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スコーンを焼くと妻が喜ぶので


ホットケーキミックスをボウルにあけ、少しのオイルと豆乳、ミックスナッツとチョコレートチップを砕いたら、あとは一気に手でこねる。粘土のようにまとまったら、平たく形を整え、包丁で8等分に切り、オーブンで15分ほど焼く。これでスコーンのできあがり。
外側はクッキー生地のように硬く、内側はほろほろとほどける、素朴で甘さ控えめの味。とても簡単。誰がどれほど適当に作っても失敗のしようのないこの料理に、妻が欣喜する。妻が喜ぶと、ぼくも喜ぶ。

妻いわく、市販のスコーンは洗練されすぎていて、「ちょっと違う」らしい。
「こういう家庭的で、大雑把な“岩のようなスコーン”が、私のほしいスコーンなの」

妻の念頭には、留学時代の朝食で振る舞われたスコーンがある。
寄宿舎に大型フリーザーがあり、そこからスコーンの塊とクリームを取り出し、たっぷり塗りつけて食べ、さらにランチ用にも持参して学校に出かけたという。
いかにも外国らしい大味な朝食風景である。まるでどれだけ食べてもなくならないような巨大なスコーン。岩のようなスコーン。そこからすると、日本で売られている小振りのお行儀のよいスコーンは「ちょっと違う」のも無理はない気がする。

お店で買えないなら、うちで作るしかない。
ぼくの中のDIY魂に火がつく、というほど熱いものでもなく、こんなことならお安い御用とばかりにいそいそと今日もスコーンを焼く。

そういえば、テレビドラマ『きのう何食べた?』の続編が始まって、楽しみに見ている。
西島秀俊扮する弁護士の夫が、パートナーの健康診断の悪化から夕食のメニューに魚を選んだり、食品値上げで月々の食費が収まらなくなるといったエピソードがまるで我が家を見ているようで微笑ましい。

食事を作って一緒に食べるだけで、なんだかもう幸せなのだ。

TVer 『きのう何食べた? season2 』 第1話 (無料)
https://tver.jp/episodes/epvonwir8t


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