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小説『明鏡の惑い』第八章「湖の騎士」紹介文

 小学校2年生になった悠太郎は、卒業してしまった入江紀之のことを思い出している。
 まだ1年生だった悠太郎が日曜日に坂道を下れば、紀之はいつもレストラン照月湖ガーデンの前で待っていてくれた。
 「ユウ、よく来たな。今日もひとりなのか? 一緒に遊ぼう」
 優しい紀之の爽やかな声に、悠太郎の悩みは洗われるのであった。
 あるときは紙に絵を描き、あるときは段ボール箱で工作をした。
 あるときはファミコンで遊び、あるときは照月湖でボートに乗った。
 紀之はどんな遊びを通じても、悠太郎の知識と体験を深めてくれた。
 運動会の鼓笛隊ではベルリラを打ち鳴らし、学習発表会ではヴァイオリンを奏でる紀之の勇姿に、留夏子は憧れの眼差しを送る。
 騎士のような紀之が、若木の剣とともに贈ってくれた言葉の意味を考える悠太郎。
 楽しかった日々は、過ぎ去ってしまった。

https://www.alphapolis.co.jp/novel/703314535/113741973

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