来年を楽しみに迎えられる、初めての年越しについて
大晦日には決まって蕎麦を打つ。
知人宅で蕎麦打ちを手伝う慣例が何年も続いている。知人は蕎麦打ちが趣味で、大晦日に年越し蕎麦を近所や親戚に配ることを何十年も続けていた。ぼくもその蕎麦をいただき、おいしく食べていたが、あるとき「蕎麦打ちに興味がある」と洩らしたところ、待ってましたとばかりに「一緒に打とう!」と話が進み、そこから毎年手伝っている。
1年の最終日なので、今年の振り返りを記したい。
思い起こせば、今年はじつに苛烈な猛暑だった。今も暖冬を迎えそうな気配である。
そして、2023年は人生の最大の転機となった。
1月、婚活を開始。
2月、妻と出会う。
3月、同居。
4月、プロポーズと両家に挨拶。
5月、入籍して引越し。
6月、妻のリサイタル開催。
ここまでが上半期。
疾風怒濤の電撃結婚である。奇蹟と呼んで差し支えない。もう一度同じことをしようとしても叶うとはまるで思えない。人生に起きた、たった一度きりの奇蹟。
夏以降は多少ローギアに落としながらも、友人たちにお披露目の食事会を断続的に催した(結婚式を行わないので、個別に食事会を開いた)。
上半期の検算をするように過ごしていたかもしれない。
7月、京都旅行。
8月、夜間救急外来。
9月、安曇野旅行。
10月、妻のリサイタル主催。秋の登山。
11月、妻の誕生日。
12月、脱衣所の改修工事。
登山には4度出かけ、クラシックコンサートに8度出かけ、川沿いをサイクリングし、夜の散歩を繰り返し、スコーンを焼いた。妻の誕生日には手紙を書いた。結婚初日から書き始めたnoteは、今日で100回を数えた。
年越しに際し、こんなに後悔もなく、来年を楽しみに迎えられるのは生まれて初めてのことだ。1年前にはとても考えられなかったような場所に立っている。遅まきながら人生の幕が上がったような心境になっている。
後講釈で語るなら、ぼくも妻も「準備ができていた」のだと思う。
結婚の心づもりも、同居生活の経験も、コミュニケーションの訓練も、時間とお金の差配も、これまでの失敗やリカバリーも含めて、準備ができていた。そして人生観や生活観が奇蹟的にとても似通っていた。
来年はどんな年にしようかと、妻と紙に書き出しながら話した。ぼくらが力を入れていきたいテーマはことごとく一致していた。iPhoneの写真を見返しながら、今年出かけた場所を振り返った。
妻と初めて会ったときの、レストランのフロアに射す淡い陽光と雨もよいの曇り空を、今もありありと思い出せる。
「桜が満開のころ、この並木が綺麗なんですよ」と彼女が言い、「もしよかったらぜひ見に行きましょう」とぼくが言った。夜桜もおすすめです、と彼女が微笑んだ。1ヶ月後の桜の季節に訪れることはなかったけれど、ぼくらはすでに一緒に暮らしはじめていた。
今年の大晦日は雨まじりの朝になった。
これから蕎麦打ちに出かけ、例年どおり無事に年納めをする。今年は妻も一緒に。