つれづれ雑記 *ラーメンは美味しい、の話
日本で、休日の昼食はインスタントラーメン、の率はかなり高いのではないかと思う。
袋麺もいいが、あのカップ麺のジャンキーな味も捨てがたい。
今年はあのカップヌードルが開発販売されて、50年になるそうだ。
これに先立つこと13年前に日清の安藤百福氏によって、かのチキンラーメンが開発されたのは有名な話だ。朝ドラの題材にもなっていたように思う。
カップヌードルは、このチキンラーメンを海外に広めようと欧米に視察旅行に出掛けた安藤氏が、現地スーパーのスタッフが試食用のチキンラーメンを小さく割ってカップに入れて作り、それをフォークで食べていたのを見て思いついたと先月の新聞で知った。
カップの材質や、製造過程のあれこれ、さまざまな問題をクリアして、カップヌードルが売り出されたのは、1971年の9月のこと。
私が初めてカップヌードルを食べたのは小学4年生、だったと思う。
私はその頃、ラーメンが好きではなかった。実家はほとんど外食をしない家だったので、ここで言うラーメンとは母が作る袋麺のインスタントラーメンのことだ。チキンラーメンではなく、○○一番、とか、○○一丁、とかだったと思う。
母が作るインスタントラーメンは、どうしてだか私にはあまり美味しくなかった。
幼い頃の私はただでさえ食べるのが遅かったので、ラーメンの麺はどんどん伸びてしまい、そしてますます美味しくなくなる。
いつも汁を吸ってブヨブヨになった麺を半泣きになりながら、口の中に押し込んで食べていた。
小学生の頃、私は毎年春休みになると母の実家に行き、4日ほど泊めてもらっていた。
母の実家は農家をしていて朝が早い。休日もない。祖父母や叔父叔母、それから母も、毎朝早くから作業やら何やらで出かけてしまい、私が朝起きる頃には家にはだいたい誰もいなかった。
昼になると、朝練に行っていた高校生の従姉妹が帰ってきて昼食を作ってくれて一緒に食べた。従姉妹にしてみればさぞかし迷惑だったと思うが、兄弟のいない私には楽しい時間だった。
その従姉妹が、ある日の昼にカップヌードルを作ってくれた。(て言っても、お湯を沸かして入れるだけだけど)
ラーメンが好きでなかった私は恐る恐る口に入れ、その初めての美味しさに衝撃を受けた。まさに目からウロコ。
こんな美味しいものがあったのか。
その日から、毎日昼食はカップヌードルを従姉妹にねだった。従姉妹にしたら簡単だし、ダメという理由はない。
この体験で私の中には、ラーメンは美味しくないけどカップヌードルは美味しい、というよく分からない認識が出来た。
その認識が更に変わったのは、その次の年の冬、当時住んでいた団地にラーメンを売る、今で言うところのキッチンカーが週一で来るようになってからだ。
先に食べた近所の人がすごく美味しいというので、私は母に言われて片手鍋を持って団地の階段を降り、ラーメンを買いに行った。
歳の頃は幾つくらいだったろう、当時の私には分からなかったが、結構若くてお兄さんと言ってもいいくらいの店主さんに「2つください」と言って鍋を渡す。
鍋に何か濃いタレのようなものを入れ、そこに茹でたての麺をザル(ラーメン用の湯切りザルをテボ、というそうです。知ってました?)で湯切りして入れ、そこに茹で湯を足し、ネギとシナチクをのせて出来上がり。
その所作が流れるように手際がよく、見とれるほどだった。
こぼさないようにそっと、でも伸びないように足早に家まで帰り、急いでどんぶりに分けて母と食べた。
その、美味しかったことと言ったら。
そのときから私の中でまた新たな認識が出来た。ラーメン、美味しいじゃないか。
それから、キッチンカーが来るたびに母にねだったが、結構いい値段だったため、そうそう食べさせてはもらえなかった。
今思うと、母の作るインスタントラーメンは麺がいささか茹で過ぎで、しかも湯が多いせいでスープの味が薄かったのだろう。
やがて季節が変わってキッチンカーは来なくなり、その後、私は父の仕事の都合で引っ越してしまったのでもうそのラーメンは食べることがなかった。
もう食べられないと思うから余計にそうなのかもしれないが、私には今でもあれが1番美味しいラーメンだ。
そしてカップ麺の王者はやはりカップヌードル。
こんなことを書いてはいるが、実は私には、まだ食べたことがなくて1度でいいから食べてみたいラーメンがある。いわゆる屋台のラーメン、というやつ。
ドラマとかで、飲み帰りにサラリーマンが食べているのをよく見る。
なぜ、飲んで食べた後に更にラーメンを食べるのか、私はずっと不思議だったが、家人や父に言わせると飲んだ後のラーメンはことの外、美味しいらしいのだ。
お酒は飲めないけど、あの、絵に描いたような屋台の暖簾をサッとくぐって「おじさん、ラーメンひとつ」って言ってみたい。
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