デザインのこと 〜初めての本づくり その5〜
出版のことをまったく知らなかったところから始まった‘初めての本作り’。
昨年11月に発行した新装版『やまとかたり あめつちのはじめ』の制作について綴っています。
今まで、
なぜ初めて本を作ることになったのか(その1)、
本のテーマとなっている「やまとかたり」について(その2)、
初版から新装版へ(その3)、
大小田万侑子さんの挿画について(その4)
と書いてきました。
最後の投稿からかれこれ10ヶ月になり、だいぶの期間が空いてしまって、反省です。
この本のとても気に入っているところ、デザインについて書かずして筆は置けない!
今回、デザインをお願いしたのは、その3で依頼の経緯を書いた、グラフィックデザイナーの飯野明美さん。
本つくりの門外漢だった私たちに必要なことを的確に察知してくださり、半年にわたって作業をする期間中、一緒に仕事をしながらたくさんのことを学びました。
この本の意図として、「古事記」の古めかしいイメージから離れて、ふと手に取ってみたい本、リビングにおいてもキラッと光る本、古事記のことは知らずとも、神社巡りは好きなのよねーと言うお友達へのプレゼントになる本、そんなイメージを持っていました。
やまとかたりを始めるまで、神様の名前も知らずに神社へお参りしていた自分のことを思い出しても、日本人ですら古事記に触れる機会など日常にはなかなかないことです。
その古事記に、少しでもカジュアルに近づいてもらえる本になればいいなという想いで制作を始めました。
著者の大小田さくら子さんは、長年絵本の朗読もされてきて、絵本を沢山持ってらして、アカツキノイエで毎月開催している絵本の会でもいろいろと紹介していただいています。読んでもらうたびに、笑ったり泣いたり、ずしんときたり。
大人になって触れる絵本は、子供の頃とは違う魅力があるのか、その頃が蘇るのか、シンプルゆえに、余韻を残しながら心に響くものがたくさんあります。
飯野さんに最初にお会いした時、最近ハマって集め始めた好きな絵本を何冊か持っていって相談しました。
その時から、絵本のような柔らかい古事記の本にしたいというイメージがはっきりとあったのだと思います。
この本の特徴は、「やまとかたり」と称して古事記の朗誦を続けてこられた大小田さんならではの、原文を声に出して読んでもらことができるよう、漢字表記ではなく平仮名で記されている点です。
漢字ばかりで記された神様の名前は、初見の方にはとても読みづらく、「天御中主神(あめのみなかぬしのかみ)」、「高御産巣日神(たかみむすひのかみ)」、「神産巣日神(かみむすひのかみ)」、最初に登場される神がみだけでも、ルビが振ってあっても読むのが難しいお名前なので、これは他にはない大きなポイントだと思います。
程よい区切り(スペース)を入れながら平仮名で表記されているので、なかなかアプローチするのが難しい原文が、かなり読みやすくなっています。
そのように声に出して読むことを前提にしているので、原文読みくだし文の最初の章は、デザインをシンプルに、字体は教科書っぽい感じにしてもらいました。
見返しにもなった、大小田万侑子さんの藍染作品が、さらりとした色のグラデーションで下部に施されています。流れる水のイメージです。
大扉には、別の藍染作品【ものがたり文様Ⅱ -春日の神さま-】をベースに、タイトルとバランスが良いように整えて2ページにわたって上部の藤を繋げ、色をグラデーションにしてふわ〜っと本編が始まるようなアイデアを、飯野さんが提案してくれました。
春日の神さまである鹿さんたちは、現在春日大社の近くに住まれているさくら子さんと、お宮参りから春日大社にお世話になっている私の、つながり深いご縁を感じる神さまでもあります。
そして、大小田万侑子さんのイラストを可愛く彩色してくれた中扉のデザイン!
感訳部分のデザインは楽しく柔らかく、絵本のような感じにしたいという希望を伝えて、出来上がったデザイン。ここから続く章の本文の配置、挿絵の使い方や色・構図は、大まかな文字量の配分以外、全ておまかせしました。
そして返ってきたデザイン案は、カラフルで楽しく新鮮なデザイン、かつ内容にもとってもマッチしていて、わーお!
黄泉の国のお話部分には暗い色を使ったり、イザナギノミコトが国(島)をどんどん産んでいくシーンでは文章を点在させるように配置したり、文字と絵と色が絶妙な形でレイアウトされていて、何度みても感動します。
この本に関わるまで古事記には詳しくなかったという飯野さんでしたが、内容をきちんと読み取ってくださったのもよくわかり、まさにこれは神業?と思ったくらい的確なデザインに仕上がっていました。
ここで感訳の章の一部をご紹介。
何度みても可愛い!
本当に素敵に仕上げてくださり、読み物としても目で見ても、とっても楽しい本になりました。
そして、ふと手にとってもらいたい本としての大事な本の顔の部分、表紙のデザインはこちらです。
表紙を布張り&箔押しにすることは、プレゼントにできる本というイメージから、当初より漠然と考えていたのですが、万侑子さんの細かなイラストを箔押しにできるか否か、どの絵が可能か、布色や素材で悩んだり、布色と文字色のバランス、配置のバランスでも悩んだりしながら、最終的に落ち着いたのがこのデザインでした。
表紙の布は仁コットンの青。
箔押しの色はシルキーマロン。
藤原印刷さんを通じて、製本はダンクセキさん、箔押しはコスモテックさんでしていただきました。
他にも、フォントを決める際にも、章によって違いをだすか否か、色も変えた方がいいか、などなどギリギリまで迷いました。
凝ったことをするわけではないけれど、紙とインクとフォントのバランスで、見やすさ読みやすさが変わってしまいます。違うフォントで2回、色見本を出してもらいました。
こんな風に、さまざまに出てくる迷いに対して、意図を汲み取りながらも、少し先を見越して適切なアドバイスをいただけたので、どうにか予定内に印刷できるところに漕ぎ着けました。
初めての本作りでわからないことだらけでしたが、色々意見を交わしながら仕上げて行けたことが有り難く、少しずつ形になっていく本の様子が見えて、毎日ワクワクするような半年間。
本作りへの興味もさらに増していきました!
次は、実際の印刷にまつわる色々についても書いていこうと思います。