新規事業開発における知財戦略
はじめに
丸島先生の著書「知的財産戦略 技術で事業を強くするために」は、10年以上前に出版されたものの、現代の事業開発においても依然として有効です。この書籍は、実戦で得た知識と経験に基づく知財戦略のエッセンスを網羅しており、技術をどのように事業の中核として活用し、競争優位を築くかについての具体的な指針を提供します。特に知財の重要性を改めて認識し、事業の発展にどのように寄与できるかを理解する上で、非常に有用な一冊です。詳細な内容は実際に本書を手に取っていただくことをお勧めしますが、以下に私が特に心に留めたポイントを紹介します。
知的財産戦略 | 書籍 | ダイヤモンド社 (diamond.co.jp)
「攻めの権利」の考え方
「攻めの権利」という考え方は、大企業に限らず、すべての企業が知財戦略を考える上で重要です。コア技術を権利化して守ることは一般的ですが、それだけでは不十分です。ノンコア技術、すなわちコア技術の周辺や延長線上にある派生技術も積極的に権利化することで、競合他社との交渉で優位に立つことができます。特に大企業は、その事業規模ゆえに、相手の知財によって攻撃されると影響が大きいため、ノンコア技術の権利化が重要になります。これにより、ライセンス交渉や特許紛争での交渉力を高め、不利な立場に追い込まれるリスクを低減できます。ノンコア技術の特許取得は、事業開発において忘れがちですが、攻めの姿勢を維持するためには欠かせない戦略です。
コア技術とノンコア技術のバランス
事業を強化するためには、コア技術の特許を取得することが重要ですが、それと同時にノンコア技術の特許取得も怠ってはいけません。コア技術は、競争相手からの攻撃を防ぐ防御的な役割を果たしますが、ノンコア技術は攻撃的な役割を担います。これにより、自社の技術領域を広げるとともに、競合他社が自社の技術に依存する状況を作り出すことができます。このように、コア技術とノンコア技術のバランスを取ることで、事業全体の知財戦略を強化し、競争優位を確立することが可能です。
「損なき妥協」の実践
「損なき妥協」という表現は、交渉において非常に実践的であり、効果的です。理想的には、Win-Winの結果を目指すことが望ましいですが、現実の交渉では双方が納得する妥協点を見つけることが必要です。これは単なる譲歩ではなく、双方の利益を最大化し、損失を最小限に抑えるための戦略的な妥協です。交渉の前には、損得表をしっかりと整理し、相手の立場やニーズを理解することが重要でしょうし、これにより、交渉を有利に進め、自社にとって最善の結果を引き出すことができます。「損なき妥協」は、特に困難な交渉において自社の利益を守りつつ、相手との長期的な関係を築くための重要なアプローチかと思いました。
新規事業開発での知財戦略
新規事業開発に携わる立場として、未来の知財戦略の重要性を強く感じています。丸島先生の著書から得たエッセンスは、とても参考になりました。既存技術の保護だけでなく、新技術やビジネスモデルの価値を最大限に引き出すことが、これからの事業開発には必要不可欠ですし、特に、社外の知識や技術を取り入れるオープンイノベーションを活用しつつ、自社のコア技術を守ることが肝要だと感じました。