![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/152700651/rectangle_large_type_2_403c21b08cdf30e19c6364ad3ee41dbd.jpeg?width=1200)
つれづれ雑記*ヤジロベエ、ゆらゆら、の話*
ヤジロベエ。
最近はあまり見かけないから、お若い方々はご存知ないかもしれないが、昔からある子どものおもちゃだ。
小学生の頃、理科(今は生活科、とか言うのかな)の授業で教材に使ったのを覚えている。
人が片足で立って両手を横に大きく広げたような形をしている。
身体の部分を胴、手の部分を腕、という。
腕は胴に比べて、うんと長く斜め下にカーブしている。その両端にはそれぞれ重りがついていて。
学校の授業で作ったときは、胴はドングリ、腕は竹ひごや針金、重りは重さや位置を調節しやすいように粘土を使ったり、してたかな。
脚の先を、指の先端とか何か杭とか、出っ張ったところに立てると、一本脚なのだけど左右の重りでバランスが取れてちゃんと立つことができる。海外では、そのまま、バランス・トイと呼ばれるらしい。
(こんな説明でわかりましたか?ようわからん、と言われる方は、すみません、検索してみてください。たくさん画像が出てきます)
安定して立つには、もちろん左右の重りのバランスも大切だけど、腕の長さと角度を調節して重心を下へ持ってくることが重要。
ちゃんと重心が定まれば、かなり大きく大胆にゆらゆらと揺らしても、倒れない。
話は変わる。
この世の全てが(お、いきなり主語が大きくなりました)、このヤジロベエのように、ゆらゆらするバランスの上に成り立っているのだ、と気づいたのはいつのことだったか。
そもそも、この、人の、いや、人に限らない、遍く生物の生命というもの自体が、非常に繊細な均衡の上に成り立っていて。
私たちの身体の中には、信じられない数の細胞があり、それぞれが絶妙のバランス、タイミングで動いている。細胞だけではない。ホルモン、酵素、神経の電気的な信号伝達、時折起きるバグでさえも。
どんな精密機械だって及ばないほどの気が遠くなるような、超絶バランス。
それのどれが崩れても、たちまち、あるいはゆっくりと不調をきたす。
生きているということは、常にこの危うい微妙な均衡を保ったまま歩く、綱渡りのようなものだ、と私は思う。
簡単な例で言えば。
運動すると身体にいいという。
それは、誰も否定しないだろう。激しい運動はできなくても歩くことはできる。だから、毎日歩こう。1日一万歩、とかよく言われていた。
ただ、昨今はここまでやるのはやめたほうがいいと言われている。歩き過ぎると膝の軟骨を痛める。高年齢で軟骨を傷めると治らない、と新聞で読んだ。
でも、だからといって、膝を大事にし過ぎて歩かないのは、もっとよくないだろう。
かつて、日光に当たるのが身体にいいと言われた。子どもにいたっては、夏の間に日に当たって日焼けしたほうが冬に風邪をひかないなどと、眉唾物の話も聞いたことがある。
ご存知のとおり、今は紫外線に当たり過ぎるのは良くないと言われて、子どもにも日焼け止めが推奨されている。もちろん、熱中症も心配だし。
そして、それが周知された今、今度は逆にあまりに日光に当たらなさ過ぎによって、ビタミンD欠乏症が心配されたりも、しているそうだ。
歩くのも安静にしているのも、日に当たるのも当たらないも、もちろん、他のことでもバランスが大事で。
これさえ、ここまでしておけば大丈夫、などという絶対的な規範など存在しない。
各人が各人に合う最良点を探り探り、見つけるしかないのだ。
その他の、別のことでも。
観光地にたくさん人がきてくれるのは嬉しいし、助かる。地域に活気が出て、雇用も生まれる。住人も増える。
でも、あまりに大勢の観光客が押し寄せるとどうなるか、それは最近のニュースを見ればわかること。
環境の変化、あるいは乱獲によって絶滅の危機にさらされている動植物たち。
だからといって、ある種をやみくもに、ただ保護すると、今、かろうじて保たれているバランスが一気に壊れる、かもしれない。そこからドミノ倒しで崩れていけば、それこそ止め処がなくなってしまうだろう。
表現の自由。行動の自由。それは素晴らしいこと。
多様性の重視。それも素晴らしいこと。
人間はすべからく、何かに縛られて生きるべきではない。全ては、自由であるべきだ。
でも、人はともすれば、自由には責任と義務がついてくることを忘れてしまうことがある。
やりたい放題と自由は違う。そして、その境目、見極め、バランスを取るのは難しい。
バランスが崩れた結果、今までなかった規制や規則ができて、逆にもっと不自由になることも。
思いつくまま、あれこれ書いたが、もっといろんなところで、し過ぎしなさ過ぎで、均衡が崩れ、とんでもないことになるというのはたくさんあるだろう。
これはこう、あれもこう、何もかもをぴっちりきっちり決めていたほうが楽だけど、決めてしまったら行き詰まってしまう。
世界って、なんて難しいのか。
生きていくためには、ある程度あやふやなままずっとバランスを気にして、ゆらゆら揺れ続けなきゃならない。
まるでヤジロベエのように、あっちへ傾き、こっちへ揺れて。
細い塀の上をゆらゆらと、どちらか片方に落ちてしまわぬように、バランスをとりながら歩いていかなくちゃならない。
何だかものすごく頼りない、おぼつかない感じ、だけれど。
でも、大丈夫。
丁寧に作られたヤジロベエならば、そうそう倒れることはない。
それはもちろん、左右の重りできちんとバランスが取れているからだけど、もうひとつ、理由がある。
それは、足元の軸が定まっているから。
どんなに頼りなげにゆらゆら揺れても、軸と重心が一本の線でしっかり定まってさえいれば、倒れることはない。
誰であれ、何であれ、本当に大事な軸はひとつっきり。
でも、それは人によって違う。違っていていいはずだ。
……あなたの軸は、何ですか。
*****
ストレイ・シープならぬ、ストレイ・タイフーン、迷える台風10号に振り回された1週間でした。
現在、熱帯低気圧になったというものの、場所によってはまだまだ完全に安心はできないようです。
皆様、どうぞご安全に。