学級経営ピラミッドとは?
学級経営には系統性・順序性がある
大前暁政著「子どもを自立に導く 学級経営ピラミッド」(明治図書)より
不思議なことに,学級経営の理論と方法を基礎から学んだ教師はほとんどいないのが現状です。
なぜなら,学級経営に関する授業が,そもそも,大学にないことが多いからです。
教員になってからも,「学級経営の実践」は,研修会で目にすることがあるものの,何らかの系統だった理論・方法を学ぶ機会はありません。
そもそもが,学級経営の理論・方法をまとめた書籍があまりないのです。
各教員が,自らの経験をもとに,徒手空拳で学級経営をしているに過ぎません。
そんな現状を打破するための書籍の紹介です。
この書籍の良いところは,学級経営の理論・方法を,具体例をもとにして解説してくれた初めての書籍だということです。
教育雑誌などで特集されることがあるので,「学級経営ピラミッド」という言葉は聞いたことがある教師が多いことでしょう。
しかし,言葉として「学級経営ピラミッド」を知っていたとしても,中身をきちんと理解していないと,それを現場で活用することが難しくなります。
目次などは,以下の通りです。
「荒れたクラス」があるとして,そのクラスが落ち着くだけがゴールではありません。
学校ですから,落ち着いて生活できるのは,「最低限の状態」です。
その上の状態があります。
それは,子供が所属感を獲得できており,仲間と協働できている状態です。
また,自ら進んで動いている状態です。
いわゆる,「心理的安全性」が確保された状態です。
しかし,この「心理的安全性」が確保され,「主体性が出てきた」ことも,ゴールではありません。
まだまだ,学級の状態,子供の状態には先があります。
この先の状態は,さらに二段階あります。
こうした全部で4段階の状態をピラミッド構造で示したものが,「学級経営ピラミッド」です。
ここで思うのは,「そもそも,教師はこの学級の状態4段階を知っているのか?」
「知ってすらいないのではないか?」
ということです。
「知らないままの教師が,その学級の理想状態を,自然と,偶然に生み出すことが可能か?否,不可能である」
「知らないゴールは実現できない」
そういうことを思うのです。
つまり,4つの学級の状態すら知らない教師が学級経営をしている状況は,子供や保護者,校長や教育委員会,そして社会から見たら,「怖いなあ・・。」ということでしかありません。
さて,では,とりあえず「4つの学級の状態」がわかったとします。
しかし,最も重要なのは,「方法」です。
では具体的にどのような方法で,この4つの理想状態にもっていえばよいのか,です。
ここでも,「戦略」と「戦術」の両方を学ぶ必要があるのです。
つまり,本書の最もよいところは,「理論」と「方法」の両方をかなり詳しく解説してくれているところです。
なお,ピラミッドの左右の構造にも注目が必要です。
左右の欄は,相互関係になっているのです。
つまり,右側が満たされると,左側も満たされ,
左側が満たされると,右側が満たされるのです。
所属感が満たされると,主体性が出てくるように。
主体性が出てくると,みんなのために行動できるように。
互いが関わり合う関係になっているのです。
大前暁政著「子どもを自立へ導く学級経営ピラミッド」(明治図書)より