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小説『明鏡の惑い』第九章「左手の小指」紹介文
小学校3年生になった悠太郎は、観光ホテル明鏡閣の大食堂で、調律の狂ったアップライトピアノを弾いている。
2年生の夏から習い始めて、1年と少し。緩やかに上達した悠太郎は、今や両手で〈ロング・ロング・アゴー〉を弾いている。
ピアノ教室の陽奈子先生は、六里ヶ原の開拓農家に嫁いできた。
その詳しい経歴は謎に包まれているが、信仰篤いカトリック信徒であることは知られている。
夏の日に緑の海を割る人のように、トウモロコシの畑を通って悠太郎はピアノ教室に入門した。
先生の娘の留夏子は、レッスンを受ける悠太郎を面白がって観察する。
悠太郎より1学年上の留夏子は、勉学に歌にリコーダーにスポーツに、類い稀なる美質を開花させてゆく。
人は留夏子を六里ヶ原の奇跡と褒め称える。
しかし留夏子の自棄的なところや、物事を思い詰める性格が悠太郎を心配させる。
留夏子との殴り合いの喧嘩に敗れた粗暴な猛夫は、いつか殺すと留夏子に言い放つのであった。
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