つれづれ雑記*限定、の話*
期間限定。数量限定。
この言葉の持つ強烈な引力に逆らえる人はそんなに多くない、と私は思う。
後で冷静になって考えると、これ、いるかな、と思うようなものでも、『限定』と札がついていると、何だか欲しくなる。
ほら、今を逃すともう手にはいらないかもしれないよー、どうするどうする、ほらほら、もうすぐなくなっちゃうかもよー。
こんな言葉が聞こえてくるような気もして。(幻聴?)
物自身の特質、価値そのものでなく、それが数が少ない、希少な物であるということが、人の所有欲を刺激するより大きな力のひとつであるというのは、誰も否定できないだろう。
ここから書くことは、私の主観、いや、偏見だ。気を悪くされた方々には、予めここでお詫びをしておく。
世の中にときどき存在する、どうしてそれにそんな高い値段がつくのだろう、と思われる現象は、この『限定』に対する人の思い、所有欲、もっと言ってしまえば独占欲がカタチをとったもの、そして、その気持ちを利用した経済活動のひとつ、ではないかと思う。
たとえば、有名な作家の作品。絵とか、彫刻のような一点物の話。
時折、天文学的な価格で取引されているのをニュースで目にする。
何を言っているのだ、それはその作品に芸術的な価値があるからだろう、と言われるかもしれない。そしておそらく、そのとおりなのだろう。
だが、果たしてそのびっくりするような値段は、それそのものが持つ芸術的価値にのみによるものだろうか。
(そもそも、私のように無粋なものには芸術的価値があまりよくわからない)
資本主義の原理から言って、およそ価格が上がるのは需要に対して供給が少ないとき。
つまり、作品一つに欲しい人間がたくさんいるから、ということに他ならない。
そして、その大勢の人間は、なぜにその作品が欲しいのか。
まず、個人的に純粋にその絵が好き、その作者のことが好き、あるいは尊敬しているから、という理由が考えられる。この場合は、よほどのお金持ち、そして、なかなかに占有欲が強い人である、と言えるかもしれない。
いわゆる、コレクター、と言われる人種だろうか。
もちろん、個人的に独占するのではなく、どこかの非営利団体がその作品を何らかの施設に展示して見たい人に見せ、それによって報酬を得る、ということもあるだろう。この場合は、その得た利益を使って、その貴重な作品を安全に管理し、長く未来へ受け継いでいくという意味もあるので、わたし的にはこれが1番納得がいくように思う。
それから、もうひとつ、その作品そのものというより、その作品の金銭的価値のみが、注目される場合もある。つまり、資産とか財産、しかも、その価値は時間が経つと上がることもあるから、証券や貴金属、不動産のようなものか。
いわゆる投機、というやつ。
これも個人の大金持ちの場合もあるし、企業とか何かの団体であることもある。
そして、そういうことが起こり得る全ての原因は、そもそもこの作品がひとつしかない『限定品』であるから、に他ならない。
少なくない金銭を払って個人的に占有したいのも、混雑を覚悟の上で展示を見に行きたいのも、所有しているだけでどんどん価値が上がる(こともある)のも、それがこの世にひとつしかない、あるいは非常に数が少ない物、だからだ。
それはいつも、いわゆる芸術品とは限らない。
わかりやすい例を出すと。
マリリン・モンローのキスマークのついたハンカチ。
ジェームス・ディーンが映画「エデンの東」で着用していたジーンズ。
どこかの国の大統領が、ある有名な歴史的条約にサインしたペン。
こういう類いのものが、オークションで数十万ドルで落札されたというニュースを読んだことがある。
私には、いったいどうしてそんな値段がつくのか全く理解できないが、やはり、それはそれらが世界に唯一の存在であるから、そんな破格の価格がつくのだろう。そして、その値段を払っても欲しい人がいる、あるいは欲しい人がいることを知っている人がいる、ということだ。
今さら当たり前のことを言うなと言われるかもしれないが、物の値段と、その物自体が持つ価値は、別次元なのだ。
そもそも、金銭から離れた、物の『価値』なんて、人それぞれ、時代それぞれ、状況それぞれで、これと決められるものではないだろう。
キラキラと輝くダイヤモンドは、世界中で非常に高値で取引されている。
それとて、もちろんダイヤモンドの美しさもあるけれど、やはり、ダイヤモンドが希少だからだ。より大きくてキズのないものならなおのこと。
そして、その『希少』が、何よりの価値となり、びっくりするほどの値段がつき、その高価な貴重なものを所有すること、それこそが、持ち主のステイタスとなる。
決してダイヤモンドそのものだけの、価値ではないのだ。
ダイヤモンド自身は、そんなこと、歯牙にもかけないだろうけど。
……とか何とか言いながら、私も季節限定、と聞くとついつい気持ちが騒ぐ。
ちなみに、ヘッダーの写真は、某有名人気ファーストフード店の夏限定スイカフラッペとゴールデンパインフラッペ。
限定品。
やはり、その魔力には抗いがたい。