7/44 クリエイティブ・マインドセット

私が学生さんから、主婦、社会人、経営者に本を紹介する際に、必ず登場する1冊である。

『クリエイティブ・マインドセットー想像力・好奇心・勇気が目覚める驚異の思考法』トム・ケリー&デイヴィッド・ケリー著 千葉 敏生訳

日本でもデザインシンキングまたはデザインという言葉が、ビジネスの中で定着しつつあるように感じる。

この本で紹介されている思考、行動のプロセス、そして習慣化は、シリコンバレーの共通言語と表現する人も多く、大人だけでなく子どももデザインシンキング のメゾットに沿って問題を発見し解決することを学んでいる。

著者であるデイヴィッド・ケリー氏とトム・ケリー氏はご兄弟であり、世界で最も有名なデザイン会社IDEOの創業者、経営者である。実際にスタンフォード大学で多くの学生を指導し、ある意味、大学内で一番熱狂的な場をつくっていると言っても過言ではない。またスタンフォード大学内に限らず、多くの教育機関やグローバル企業に大きな影響を与えている。

私は2015年のアメリカへの渡航前、この本を読み、デザインシンキングとこの本のすっかり熱狂的なファンになった。ワークショップや勉強会があると聞くと、第一優先事項として参加した。また、何か問題を発見したり解決する際には、デザインシンキングのプロセスや文化に沿って考え行動することを意識している。

なぜ私が熱狂的なファンになったのか?

①発想を否定しない場:チームづくりから、問題を発見し解決するためのアイディア出し、そして試作品つくり、テストに至るまでたくさんのクレイジーなことが起こる。そのクレイジーをバカにしないでしっかりとやる。否定するのは簡単だけれども、チームを信じる場がとにかくカッコいい。また、否定しないから前向きなアイディアと、やり遂げる熱意に変わる。

②速いスピードで試作品をつくり、テストまで行う躍動感:アイディアが浮かんだら、完璧を目指さず、身近にあるものを使いとにかく手を動かしてやってみる。大人になると、どうしても頭で考えて、できない言い訳を熱心に洗い出す。会議に出ていて気づくことが多いと思うが、新しいアイディアに対して、どうしたらできるかよりも、できない理由を考え、結局止めるという結果を目の当たりにすることは意外と多い。できない理由を考えるよりも、とにかく試作品をつくって、テストまでやってみること。時間は宝。時間や無駄なコストをかけずにやってみることが、一番得たい結果を得るための近道ではないか?

③失敗から学ぶ姿勢:失敗を避けたい気持ちは、日本人だけでない。世界共通で失敗は避けたいことの一つだと思う。日本人は、恥の文化だとか失敗を恐れると言うけれども、それは日本に限らず世界共通の価値観。失敗を結果として終わらせるのと、失敗から学び次に活かす。どちらが前向きだろうか?私は学びとして今後に活かしたい。

④私たちは全員アーティストである:アーティストの要素は、ほんの一握りの人間が持つ特権の資質ではなく、全員がアーティストとしての素晴らしい力を持っている。

以上の4つの基本的な考えが、私が熱狂的なファンになった理由だ。

それでも、何か納得しないモヤモヤっとしたものがある。なぜ私はこの本が好きなのか?

一般的に暗黙の了解とされていることを、破壊しているところが私にとって、魅力に感じるのではないだろうか?

例えば、私が上記に記したことの逆。

①発想を否定する場。②遅いスピードで試作品をつくり、テストまで行う。③失敗から学ばない姿勢。④私たち全員アーティストではない。

これはよく見られる光景である。新しい発想に対して、否定することにより現状を維持すること。慎重は必要なことだが、スピードが遅すぎて結局忘れ去られてしまう、テストまで進めば良い方。失敗を恐れすぎてそこから学ばない、そもそも失敗は絶対にしない。私たちはアーティストではないため、特別なアイディアや特技は持っていない。

よくあることだけれども、本当にこれでいいの?これは本当なの?と実は潜在的に誰でも感じている。その違和感を破っているところに私は魅力を感じているのではないか?

この本では、企業と個人の事例もみることができる。彼らと企業は立派にこの違和感に対して向き合い打破している。

「こんなこと?大したことないよ。」と思うような事例があるかもしれない。しかし、「こんなこと?」と思われるような誰でも思いつくようなことをする人は、ほんの一握りの人で、大体の人が小さなことをバカにして実行まで移さない。実行したかしなかったかの差は大きい。

一回で結果が出るような特効薬はない。体の筋肉をつける時、習慣を変える際、何度も何度も繰り返し行う。思考と行動の習慣を変えるなら、やはりやり続ける必要がある。

この本の日本語名は”クリエイティブ・マインドセット”

英語名は”クリエイティブ・コンフィデンス”

やり続ける過程の中で、自分自身で自信を獲得する。それが新しい積極的でクリエイティブなマインドに繋がる。そして、全員がこの資質を持っているという意味で名付けられたのではないだろうか?

情報過多の時代、どう選択し、どう活用するか、また本当に自分にとって必要なことは何なのか?判断が難しいように感じる。こういう時代こそ、まずは自分で考えて手を動かしてみるのはいかがだろうか?








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