足の小指は自分から角にぶつかっている【短編小説#33】
もう限界だ。朝からカンカンに怒っている。
カンカンのプンプンである。プンプンのプンスカプンスカである。
朝、目覚ましなしで早起きができた。目覚めも最高。いつもより時間に余裕を持って準備ができたので、優雅な気分で朝ごはんを食べることができた。そろそろ出発しようとして、お皿をキッチンに運ぼうとした、その時!足の小指を机の角にぶつけた。
のたうちまわった。痛過ぎた。血が出てると思った。出てはいなかったが、確実に折れたと思った。それほど痛かった。どうして?どうして、私のテンションを急激に落とすのか?激痛に悶えていたが、流石に我慢の限界だったので、小指を怒鳴りつけた。
「テメェ!良い加減にしろよ!お前のせいで朝からテンションゲキ落ちじゃねえか!よけることくらい良い加減に覚えろよ!!」
すると、これまで何十年間と黙っていた小指が言い返してきた。
「あのーすいませんが、それはそちらの都合ではないでしょうか?私もぶつかりたくてぶつかってるんじゃないんですよ。」
「なにーーー???だいたいお前は動きがワンパターンなんだよ。足の角にあるからって将棋の「角行」みたいな動きしやがって。もっと飛車とか桂馬みたいな自由な動きして避けてみろってんだ!」
「分かりました。机の角があったら自由な動きをして避ければいいんですね。それでは、角があれば自由な動きで避けさせていただきます。」
それからである。角を小指にぶつける回数が格段に増えた。
「てめえ!今わざと机の角にぶつかっただろ!あえて角の方に向かっていったよな!」
「何を言ってるんですか。桂馬の動きをして避けたんですよ。それなのにあなたが向かう方向をずらしたんじゃないですか。」
「まじ痛えええええええ。いきなりみぎ前に小指が動き出すなんて聞いたことねえよ!!!もっとさ、頭使えよ!!!机の角の半径5cm以内は敵陣だろ!!敵陣なら成駒になって、金将と同じ動きしろや。」
「分かりました。それでは、机の角の半径5cm以内に入ったら、成駒の動きをします。」
それからである。足の小指どころか頭や体をぶつける回数が増えた。
「ばっきゃろーーーーー!!お前どこの誰が、机の角の近辺になったら、足いきなりひっくり返すやつがいるんだ!!!まともに歩きもできないだろ!!!肘ぶつけるし、頭打つし、まじ痛ええええええええ!」
「だって、成り駒の動きをしろと言ったのはあなたじゃないですか。」
「これだったら、まだ「角行」の動きの方がマシだったわ!!!」
小指と飼い主の戦いは続く。
完
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