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【一週一筆】その4 そのピースの意味を教えて

私が広島県へ行ったのは、今までで一度だけ。
2009年、高校2年の修学旅行だ。

厳島神社で偶然結婚式を見られたり、みんなでお好み焼きを囲んだり、そのお店のお母さんと大声で笑ったり。

楽しかった思い出もたくさんある。



だけど、いろんな感情がぐわぐわと入り混じって、いまだに咀嚼しきれていない場所がある。

それが、広島市の平和記念公園と、元・広島県物産陳列館(現在の通称「原爆ドーム」)。

・ ・ ・


バスでこの地に連れてこられた2年生全員が、「原爆ドーム」の前に集まった。

私の最初の感想は、「意外と小さいな」とか、「あのドームの部分はなぜ残ったんだろう」とか。

でもやっぱり、「この場所に落ちたんだ」と思わずにはいられなかった。

原爆ドームそのものの場所だけじゃなくて、平和記念公園やこの街のいたるところ。
1945年8月6日、ここに偶然いた人たちが。
思わず黙ってしまった。

ここまでは、ここに来た多くの人が抱く感情かもしれない。

けれど次の瞬間、どうしても受け入れられない光景を見た。
生徒のうちの数人が、「原爆ドーム」の前に立ち、携帯電話で撮影をしていた。

ピースをしながら。

・ ・ ・


そのピースの意味は何?

“ビクトリー”のVサイン?
“平和”を意味したもの?

どちらも、この場所ですべき、いや、して良いポーズなんだろうか?

そもそも、そのポーズをとるとき、その意味が一瞬でも頭をよぎったのか?

目の前の光景に、「ワカラナイ」が多すぎた。受け入れるには重すぎた。


その一方で、あの日、あるクラスメイトは、泣いていた。
平和記念公園で、被爆を経験した方の話を聞きながら。
溢れ出てくる涙を、抑えようとしても、どうしようもないくらいに、零していた。


平成生まれの私たちにとっては、「原爆ドーム」は「原爆ドーム」という名の建物で。
それは、あの地で、戦争によって、悲惨なことが起こったんだという象徴になっていて。


それでも、ここまで、“感じ方”が違うんだ。

この場所を単なる観光地としか見られていないクラスメイトと、ただ一人しゃくりあげながら心を痛めているクラスメイト。


今思い出しても、心が曇る。

・ ・ ・

なぜ今これを書いたかといえば、少し前に、ピースをしたクラスメイトと同じような写真が、ネット上で出回っているのを見たからだと思う。

もしかしたら、こうやって私が見てきた以外にも、たくさんの人が、こういった行動をとっているのかもしれない。


有名な観光地に来た記念に、反射的にピースして。
“映えスポット”と捉えて、背景にして、笑顔で。

そんな理由で撮影されるために、「原爆ドーム」という建物は今まで保存されてきたんだろうか。


もちろん感じ方は人それぞれでいいはずだし、その人自体を軽蔑することはない。そもそも私の価値観や道徳感が、必ずしも全て正解だとは思わない。

けれど、こういった行動や思考をする人は、一人もいてほしくないと、強く思う。

・ ・ ・

悲しいことに、平和記念公園や「原爆ドーム」をテレビなどで見るたびに、私はあの光景を思い出してしまう。

2025年。終戦から80年。
節目だからといって、何も変わることはない。
何なら、私の「原爆ドーム」への感情は、2009年からずっと止まってしまっている。

人生が終わるまでに、あの地へもう一度行って、まっすぐな気持ちで、祈りたい。



ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
ここからは私の宣伝なので、ページを閉じていただいても大丈夫です。

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