シンデレラ迷宮
シンデレラ迷宮という小説を、高校生の時に夢中になって読みました。
あらすじは、主人公の女の子が、ある朝目覚めたら童話の世界にいて、童話の中の『悪役』たちが、主人公に、自分たちが悪役になってしまった悲しい経緯を語っていく‥…というお話です。
(遠い記憶なので、たぶん…‥)
悪役とされる人にも、そうなった背景がある。
私は、ちょうど、一つの出来事をいろいろな視点から見るのが好きだったので、このストーリーにハマりました!
そして何よりも、小学生の頃から、母から『妹をいじめる悪い姉』というレッテルを貼られて来たので、その不名誉が少し払拭されるような気がしたのです。
小学生も、低学年の頃です。
幼い妹に対して、どうしてもイライラしてしまう。
妹が生意気なことを言うので、腹が立って大声で怒鳴ってしまう。
そこへ母がやってきて、「お姉ちゃんのくせに、なんで妹をいじめるの?」と叱る。
その繰り返し。
自分でもどうしてそうなるのか分からないし、やめられない。
小学生の頃から、私はシンデレラの意地悪な姉なんだと、ずっと罪悪感を持たされてきたのです。
勧善懲悪が大好きな日本人。
私も、わかりやすく悪を懲らしめる話は大好きでした。
(水戸黄門とか、戦隊モノとか、ヒーローものとか)
しかし、自分が悪役とされてしまう立場の切なさも知っていました。
ヒーローものの『悪役』とは根本的に違うんだと思いたかったと同時に、悪役にも事情があるんじゃないかな?なんてことも考えていました。
そんな時に出会った、『シンデレラ迷宮』という小説は、「私は悪役だけど、そうならざるを得ない事情があったんだ」と自分を弁護してくれる物語でした。
そもそも、毒親によっていじめられている立場だったのに、さらに悪役に仕立て上げられるなんて、まだ小学生の私にとって、本当にひどい仕打ちだったと思います。
それなのに、母と妹は、正義を振りかざして、私を責めました。
本人たちは、正義だと思っているので、何も悪びれません。
妹はまだ幼かったけど、私が妹にキツく当たると母が私を責めることが分かって、ずるく立ち回るようになりました。
そして、姉として敬意を払うということはなく、あからさまではないものの、私を軽蔑しているような態度を取るようになりました。
私は、妹のそういう態度さえ、『私が妹をいじめて来たのだから、当然の報いなんだ。私は妹から姉として尊敬されるに値しない人間なんだ』と思っていたので、文句も言えませんでした。
シンデレラ迷宮に出てくる悪役たちの背景は悲しくて、別に主役をいじめようと思っていたわけではないのに、ちょっとしたボタンの掛け違いから、悪役に仕立て上げられてしまうのです。
作者の氷室冴子さんの描く悪役たちの心理描写は繊細で、童話の中の話とはいえ、十分にリアルに通じる内容に感じられました。
この小説に一瞬救われたものの、『妹をいじめてきた悪い姉。頼りにならないダメ姉』というレッテルは、一生貼り付いています。
先日、仲の良い姉妹と話していて、お姉ちゃんが妹を、面倒だと言いつつも可愛がっている様子がわかりました。
他の人とも『きょうだい』の話になり、面倒だったり嫌なこともあるけど、きょうだいって良いものだ、という結論になり、生きている世界が違うなと感じてしまいました。
きっと妹からは、「私には頼りになる姉が居なくて寂しい」と思われているのでしょうね。
家族を大切にする
この感覚は、私にはありません。
それはずっと、私の性根が悪いせいだと思わされてきたのですが、幼い頃から、家族からなじられ、馬鹿にされ、責められてきたのだから、当然のことなんですよね。
毒親育ちは、家族という存在があっても『孤児』なのです。
今更、家族を思いやろうという気は起きません。
でも、凍てついた心にしたのは、他でもない毒親の接し方にあったのです。
シンデレラ迷宮の『悪役たち』に、名誉挽回の機会が来ることを祈るばかりです。