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梅と奇術師 | おさんぽ記録①
花冷えだ。
鼻もヒリヒリする。
ありがたいことに花粉症とは今のところご縁がないが、頭痛があるということはもしかしたら今年こそはお世話になるかもしれないと怯えている。
ならばどうせならこちらから攻めてみよう。思い立って『名古屋市農業センター(梅園)』へと散歩に出かけた。
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写真はかなり咲いている方だ。他の木々ももうひと寒さ越えたら、満開になるだろう。早咲きのものは、すでに落ち着いた色合いでいる。
お子様連れやご老人のお散歩、幾多のキャメラマンで賑わっていた。
突風に梅吹雪。
50代くらいのカップルが、落ちる花びらを必死で掴もうとする様子がなんだか微笑ましい。
梅まつり(-3/20)も開催されていて、まつりならではの屋台が軒を連ねる。最近はキッチンカーでの販売という選択肢も増えたおかげか、凝ったラーメンなんかもあった。
定番のフランクフルトやアイスクリームはもちろん、静岡茶や蜂蜜など農業センターならではの農産物のテントも出ていた。
地域のPTAの方が開いている甘味処でみたらし団子を一本買った。手作り感あふれる団子を目の前で炙って、タレ缶にどっぷりつけてくれた。
「汚さんよーにね」
おばちゃんの警告も虚しく滴り続けるタレ。ヘンゼルとグレーテルのようにタレを垂らしながら、熱いうちに食べた。
写真を撮る間もなかった。
寒い日に食べる熱い団子はうまいねぇ。
こういうので良いんだよ、こういうので。
何やら近くでマイクチェックの声がする。
ぼんやり見渡すと「寒いね」と言いながら準備をしているお兄やんがいた。
青髪のシュッとした奇術師である。
最初は特に興味も持たなかったが、簡単な自己紹介を始めると、見事にその話術に聴き入ってしまった。
後藤凌(Ryo)さんというお名前で活動しているパフォーマーだ。
最初は「ほんの5秒くらいのマジックを3つほど」と言いながらも、合間合間に客とのコンタクトや絶妙なトークがあって、結局30分以上口をポカンと開けながら観た。
視線誘導、気遣いの細やかさ、妙な間を作らないトーク力。最初から最後まで全て1人で舞台を作り上げた。
写真を撮る間もなかった。
TV出演や海外修行をしており、プロ歴13年だそうだ。フォークのマジックが見事だった。曲がるフォークで鶴を作るパフォーマンスは観客のどよめきを生んだ。
実に素晴らしいものを観た。今日のじゃないけどYouTubeに動画があったのでどうぞ。鉄板ネタみたいです。
ほんのちょっと散歩する予定が、2時間歩き回った。たまにはのんびり自然に囲まれて過ごすのもオツである。
風は弱い日がなお良い。
今日はとにかく冷たい風が吹きさらして、近くの竹林がトランス状態の鹿おどしみたいな音を立てていた。
ところで、昔私はマジックショーが大好きだった。テレビでマジックショーをやっていると、きっちり録画して何度も観た。
海外のプロのマジシャンが行うトランプマジックやマジシャン道具の数々を見ると、本当に魔法が使えるように見えて、当時の私は興奮したものである。
Mr.マリックが人気だった時期、テレビの前の人に向けて行ったマジックがあった。
テレビの前の人が今考えている数字を、マリックが当てるというものだ。生放送ではない。
まさかそんな、テレビの前の人間のことなんてわかるはずない……とたかをくくっていた。しかし、見事に当てられてしまったのだ。
何度でも騙されたい私は、何度でもマジックショーを観た。
ショーを観るのがトラウマになったのは、『金田一少年の事件簿 上海女人伝説』を観た時だった。水槽を使った遊戯で、演目の最中に死体が浮き上がってから、”ショーの失敗”が怖くなった。
それ以来、タネと仕掛けがないと不安になった。切断マジックなんてもってのほかだ。
もう何年もマジックショーを観ていなかったが、今日は運が良かった。トラウマはいつのまにか消え去っていたようだ。やっぱりマジックは魔法なのかもしれない。