ツバサという曲
中学生や高校生の頃、今よりももっと直感的に音楽を選んで聞いていたと思うのです。良くいえば音楽を直感的で純粋に楽しんでいた。悪くいえば何も考えず聞いていた。少なくとも私はそんな学生でした。
そういう、当時何気なく聞いていた音楽に大人になってから再会することがあります。
ふと思い出してサブスクで検索することもあります。テレビでなんとなく聞いて思い出すこともあります。
そんな感じで何年ぶりの再会するのですが、あまりにもその曲が当時の姿と違うものに聞こえる時があります。これは多分私が、当時その曲を作っていたアーティストの年齢を追い越して、その曲に描かれている場面や心情に対する心理的な解像度が上がったせいなんだと思います。
そんな、自分の解像度が上がったおかげで曲の解釈が進んで感動が深まった曲の代表格が、アンダーグラフの『ツバサ』です。
当時は「なんだか切ないけれど心を掴まれる曲だなぁ」くらいにしか思っていませんでした。
ですが今聞くとそのあまりもの切実な歌詞とメロディに心を打たれてしまうのです。この曲は青春の後日譚であり、そして青春時代が終わってこれからも続いていく人生の曲だと感じています。
まずイントロ後のAメロの歌詞が秀逸ですよね。徐々に風景を描写した後に、「ああ、この二人はこれから別々の道を行くのだ」という卒業シーズンの物語を感じさせます。
そして2番に入ると、青春の終わりを感じながら思い悩む主人公の姿が描かれ、そして青春が2度と戻らないと訴え、曲はラストの大サビへ向かいます。
最終的に主人公はまたキミとの約束を思い出し、「会えたなら共に笑おう」と曲は終わります。
「大きな花を咲かせ共に笑おう」という約束からうまくいかない現状などを経験し、「大きな花を咲かすと決めた」と決意し、「会えたなら共に笑おう」という思いに帰結するまでの若者の苦悩と決断が哀愁たっぷりに描かれていて、悲しいメロディなのに聞き終わるとどことなく前向きな気持ちにもなれるすごい曲です。
中学高校くらいだと気が付かない世界観だと、改めて思います。
若さの輝きと儚さを同時に描いた曲であると思うので、まだそれを手に持っている若いうちに聞いてもこの曲の本当のすごさはわからないのかも知れません。私は当時からぼーっとしていたので、若さがすごいと言われてもいまいちピンとこない子だったからわからなかったという可能性も高いです…。
私に「いつか大きな花を咲かせよう」などと将来を語り合った友人はいません。
ですが、私もそれなりに苦悶はしてきたと思います。
それがこの曲の理解や、他者の人生への理解につながったのだと思うと、経験というのはしておくものだなとか思ったりします。他者の人生への理解、などというと大袈裟かも知れませんが。
必ず同じ経験をしたわけではなくとも、どこか自分に重なり様々な感情を共有できる音楽って、本当にすごいなぁと思った次第であります。
※アイキャッチ画像は「スナフ」さんの写真を使用させていただきました。