「手遅れ」になる前に!! 大前暁政著「本当は大切だけど、誰も教えてくれない 授業デザイン 41のこと」(明治図書)
大前暁政著 「本当は大切だけど、誰も教えてくれない 授業デザイン 41のこと」(明治図書)より
およそ,授業をする人は,全員が「授業デザイン」を学ばなくてはなりません。
学校の教師だけでなく,塾でも,企業研修の担当者でも同じです。
とにかく「授業」には,やり方があります。
この「授業のつくり方」,「やり方」を学ぶには,先人の知恵から学ぶのが,効果的な方法となります。
ところが,先人の知恵をまとめた本はありません。
先輩教師が教えてくれることもありません。
なぜなら,「授業のつくり方」,「やり方」は,プロと言われる教師がもっている「知識・技能」になるからです。
プロは,血のにじむ努力の果てに,プロとしての力を手にしました。
それを人に教えることは,プロなのでもちろん可能です。
しかし,わざわざ教えようとはしません。
およそ,どんなプロでも,自分がやっとの思いで得た知恵を,おいそれとは簡単に教えようとしないものです。
そもそも,「自分が血のにじむ努力をしてきたのに,なぜ,大した努力をしてもいない若い人に教えないといけないのか」などという,風潮もあります。
つまり,プロがもつ知恵は,学びたい人が,プロの所作を見て,そこから自分で学びなさいという風潮が今でも根強く残っているのです。
これは,野球やサッカー,陶芸などの芸術領域,料理などの世界でも同じです。
野球の有名なエピソードに,次のような話があります。
プロになったばかりの若手選手が,ベテラン選手に,プロとして活躍するためのコツを教えてくださいと教えを請いにいったのです。
すると,ベテラン選手は言いました。
「いいよ。教えるから,○百万円もって来い」と。
若手選手は,それを聞いて,「そうか。プロの技は,おいそれとは簡単に教えてもらえないものなのだな」と気が付いたそうです。
陶芸の世界でも,土を練る作業だけ,何十年もやってようやく「焼き」の領域に進めるとか,
料理の世界でも,キャベツを切る作業だけ何年もやって,ようやく次の「焼き」の領域に進めるとか,
そんな話はザラにあります。
だから教師の世界でも,プロの技は,苦労して自分で学べという風潮があるのです。
よって,「本当は大切だけど,誰も教えてくれない」知恵が生まれるというわけです。
それに,理由はまだあって,
「本当は大切な知恵」は,難しいものが多いのです。
一つ一つを理解するのに,時間がかかります。
まして,40個ぐらいの知恵を1つずつ紹介していくと,とてもじゃないですが,3時間かけて教えても終わりません。
だから,プロは,「めんどうだな」と思って,あえて教えないということがあるのです。
しかも,教師の世界は,ベテランの大量退職の真っ最中です。
余計に知恵の継承が行われない状況になっているのです。
親の立場としては,「授業デザイン」も知らないような教師に,絶対に担任してもらいたくありません。
我が子が,退屈な,力のつかない授業を毎日受けているとなると,本当に気の毒だからです。
授業デザインをなぜ学ぶ必要があるのでしょうか?
答えは簡単です。
子ども主体の学習をつくりあげるためです。
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子ども主体の「学習」をつくるには,教師の「授業」のデザイン力が必要。
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本書には、このことを,これでもかと実例が出てきて,気付かされます。
授業デザインに関して,0から100まで,全て網羅した書籍です。
この本,第1章だけでもかなりの革命的な意識変革が起きます。
授業に対して,根本的に何もわかっていなかったことに気付かされるのです。
しかも,2030年に向けた授業デザインの紹介に至っては,その存在すら知らなかったということになりかねません。
1章は,次のような目次になっています。
第1章 本当は大切だけど、誰も教えてくれない[授業方法]7のこと
1 よい授業方法は、自明のものではない2 ゴール次第で、望ましい授業方法は変わってくる3 授業のゴールには、構造がある4 隔たりが大きいほど、新しい手立てが見えてくる5 授業の上手い下手は、3つの要素で決まる6 第四の要素「システム・形態」によって、授業に差がつく7 「臨機応変に授業を変化させる力」で、授業のレベルが一段上がる
「授業デザイン」も知らないような教師が,堂々と教えている学校などということが許されるのでしょうか???
これは,はっきり言って,「詐欺行為」に近いことです。
資質・能力を育てるやり方を知らない教師が,適当に,自分の感覚で,自分の経験だけで,授業をしているからです。
本書のよいところは,先人の知恵を余すところなく教えてくれることです。
ベテラン教師の知恵を継承していくために,プロだけがもつ技を継承していくために,書かれた本です。
プロ同士は,実はネットワークをもっています。
プロ教師はプロ教師と交流があるのです。
その交流は,10名とか,20名とか,そんな少人数の単位ではありません。
100名,300名といった規模の交流です。
プロは,その交流の中で,プロとしての力を磨いています。
そのプロの知恵や技,そういうものを,もっと広めていかないといけないのではないでしょうか。
本書は,プロの知恵や技を余すところなく紹介してくれるので,これこそが,今,すぐに学ぶべき内容なのです。
心ある教師ならば,教室や寝室に一冊は絶対に置いておきたい本です。