーのグレスケトーンから、少しずつ濃度を下げていく作業を行いました。
反対に主線はモノクロレイヤーでないと、なにかと危険でイヤなので、そこもチェック。これを80頁弱分ほど…
どうしても気に入らない所だけほんの一部、絵の修正。
終わったら、入稿先のテンプレートに合わせたカンバスにぶちこみ、ベクターのまま縮小と調整。
奥付、おまけ頁なども編集し、グレースケールの本文も完成。
お疲れ様です。
※と、思いきや無線綴じ本のノドにも、1.5cmほどの余裕が必要であったと後から気付いて若干修正。次は最初から気を付けねば。
※ひと工程ごとにバックアップも忘れずに!
◎写植
さて、作画部が出来たら、今度はひたすらデータ上で台詞の写植をしていきます。
これにはいっそPhotoshopのサブスクや、メディバンペイントなどを併用するのが個人的にお勧めです。
商用の漫画にも使える無料フォントが種類豊富に使えます。
ただPhotoshopはかなり重いので、環境によっては単品で使いにくい場合もありますし、使用する頻度が低いとサブスク勿体なかったりも。
他のアプリでフォント使用するには、規約を読み一つずつダウンロード必須。
また、入稿先の受付データ等によっては、メディバンペイントが使いにくい可能性もあります。その場合は、漫画用の商用無料のフォントパックなどを購入すると便利かもしれません。
また、漫画の写植の法則についても詳しく解説してくださっている方がネット上で発見できます。
入稿先の指定に合わせて、写植までした本文完成データを、PhotoshopデータやPNGやJPEGなどで書き出し、入稿用データを作成します。
ページ数が間違いないか?
指定されている解像度や原稿のサイズと、合っているかを必ず確認!
◎表紙用カラー原稿など。
表紙類も、入稿先のテンプレートサイズに合わせて作成します。
モノクロよりもカラーの方が、解像度は低めでOK。
大体350dpiくらいです。
『物見の文士』は、スタンダードなデジタルRGBのカラー表紙原稿です。
ん?完成がB5ってことは、描く原稿は裏表くっついてるからB4クソデカサイズ?と、塗り初めてから気付きます。
塗るとこが多い!
クリスタからpsdにて書き出し。
Photoshop上で入稿サイズとカラー設定をチェック。
RGB入稿なのにCMYK設定になっていたら、または、その逆もまずいですので一応確認。
※クリスタからなら、基本はRGB書き出しですのでご安心を。
はい、でけたぁ!狸!
また今回、②A4の方は全面箔という、データを作るのが初心者にはエグムズい表紙を選びました。
0.3㎜以下の線はムリですよとか、これすると箔がちゃんと抜けませんよとか、あらゆる細かい指定を恐らくはクリアした(と思いたい)原稿を作成。
んで、こっちもでけた!
もうちょい細い線いけるかなと、思いつつ初めてなので冒険せずいきました。洋書風にしたかったんだぜ満足。
これは、完成の大まかな予想図です。
最後まで紙色と箔色に悩み色々シミュレートしました。うまく出来てると良いな…
◎いざ、入稿!
さて、全ての書き出した原稿を確認します。
あらかじめ、入稿データ用フォルダを作成して分類して入れておきました。
口絵も、カラー指定を間違えてグレスケのままに書き出していないか等、しっかり確認!
最後に、入稿先のデータ指定が順守されているかも照らし合わせ、しっかりチェック。
データを揃えて、最終確認してから入稿します。
入稿の時に焦って間違えないように、後で見て「あ、これだな」と分かるようにファイル名を整えます。
違うデータの名前にうっかり変えてしまっていないかな?もう一度開き直してチェック!
入稿の時は、プレビューをしっかり確認。
また、ファイル名が順番通りになっているか確認。
確認確認確認確認。確認するだけの簡単なお仕事です!!
本文入稿!カラー入稿!本文入稿!表紙入稿!あああああ!終わったあ!!
無事に16営業日発送予定での初入稿が完了しました!
先方の原稿確認中からの一発不備なし!おっしゃあ!
初めての参加なので、検品のため品物到着は自宅に、かつ一週前につくように発注。
やっと入稿が出来ましたが、今回の参加目的は応援してくれている方へのお礼も兼ねておりますので、
電書購入済みで書籍購入の方のための、特典(ノベルティというらしい)グッズも作成します。
当日は二作のほかにも、いくつかの無料頒布物の発行などを予定していますので、もしもビッグサイトで見かけたら、立ち読みや無配物の受取だけでもしていただけたら、嬉しいです!ぜひご遠慮なく!
それではまた来週末、コミティア150直前あたりにお品書きをアップしたいと思います!
まだ作ってないけどね!どうやってつくるのかなアレ?!