詩「ボクシング、かもね」
左手で書いたせいでこの詩は歪んでいる
歪んだ詩は死だ 悲しくない死だ
遠くでボクサーがばすばすと殴り合う音がする
もしかしたらセックスの音かもしれない
セックスと殴り合いは似ている
僕の想いは拳に握られた途端に虚になっているし
僕は突然きみの腹を踏みつけている
産んじゃ駄目だ
産んじゃ駄目だ
産んじゃ駄目だ
きみは妊娠なんかしていないし蛇でもない
言葉だ
僕はきみから産みだされる言葉を恐れいる
きみの嘔吐物を恐れている
いつのまにか流れていた血は僕を
救う 救わない
温度は毒だ 僕から言葉を、詩を奪う
温かいことは僕が焼け死ぬってことだ
レフェリー どうかストップをかけてくれないか
彼女の口をふさいでくれ
生ぬるい同情も肯定もいるか
沈黙こそ愛だ 救いだ
僕が意味のない言葉で行間を埋めてしまう前に
早く、帰ってくれ
リング下に寝そべったレフェリーは
DYNAMAITEを正しく綴れません
真っ黒い脳髄をぽたぽたと鼻から落としながら
僕を罵倒している
「あいつは病気です」
「あいつは奴隷です」
「あいつは陰気です」
「あいつは死刑です」
帰れ帰れとうるさい帰る場所など誰にもないのだ
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