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「光る君へ」うろ覚えレビュー《第37話:波紋》

「光る君へ」は、最終的に全部で何話になるのだろうか。48話くらい?
それくらいだとすると、あと10話程度ということになる。
秋が深まってきたら、大河ドラマに対して「終盤」を感じるだろうか。
まだ暑いけれど。

■はじめに

37話のストーリーでは、登場人物のキャラやクセがしっかり出ている気がした。そこで、今回はドラマに登場するキャラクターをグループに分けて書いてみた。勝手なことを書いているが、ベースは「光る君へが好き」から始まっていることはご理解いただきたい。

■最近好きになってきたキャラクター

エモンこと赤染衛門
エモン先生は素敵だ。かなり前から登場していたのだが、思慮深いし、文学の知識も広く深い。宮仕えするに至る家の事情もあったようだが、彼女はひたすら誠実に土御門家の倫子、そして今は中宮彰子に仕えている。
以前彰子に、少しトンチンカンな「閨房での心得」などを教授していたのは御愛嬌だった。

37話では、藤式部に対して藤原道長との関係について忠告した。
「そういうこと(男女の関係)もわからんわけやないけど、お方さまだけは傷つけたらあかんで」
素晴らしい。
要は倫子を傷つけるな、という彼女の主人への思いがある。
さらに、左大臣の道長と下級貴族出身の藤式部との関係を完全否定することなく、男女の間柄には大人な対応。
エモン先生は、酸いも甘いも噛み分けた大人の女性だ。

宮の宣旨
最初はめちゃくちゃ負のオーラを放って、後宮に勤めようとする新参者の藤式部を迎えたわりに、そんなことが全然なかった人。
37話では、彰子が一条天皇に捧げる『源氏物語』を冊子にまとめる作業の際、使用する美しい紙を見て、口を滑らす。
「こないな美しい紙に書かれてるもんを(あても)もらいたいわぁ」
これが、他の女房たちの笑いを誘った。
ここにも、ただただ誠実に主人に仕える女房がいた。

左衛門の内侍
藤壺においては、藤式部と宮の宣旨以外では、この左衛門の内侍が一番目立つ。藤式部が彰子に重用されたり、道長から特別待遇されることに不満を持つ同僚女房だ。
しょっちゅうトレー(正しい名称ではないです)を持って右往左往している。さて、あのトレーの上には何が載っているのか。
彼女の気持ちもわかるのだ。
新参者が自分の主人の興味をかっさらった。
古参の者は不公平に感じるだろうし、その新参者のゴシップで鬱憤をはらしたい気持ちも理解できる。ああ、できますとも。
彼女は、実在の人物である。
万人に好かれるなんてことは大谷翔平にだって不可能なことだ。
人気者にアンチは湧く。社会にはそういう人もいる。
普通の女性だ。それでいいじゃん。

賢子
まひろこと藤式部の娘である。ドラマの藤式部は子育てが苦手みたいだ。
37話では、里帰りした藤式部による内裏生活の自慢話が、彼女のモヤモヤの導火線に火をつけた。
そして里帰りしたばかりの藤式部がすぐに内裏に呼び戻されるとなったとき、爆発したのだ。
「一体何しに帰ってきはったん? 自慢するため?」
よくぞ言った。

賢子(エル姉左手画)

その後に言った藤式部のセリフはテキトーだと感じた。
「宮仕えしながらな、高貴な方とのつながりを持って賢子の役に立てよう思て」
それに対し、賢子が叫ぶ。
「ウソつき! 母上なんか大嫌いや!」
でしょうねぇ。回答がテキトーな感じがする。
藤式部は娘のためではなく、自分のために宮仕えしている。
家を支えるとか、家族のこととか、そんなのは二次的なことだ。
賢子はまだ幼くて、繊細で鋭いからそれがわかる。
ただ普通の母親がほしいだけだ。
頑張ってほしい。頭は良さそうな子。
そのうち彼女も宮仕えすることになるはずだが、そのときに出仕していた母親の気持ちが少しは理解できるのだろうか。

琵琶
あ、すいません。これはキャラクターではないですね。
ただ、あたしの心を捉えて離さない、しかも油断ならない存在なのだ。
毎度藤式部が里帰りするたびに実家の部屋の傍らに立てかけてあるこいつ(琵琶)を映す、意味ありげなカメラワーク。
そのたびにあたしは身を固くする。
「あかん。藤式部が弾いたらどないしよう」
不安になるのも当然である。だって、藤式部の演奏が変だもん。

37話にも意味ありげに琵琶が登場している。
だが藤式部はそれを演奏どころか手に取ることさえしなかった。
弾かないんかい。意味ありげに登場したんだけどな。

もしかしたら、あたしは藤式部の弾く琵琶を期待していたのか。
あの意味不明な、ばらばらーん、ばらりーん、というナゾ曲が。
怖いもの見たさ、というやつである。

■心配なキャラクター

伊周
藤原伊周よ、だいじょぶ?
最近の伊周は、いつも薄暗い部屋で謎の重厚感を醸し出してるだけで、空振りしている。
彼の政治生命をつなぐ頼みの綱は、一条天皇が愛した皇后定子の兄であることと、天皇と定子の第1皇子である敦康親王の伯父であるというポジションだ。それだけ。

いい子の敦康親王(エル姉左手画)

