「空色メランコリック」感想
浜野りんご先生の作品を読んでいると、学生当時好きだった友人のことを思い出します。
前作「cotton candy」に出会った時、「これは!!」とコミックが発売してすぐに購入しました。
キラキラはしていないけれど、ほのかに甘くて、そっと苦い。
等身大ですっと心に入ってくる。
この先生の描く百合はいつでも舌触りが優しい。
本作「空色メランコリック」は前作の主人公の叔母に当たる文乃が主人公の物語です。
高校で出会った友達に片想いをしていたけれど、結局想いは口にしなかった。
学園の王子様に気に入られていたが、憧れでしかなかったので付き合わなかった。
意外と強いエピソードを持っている人ですが、10代特有の自己肯定感の低さで、それらすべてキラキラの思い出にはならず、ただ「きみのことが好きだった」という物語が穏やかに淡々と描かれてゆきます。
前作では気持ちを知られて関係が壊れたらどうしようと迷走する主人公が描かれましたが、本作はとにかく親友の隣にいる。言わない。そんな文乃が愛しくて愛しくて。
なお、私は真尋タイプめっちゃ好きです。あの、顔が可愛いから何言っても許されんだろーみたいなオーラ全開の子は可愛いですよね。可愛いは正義だもの。
この物語の好きなところは、その高校時代の親友真尋や、憧れの先輩希子との関係が大人になっても続いていることです。
「ああ、こういうことあるんだよな」をここまで綺麗に積み上げてゆく作品も逆に珍しいと感じるほどに、本当に等身大の作品なので、女子高青春ものが好きな人にはお勧めです。
想いを伝えるだけが恋じゃない。
そっと伝えられなかったひとしずくの想いだって物語になる。
青春とは、そういうものらしい。
因みに私が当時好きだった友人とは、今でも交友関係が続いています。
色々腹の立つこともあったはずなのに、結局許せてしまうのは、惚れた弱みでしょうか。