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【麒麟がくるレビュー・2軍】その28 「新しき幕府」作ろうぜ

82歳の日本男児・じーちゃんと、12歳の日本人とスペイン人ハーフ男児・エルによる『麒麟がくる』のゆるーいドラマレビューです。今回からスペイン人タマラも参戦!? 2軍には2軍なりのスタイルがある。


■Tamaraの「戦国武将、お顔拝見」

新人を紹介しよう。
友人が超少ない私が持つ、ほぼ唯一のスペイン人の友人・タマラだ。
一緒に日本旅行に行ったこともあり、エルはもちろんじーちゃんのことも知っている。

彼女は、旦那さんと一緒に家業を継いで会社を経営している金持ち女性だ。
だが、外見は全く金持ちっぽくない。
いつも同じ作業カバンを持ち歩き、穴の空いたセーターを着ている。
結婚式もジーンズで済ませたという強者だ。で、頭がいい。

私と彼女とは週に1度くらいコーヒーを飲んでおしゃべりする。
そこで彼女に『麒麟がくる』のキャストの写真を見せてみた。

ドラマはおろか、日本史に関する知識を全く持たない彼女が、さあ、登場人物たちにどんな印象をもったのか。

今回は主人公・明智光秀だ


写真を見るなりタマラが言う。

「いい人ね」

なるほど。

善人っぽい顔は万国共通というわけか。

彼女は続ける。

「とても礼儀正しい、きっちりした人よ。サムライだからって急に誰かを襲ったりはしないわ

え。

はい?

いや、光秀は、本能寺で・・・と言いたいところをぐっと我慢し、顔に出さない努力をする私。

ああ、やっぱそう見えるのかな。

すると彼女はギロリとこちらを睨むと続けて言い放った。

でもね、油断しないで。
彼は理由があったらruthless(ルースレス/情け容赦ない、冷酷な)になるわ。そういう男よ。

ひー。

なんて鋭いんだ、タマラさん。
知ってるのか、あんた知ってるんだね、本能寺の変の未来を。
なんだか顔つきが暗殺者みたいになってるよ。

オレンジジュースとコーヒーを交互に飲みながらケーキを頬ばる彼女を見つめ、「占い師になればええのに」と思った次第である。


■信長と石仏、じーちゃんと臼杵の石仏

じーちゃんはちとショックだった。

信長が二条城普請をするときに、石仏まで石垣に利用しようとしたことが、である。

「石仏の首を斬って使おうとするんじゃ。気分的に良くはないのぅ」
「信長の悪い性格がじょじょーに出てきたな」

じーちゃんは実に先祖を大切にする人だ。
お墓参りだってちゃんとする。

仏壇は彼のお菓子の隠し場所で、お供え物も勝手に食べるけれど、それでもマメに掃除している。

お盆には迎え火も送り火も忘れなかったらやる。
忘れてたらあとで両方を一度にまとめてやる。

お寺や仏像へのリスペクトを忘れない。

「はいはい。ありがとーさん」

何がありがとうかわからないが、とりあえず手を合わせている。


そんなじーちゃんにとって、石仏の顔ををペチペチ叩いたり、割って城の普請に利用しろ、などという信長はやっぱ「あり得ない」のだ。


というところで、

「石仏と言えばな、臼杵(うすき)の石仏というのがあってやな」

脱線ゴングは鳴った。

じーちゃんはもともと船のエンジンの設計者だ。
今は下火の造船業界だけれど、彼は若い頃いくつものフェリーやタンカーを作っている。

なぜか話題は「信長の石仏」から、じーちゃんたちが作るフェリーが、大分の臼杵に就航できるように、交渉目的で港湾関係者と飲みに行ったことに移ってしまった。

臼杵には有名な石仏がある。岸壁の石を彫刻して作った磨崖仏(まがいぶつ)だ。

「まあ、あれくらいしか接待で関係者を連れて行く場所はないしな、臼杵には」

臼杵の人が聞いたらむっとするようなことを平気で言うじーちゃん。

「テキトーに石仏見て、飲んで食うただけじゃ。うひゃひゃ」

わかったのは、じーちゃんがこれっぽっちも石仏をリスペクトしてない人だということでした。

■エルの鋭い指摘

やっぱりエルとの話題も石仏が中心。
仏罰を怖れない信長の性格を垣間見たシーンではあった。

エルも日本文化、仏教文化ををあまり理解していないのかも。
ドライなヤツだから、信長が石仏を割って城づくりに利用するのも仕方ないと思っているようだった。

「信長も仏さまにdisrespectful(ディスリスペクトフル/無礼、失礼)なんだけど、まあ将軍のためだからね。しよーがない」


だが、そう言って肩をすくめるエルが、このあと注目の発言をした。


「将軍は、お城を作ってくれる信長にありがとう、っていってたけどさ。前は覚慶っていうお坊さんだったでしょ。あの人、自分のお城が石の仏さまの首をちょん切って作ったお城でもいいの?

おお。

その言葉に二の句が継げなかった私。

だがドラマでは、将軍義昭は石仏をぶっ壊して作った石垣の二条城で暮らすことになるのでした・・・。


また来週。