37話では、伊周が道長と同じ位階である正二位に昇進したが、状況は楽観できない。一条天皇と中宮彰子の皇子で、道長の孫である敦成親王あつひらしんのうが誕生したからだ。
敦康親王の天皇の後継者という立場が危うくなったと親族たちが騒ぎ、伊周に訴える。

対して伊周は言うも言ったり。
「事をいたら過ち犯すで」
あんたが言うかね。

安易に弟の藤原隆家といっしょに花山法皇を危うく殺しかけた伊周。
御嶽詣に行った道長を意味不明に暗殺しようと動き回ったあげくに隆家に止められた伊周が。
親族たちの訴え受け、伊周は策に打って出る。
もちろんその策とは、また道長をターゲットにした「呪詛」なのである。
最近、この人は呪詛しかやってない。
でも、ことごとく彼の呪い効果はない。
あんなに一生懸命憑り代に名前書いて、釘打ち、夜を徹して呪ったのに、彰子に無事皇子が誕生したことからも明らかだ。

弟の隆家は、藤原公任に兄を見限ったと宣言。
教養あふれる二枚目貴公子だった伊周の長くないジェットコースター人生はもうじき終わりを迎える。

彰子
合わない。彰子とあたしが。
ドラマには全く影響ないですが。

37話の彰子の敦康親王への満面の笑み。だが、似合わない。
最近は彼女に不用意な自信が湧いてきたようだ。

人の性格とはそんなに劇的に変わるものか。
生まれてから天皇の后になってしばらくの間まで、実の両親にさえ「何考えてんだかわかんない娘」と思われてきた彼女。
天皇の后となり、皇子を生むのはすごいことだが、それで性格まで変わるんですか。ホルモンバランス?

以前は話さない彰子をもどかしく思ったものだが、雄弁な彰子にも違和感がある。
無口ながらも行為・行動で聡明さと優しさを垣間見せ、一条天皇をはっとさせながら、やがて夢中にさせる・・・みたいなのを期待していたのだが。
なんか思ってたのと違う。
ドラマでは、天皇が目をぱちくりするほどの「お慕い申し上げておりまっせ」の激告白、最高の紙と労力を要した派手な冊子のプレゼントで押しまくる彰子の行動。これからどうなるのか。

藤式部(まひろ)
おそらく37話では、多くの視聴者が藤式部の里帰りにおける自慢話に辟易しただろう。
あのいとも、乙丸さえも引いていたではないか。
細かいことにはこだわらない藤式部の弟・惟規のぶのりまでもが彼女を諌める始末。彼女の娘・賢子が態度を硬くするのも当然である。

いと(エル姉左手画)

藤式部と彰子との褒め合い(?)も気持ち悪い。
なにかと彰子は藤式部を重用するし、身辺から彼女を離そうとしない。
藤壺に盗賊が入り、藤式部が駆けつけると、それでだけでもう藤式部の大手柄である。
「大事ありまへん。藤式部が駆けつけてくれましてん」
そう言って藤式部をたてて父・道長に説明する彰子。
一方、藤式部のほうも、そのときのことを道長に問われてこう答えた。
「ご立派なんは中宮さまですねん」
「威厳と慈悲に満ちあふれてはって、胸打たれましたわ」
え、いつ? そうなの? 
私には、中宮は特に何をしたようにも思えなかったが。
二人で褒め合う気持ち悪さ。
ちょっと、左衛門の内侍! 何か言ってやって!
ただ、藤式部は宮仕えしているほうが生き生きしているのは確かだ。

ナゴンこと清少納言

ナゴン(エル姉左手画)

もともと清少納言が好きなあたしだが、37話のファースト・サマー・ナゴンには特に魅力を感じなかった。
今回彼女は喋らず、鋭い眼差しをして怖い顔をしていることも多くて。
定子の娘、脩子内親王ながこないしんのうの教育係をしているようだが、どう見ても生き生きしておらず、伊周のように闇落ちしている。
ちゃんと内親王を教育してあげなよー。

そんな清少納言が、藤式部の局に会いにやってきて言ったのだ。
「光る君の物語、読みましてん」

え。で、それで?
でもここで37話は終了。
この先、何と言うのか聞くのが怖い。

どうしたいの? ナゴンに何を言わせたいの? 敗北宣言?
今のナゴンはあまりにも「負」を背負っていて、伊周みたいにすごく重い。
言わせていただくが、『枕草子』は素晴らしい。
『源氏物語』ももちろん素晴らしい。
ジャンルと目的の違う2つを比べることはできないんだから、一緒に語らないで欲しいなぁ。

■気になるキャラクター

双寿丸
37話でいきなり全視聴者の注目を浴びたのは、彼だろう。
藤壺に入った盗賊たちは、結局逃亡途中に女房たちから剥ぎ取った衣を道に捨て置いて退散した。その時、疫病を追い払うための「鬼遣おにやらい」という夜回りで通りがかった男が、双寿丸という青年だ(名前はあとで確認しました)。
夜道で月に照らされて浮かび上がる顔、そのミステリアスな雰囲気が、誰かを彷彿とさせる。誰かとは、あの非業の死を遂げた直秀だ。
武者らしい。だが、武骨さはあまり感じられず、むしろしなやかで自由な雰囲気を持っていた直秀に近いイメージ。
世間では双寿丸役の演者の起用について取りざたされているが、ここでは触れずにいよう。

今、顔パック外したばっかりの双寿丸(明石白左手画)

上級貴族たちが私利私欲のために活動している内裏の内々のストーリーは、少し脂っこい。この青年が一服の清涼剤となるかどうか。