つれづれ雑記*再現は無理、の話*
私が我が家で料理担当になってから、かれこれn十年になる。
特別、料理上手というわけでもないが、毎日、何とか食べられて家族から大ブーイングが起きない程度の食事は用意出来ている、らしい。
私は生来の雑さからあまり細かいことは気にしない。なので、レシピを見てその通りにきっちり作ることはあまりない。
計量スプーンも計量カップもあって、いちおう使ってはいるが、すり切り、とか、山盛り、とか、2分の1、とかについてはかなりアバウトだ。
それ以外にも、例えば市販のルーを使ってカレーやシチューを作るとき、箱裏に書いてあるとおりの分量で作ったことがない。
そもそも、あの分量、おかしくないだろうか。
あの手のルーは、全量で8皿分、とか書いてあるが果たしてそうなのか。
我が家は4人家族だが、あれに書いてある通りに半分の量でつくったら、シチューでもカレーでも絶対に足りないと思う。
なのでいつもルーを全部使って作るが、それでそんなに余ったことはない。
我が家の家族が皆そんなに大食らいとも思えないのだけど。
それとも、他所のお宅はシチューやカレーを作ったとき、他にもっといろいろな副菜を作られるのだろうか。一度、伺ってみたいと前々から思っている。
話がそれた。
とにかく、私の料理はなかなかに大雑把なのだ。
いつのことだったか、夕食に炒め物を作っていたとき。
味付けをどうしようか。
塩コショウもいいし、醤油でもいいか。オイスターソースで中華という手もある。
いや、そもそも作り始める前から決めとけよ、という話だが。
そうだ、冷蔵庫にだいぶ前に買った焼き肉のタレが残っていたよな、あれ、使えるんじゃないか、て言うか、そろそろ使わないとまずいんじゃないだろうかと思い至る。
冷蔵庫を開け、ドアポケットを探る。
賞味期限が1週間過ぎているが、まあ、許容範囲内だろう。
しかし、残っている量が心許ない気がする。見ると瓶の内側にはまだたくさんのタレが付着している。振っても出てこないな、これ。
でも、このまま捨ててしまうのもどうなのか。
閃いた。
瓶の中へまず、料理酒を少し入れる。
蓋を閉めて、しっかりシェイクする。うん、いい感じに内側にへばりついてたタレが溶けている。
そこへお醤油を少し、それから私は甘い方が好きなのでみりんを少し。
さらにシェイク。
スプーンに少し出してなめてみる。
うんうん。いい感じだ。そうだ、お酢。お酢はコクが出ると聞いたことがある。
少しずつお酢を入れて、またシェイク。
そんなふうにちょっとずついろんなものをいれては、シェイクする。
もう一度味見。うーん、こんなもん?
よし、レッツゴー。
炒め物の入ったフライパンに投入。ちょっと日和って少しずつ。
また味見して、まあ、いけるだろう、と全部投入。これでタレの瓶はきれいに空っぽになった。
ざざっと炒め合わせて、はい、出来上がり。
夕食のとき、炒め物を食べた家族は口々に
「美味しいね、これ」
と宣う。
私、テーブルの下で密かにガッツポーズ。
「また、して欲しいなー」
えっ。
いや、それはちょっと無理かも。
何をどれだけ入れたか、覚えていないのだ。完全に同じものは出来ないかもしれない。
それからつい先日のこと。
休日の昼食にケチャップライスを作っていた。
具を炒め、ご飯を入れる前に調味料を入れようとしたら、ケチャップの残りが少し足りない気がした。買い置きのストックはあるけど、少しだけのために開けるのがめんどうだ。
中身が底と内側にへばりついているケチャップの容器を眺め、しばし考えた。
よーし。
ケチャップの中に料理酒、みりん、醤油を適当に入れて、蓋をしてシェイク。
スプーンに出して味見する。
うーん。いけそうだけど、少しパンチが足りないような。そうだ、冷蔵庫にキムチがあった。キムチの汁を少し足す。
…こんなもんかな。
フライパンの中の具を端に寄せて、全量を投入。
ちょっとクツクツさせて煮詰めたところへ、ご飯をドン。
ガーッと炒め合わせて、塩コショウ少々。別に作ったふわふわ玉子を乗っけて。
はい、出来上がり。
ひと口食べた娘。
「いつものとちょっとちゃうけど、美味しいやん。また、してよ」
いや、だからそれは無理なんだってば。
再現不可能なメニューほど、美味しい、と言われるのは、どうしてなのだろう。
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