想定外
私は、カフェが大好き。
いくつかあるお気に入りのお店では、いつもコーヒーを注文します。
落ち着いた黒色と香りが、のんびり過ごすときのお供にぴったり。
でも、たまには違う飲み物が欲しくなるときもあるのです。
散歩をしている途中で喉がかわき、たまたま目に入ったお店のガラス戸を押しました。
明るい木のテーブルに、座り心地のいい椅子。
一人だったので、カウンターに座りました。
「ウーロン茶をホットでお願いします」
コーヒーでも紅茶でもなく、ウーロン茶。
特に理由はありません。何となく、飲みたくなったのです。
お待たせしました、という言葉と一緒に、ガラスのコップに注がれたウーロン茶が、目の前に置かれました。
「あのう、もしかしたら取っ手が取れてしまうかもしれないので、すいませんが気をつけて下さい」
申し訳なさそうに、頭を下げる店員さん。
取っ手??
見ると、銀色の持ち手がコップの下から伸びています。
耐熱ガラスですから、やけど防止のために付いているのでしょう。
取っ手という言葉から、ドアノブを想像した私は、コップに取っ手といわれてもピンとこなかったのです。
その2つの違いを調べてみました。
取っ手は「押すか引くか」という動作をすることで、何かを開けるために設けられた部分を指す。
持ち手は、主に「持ち上げる」ことを意図した部分を指す。
なるほど、と思いました。
あまり意識していませんでしたが、確かにその通りです。
違いが明確になって、すっきりしました。
そして、ウーロン茶を飲んでいると、実際に外してみたくなったのです。
中身が冷めるのを少し待ちました。
店員さんがこちらを向いていない時を狙います。
すぐに外れるかなと思っていたのですが、以外にもしっかりはまっている。
持ち手が少し曲がってしまったような気がします。
まずいかも……。少し焦りが出てきました。
数分格闘して、無事に外すことが出来ました。
元に戻そうとしたのですが、今度はなかなかはまらない。
一体、私は何をしているんだろう?と思いながらも、ぐいぐい押し込もうとしました。
うまくいきません。
いったんあきらめて、ウーロン茶を飲みました。
冷めてもおいしかったです。
結局、飲み終わった後に再度チャレンジして、無事はめ込みました。
ほっとして会計を済ませます。
のんびり過ごす予定だったのに、コップの持ち手を外して、はめる事になってしまいました。想定外です。
試すのは面白いですが、わざわざやる必要は無かったかもしれません。
次回は、いつも通りコーヒーを注文します。