助っ人
私は、毎日料理をしています。
基本は、和食。
土鍋でご飯を炊き、おみそ汁を作り、煮物とごま和えを添える。
食材をみて、何を作ろうか考える。
それは、とても楽しい作業です。
でも、マンネリになってしまうのが、悩みの種。
レシピ本を読み、お料理上手な友人に教えてもらったものを試しています。
あるとき、馴染みの居酒屋さんで、マスターにその話をしました。
「作るのは好きだけど、同じものばかりになるのは嫌だし、かといってレパートリーを増やすのも大変なんです」
「よくある話だね」
「プロだと、たくさん引き出しがあるからいいですよね」
お刺身をつつきながら言うと、マスターが苦笑いをしました。
「いやあ、確かにプロだけど、思ったような食材が手に入らないときが困るんだよ」
「そんな時あるんですか?」
「結構あるよ。天気が悪ければ魚が少ないし、野菜もおんなじ。量が少なかったり、質が落ちてたりするんだよな」
なるほど。
いつでも良いものが手に入ると思っていたけれど、勘違いだったらしい。
「じゃあ、そういう場合はどうするんですか?」
「助っ人料理を決めておくんだよ」
助っ人料理?
サッカーで、助っ人の外国人フォワードとか聞いたことがありますが、そんな感じでしょうか。
「いつでも手に入る材料で、コストもかからない。品質も変わらないものを使った料理のことだよ」
「たとえば?」
身を乗り出しました。興味津々です。
「厚揚げ、豆腐のあんかけ、もやし炒め」
パッと答えが返ってきました。
「厚揚げはいいよ。中に肉味噌を詰めて、焼けばいいんだから。ネギとかつおぶしをかけてもいいし。手間がかからない」
「豆腐のあんかけは、しいたけとかシメジだね。どっちも価格はあんまり変わらないし、すぐ手に入る」
「もやし炒めは、カサを増すのにちょうどいいんだよ。豚肉でもコンビーフ炒めでもいける。肉がなければ、コーン缶を開けてバター炒めにできる。コスパがいいんだよな」
思うような食材が手に入らなかった時、「今日のおすすめ」として、助っ人料理を作るそうです。
「いつでも作れるのに、定番料理にしないのは、そういう理由だったんですね」
「そうそう。いい材料がないときに出すんだよ」
あともう一つはね、と言って声を潜めました。
「簡単だから、人手が足りないときにアルバイトでも作れるからね」
確かに。
家庭なら、多少マンネリ気味の料理でも構いませんが、居酒屋さんだとそういう訳にはいかないのでしょう。
この時教えてもらった料理は、我が家でも助っ人料理になりました。
重宝しています。