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【論文レビュー】システマティックレビュー:インクルーシブリーダーシップ
先人に感謝のレビュー論文シリーズ、今回はインクルーシブリーダーシップです。
これまでの投稿内容も少し整理しつついきたいと思います。
参考文献
Korkmaz, A. V., van Engen, M. L., Knappert, L., & Schalk, R. (2022). About and beyond leading uniqueness and belongingness: A systematic review of inclusive leadership research. Human Resource Management Review, 32(2), Article 100894.
独自性と帰属意識を超えて:インクルーシブ・リーダーシップ研究のシステマティックレビュー
ざっくりまとめ
この研究は、インクルーシブ・リーダーシップ(IL)に関する概念の混乱を解消し、その理論的な発展を理解することを目的としている
インクルーシブリーダーシップ行動は、4つの次元(従業員の独自性を育む、チーム内の帰属意識を高める、感謝を示す、組織への貢献を支援する)に分類される
ILに影響を与える先行要因、成果要因、媒介要因、調整要因も整理した
過去の投稿では、Nembhard & Edmondson (2006)がリーダーが他者の意見や貢献を歓迎し、価値を認める行動と定義したこと、Carmeli et al. (2010)がILを開放性、アクセスしやすさ、対応可能性の構成要素で示して尺度を開発したこと、そしてRandel et al (2018)が先行要因として「多様性に対する積極的な信念」、「謙虚さ」、「認知的複雑さ」を示し、メンバーの帰属意識と独自性を重視するものだと強調したことをまとめました。
今回のレビュー論文で、IL行動をまとめる4次元が加わった形です。
どんな内容か?
リサーチクエスチョン
インクルーシブリーダーシップの行動はどのように定義されており、それらの定義はどのようにしてILの統合的な概念化を導くか?
インクルーシブリーダーシップの理論化には、どのような先行要因、成果要因、媒介要因、調整要因が含まれ、それらの関係を説明する基礎となる理論は何か?
研究デザイン
対象:2021年4月までに発表されたILに関する論文107本。データセットには、24の概念的論文、18の質的研究、58の量的研究、7つの混合研究が含まれる
方法:システマティックレビューを行い、IL行動の異なる概念化を統合して、IL行動の4次元からなるマルチレベル(個人、チーム、組織)モデルを提案している
結果
ILを定義する新しい概念として、4つの次元が示された
従業員の独自性を育む
チーム内の帰属意識を高める
感謝を示す
組織への貢献を支援する
![](https://assets.st-note.com/img/1724779824193-Vfc8zvGl4J.png?width=1200)
そしてILに関する変数の整理は以下の通りです
![](https://assets.st-note.com/img/1724783374398-bdx9eHKULW.png?width=1200)
目がしぱしぱしそうな量の変数ですね…。
図の左上が先行要因(Antecedents)、右上が媒介要因(Moderators)、左下が調整要因(Mediators)、そして右下が成果変数(Outcomes)です。
こうしてみると、インクルーシブリーダーシップが非常に様々な成果を起こすことがわかります。心理的安全性は、個人の調整要因でもあり、チーム成果にもなっています。
ILに関する研究モデルは主に社会交換理論やLMXに基づき、ILと従業員の声や組織的公正感などとの関係を説明する
社会的アイデンティティ理論もILの影響を理解するための重要な基礎となる
考察
ILの概念の統合的な理解を深めるために、研究者は今後、これらの4つの次元を同時に調査し、特定の状況においてどの次元が優先されるべきか理解することが重要である
ILの各次元が相互にどう影響するか、各次元がどのような結果をもたらすかについてはさらなる研究が必要である
学び
正直なところ、次々に研究が発展し、定義も概念も変容していくインクルーシブリーダーシップを追いかけきれていない思いです。それだけ需要があるということでもありますね。
(まだ前者が小さい)アカデミック・プラクティショナーとしては最新の研究の動向は抑えつつ、理論と実践の橋渡し役として、確立された過去の理論も大切に目的に沿った学術知識の選択をしていけたらと思いました。