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【作詞コンテスト応募作品】存在

−はじめに−


2023年の秋。ひとつの大きなプロジェクトが動き出した。
「エターナルソング•コンテスト」と銘打たれた作詞作曲の公募であった。

審査委員長は偉大な作詞家、湯川れい子先生。

ツイッターでこのコンテストの話を知った私はそれまで数年間欠かさず投稿し続けてきた月に4箇所の詩の公募を『月刊詩誌ココア共和国』のひとつに絞り、そしてこの作詞コンクールに2023年の残り全てを捧げようと決心した。

私はこのコンテストに並々ならぬ覚悟で挑んでいた。

前職を退職後貯金を崩しながら執筆に専念してきた。もう、書くことだけと向き合いたかった。
その期間はとても充実していた。
そして、思うことももちろんあった。

区切りをつける時が近づいていることも考えていた。
このコンテストで入選すれば曲をつけてもらえカラオケで配信されることが記されていた。
私はこのコンテストに懸けることにした。
もしダメなら身の振り方を変える時なのだと。

コンテストの趣旨と日々向き合い、四六時中作詞のことを考え、寝ている時も書いている夢を見ながらポストに投函する日まで過ごした。
手書きで清書した。
後悔はひとつもなかった。

とても難しいテーマであった。
掴みどころがあるようでないお題。
ただ、普遍的に老若男女問わず性別も超越した人間の「愛」を書こうと思った。それが求められるエターナルだと受け取った。
歌い継がれる、口ずさめる歌。
誰にでも自分のことのように思える歌。

私はあえて「愛」という言葉を使わなかった。
「愛」を使わず愛を表現しようと思った。
そして歌の主人公に性別を限定させないようにした。
「だわ」とか「なのよ」などの語尾にしないこと。
そして出来上がった歌が「存在」だった。

心のどこかで、歌詞を頭の中で黙読する時、その声は梶芽衣子さんをあてていた。
私がこの世で一番歌ってほしい歌手は梶芽衣子さんだからである。
覚悟を決めた作詞だった。

結果は落選だった。


そして、発表を待つ間に起きてしまった能登の大震災。
元旦からまさかこんなことが起こるなんて誰が予想しただろう。
あんな大きな揺れは生まれて初めてだった。
が、能登の被害はそれの比ではなかった。
今もまだあの日が続いている。余震も。
私に今出来ることは義援金に協力することくらい。しかも微々たる額でしか協力できない。それでも出来ることを出来る分だけ…。
もどかしかった。もどかしい。
そんな中、あのコンテストのことがよぎった。
もし選ばれて歌になったらこんな私でも少しは何かの力になれないだろうか…と、自惚れた考えを抱いてしまった。
その分落選が当初よりこたえた。

今は私の住む石川県のこと、能登のことで頭も心も一杯です。
あまりにも被害が大きすぎます。
時間がかかります。
それでも平穏が訪れることを祈って目の前のことをひとつずつ、ひとつずつ…やっていくしかありません。


私は
これから…。





落選した作品ですが、全身全霊で魂を込めて書いた歌詞です。

お読みいただけたらさいわいです。




「存在」


作詞:山羊アキミチ


1
逢いたい人が在ります
遥かな時は瞬き流れ
忘れられない人が在ります
そこに私の席はないけど

待ち人もない旅の日暮れ
灯り燈る街の窓
滲む温もりに
ありふれたしあわせ揺れる

交わらないふたつの道
生まれた時から知ってる
蜃気楼の気休めでも構わない
あなたが傍にいてくれるなら

叶わぬ 叶わぬものは
そっと手を振り送りましょう
望む 望むものは
あなたの中で生きつづけたい


2
聴きたい歌が在ります
今まで何度支えてもらったろう
忘れられない声が在ります
私の耳に囁きはしないけど

選ぶ道もない旅の夜明け
光広がる夢の出口
潤む追憶に
ありふれたしあわせ揺れる

交わらないふたつの道
生まれた時から知ってる
白昼夢の幻でも構わない
あなたが傍にいてくれるなら

叶わぬ 叶わぬものは
そっと手を振り送りましょう
望む 望むものは
あなたの中で咲きつづけたい


未完成のまま生まれてきたけど
そんな私にも出逢ってくれてありがとう
あなたはそう言って微笑んだ
青い炎は燃え上がり心を照らす月になる
もう私にはおそれるものなど何もない

叶わぬ 叶わぬものは
たとえどんなに抱きしめ合っても
叶わぬ 叶わぬものは
見渡す限りありふれたしあわせ

最後に私が願う 願うもの
それはこの世界にひとつだけ
あなたの あなたのしあわせ


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