若い人の腹痛 + 下痢/便秘/ガス 『過敏性腸症候群』の可能性について

質問:
高3女子です。最近よく下っ腹が張ります。食べ物じゃなくて空気でパンパンになる感じです。げっぷしたりトイレしたり吐いたりすると楽になるのですが、これってなんでしょうか?

似たような質問をよくいただきます。
「授業中だけオナラがすごい出そうになる」
「腹痛が急に起こった後、下痢をすると楽になる」 etc

若い人のこの症状はタイトルにもありますとおり、
『過敏性腸症候群』
の可能性があります。

しかしながらこの病気と診断するには注意点があります。過敏性腸症候群の分類、診断における注意点、自分でできる治療方法、これらについて解説していきます。

1、過敏性腸症候群の分類について

端的に言えば、
腹痛 + 便秘 or 下痢 or ガス どの症状があるかということで分類します。
過敏性腸症候群のガイドラインの分類とは少し異なりますが分かりやすくするために次のようにします。

①便秘型:便のほとんどが硬い(時にウサギの糞状のコロコロ便)
②下痢型:便のほとんどが下痢(泥状〜水状)
③ガス型:おなかが張る、ガスが臭い、ガスがよく出る(特に緊張した時など)

そのほか、便秘と下痢を繰り返す交代型もあります。


2、過敏性腸症候群の診断について

一応、診断基準があります。

 ✔︎腹痛や腹部不快感が半年以上前に始まっている。
 ✔︎最近3ヶ月の中のどの月も少なくとも3日以上症状がある。
 ✔︎①症状が排便によって改善する
  ②排便頻度の変化で始まる(多くなる もしくは 少なくなる)
  ③便性状の変化で始まる(コロコロ便になる、もしくは下痢になる)
  のうち2つ以上の特徴を示す。

これら3つの✔︎を満たすと過敏性腸症候群の診断となります。
ガス型の場合は、①〜③の便をガスに置き換えていただけると分かりやすいと思います。

ただし、上の3つの✔︎を満たせば過敏性腸症候群で確定かというとそうではありません。可能であれば内視鏡検査を行い大腸の異常がないことを確認する必要が出てきます。というのも、例えば若い人の頻回の下痢はクローン病という炎症性腸疾患を考えなければならないこと、また便秘型では大腸癌などの腫瘍性病変の可能性も否めないからです(普通大腸癌は若年ではみられませんが、遺伝性の大腸癌では20代でもみられることもあります)。他にも考えられる腸疾患は多数あるため、内視鏡で器質的異常がないことを確認した上で、かつ上の3つの✔︎を満たせば過敏性腸症候群と診断されます(病院によっては典型的症状から内視鏡検査をせずに診断・治療をするケースも多々あります)。

3、過敏性腸症候群の治療について

治療は

①便秘型 ➡︎ 腸を動かす薬、下剤を内服。リンゼスが有名。
②下痢型 ➡︎ 腸の分泌液を減らす薬。イリボーが有名。
③ガス型 ➡︎ 腸のガスの体外排泄を促す薬。ガスコンなど。

そのほかにも多数の薬があり、症状をみながら調整していきます。

自分でできる治療としては
✔︎ストレスを溜めない : ストレス環境から遠ざかることも重要
✔︎規則正しい生活 : 生活リズムの安定化、睡眠・休養をしっかり
✔︎禁酒・禁煙
✔︎適度な運動 : 1日15分〜30分のウォーキングなど
✔︎下痢型 → 香辛料・脂っこいものを避ける 
       冷たいものを一気に飲まない
✔︎便秘型 → 水溶性食物繊維をとる

などがあります。

過敏性腸症候群かなと思ったら病院を受診し医師に相談してみるのが良いと思います。または忙しくてなかなか病院に行けない方や、いきなり病院はちょっと怖いという方は、上にあげた自分でできる治療を余裕があるなら1,2ヶ月試してみて、それでも症状が落ち着かなかったら病院を受診するという方法でもよいかもしれません。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?