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オーバカナルというテーマパークでランチを楽しむ日曜日

用事があって母と四谷に出かけた。
四谷でランチなんて滅多に食べないけれど、「母と」「四谷で」「ランチを」という3条件が揃った時は決まって紀尾井町のオーバカナルに訪れる。入る時間も決まっていて11時半ごろ。せっかちな母親が混雑をとにかく嫌うからだ。
初めてオーバカナルを知った時、その名前の日本語的な違和感にすごい度胸だなと感心していた。「大馬鹿なる」なんて、外国語だとしても日本じゃ躊躇っちゃう名前じゃないか。でもフランスの余裕というか優雅さというか、そんな不安はどこ吹く風でオーバカナルはめきめきと人気を博し、洒落た都心の街にはヒラリと店を構えて、日本人も外国人もそぞろと訪れる人気店となっている。あんな心配してた私、馬鹿みたい。

店の中も何処となくフランスを感じる雰囲気で、玄関の白黒タイルとか、深い紅色の椅子の感じとか、とにかく脳内イメージのパリの小洒落たブラッセリーを彷彿とさせる。柱に均等に貼られたエシレバターのシールさえもオシャレに見えてくるから不思議。雪印バターのシールを柱に貼りまくっても、こんなオシャレにはならないよ。

なんでかこのエシレのステッカーが柱に並べて貼ってある。不思議な店、オーバカナル。


紀尾井町のオーバカナルのギャルソン(店員もオーバカナルではそう呼びたくなってしまう)も何年も経験しているような落ち着いた年齢の男性が多く、また応対もプロ!という感じでキビキビと動いているのでそこもまた非日常を楽しむ1つのスパイスになっている。ここは最早フランス・食のテーマパークなのだ。

いつもだいたい頼むものは決まっていて、日替わりの肉料理と魚料理を一つずつ。1点1500円という安さもさることながら、もちろん味もお墨付き。私は肉がまだ苦手だから魚料理のタイのバターソテーを。母は牛肉の煮込みを注文した。本当はもっとおしゃれな名前だったけど。

しばらくするとバケットが先に運ばれてくる。今日のバケットはハートの形に切られていた。また乙な計らいをすること、流石オーバカナル・・・こんなバゲット初めて見たよ・・・。そしてもちろん美味しいお味。流石オーバカナル・・・。ここでがっちり今日も心を掴まれるとは。

なんという粋な計らい!嗚呼オーバカナル

メインも運ばれてくるとこちらのテンションも最高潮。
付け合わせのインゲンの緑さえ美しく、タイはカリッと焼かれた皮が見た目から美味しさを約束してくれる。
ナイフで切って、フォークで刺し、付け合わせのマッシュポテトとケッパーと合わせて口に運べば、タイのあっさりにバターとマッシュポテトのコッテリ感、ケッパーの塩気と程よい酸味が合わさって選んで大正解!の紙吹雪が脳内を舞う。彩り担当のインゲンだって程よい茹で加減で豆の味を感じるし、タイとも仲良く調和してくれる。

フランス語にとまどい、緊張しながら食べるパリのブラッセリーのランチよりも、オーバカナルで手練れのベテランギャルソン(もちろん日本語OK)に身を任せて食べるランチの方がいいじゃない。
窓から外を見渡せば暖かい日差しの差し込むテラスで食事をする人たち。嗚呼、春はすぐそこだなあなんてのどかに思えるのも、この紀尾井町のオーバカナルだから。

今日はその後予定があったから食べなかったけど、だいたい母とテンションが上がってデザートも注文してしまう。
去年の同じ時期には「バレンタイン付近限定で」という魔法の言葉と、そのビジュアルにやられていちごとチョコレートのタルトを注文してしまった。
アポロをタルトにした夢みたいな、しかも馬鹿でっかいタルト!オーバカナルかハーブスどっちかじゃないとお目にかかれないサイズ感!

いちごムースとチョコムース、その上にかけられたチョココーティング、全ての甘さに最後はグロッキーになりながらも平らげた時、苦しさに紛れた幸せを手にした。ここまで楽しんでオーバカナルというテーマパークを閉園時間まで堪能して、夢現で帰る感覚。

次に四谷に母と行くのはいつの日になるか。その日のタルトに期待をして、またオーバカナル入園の日を密かに楽しみにしながら春の訪れを待つ。
夏のフルーツなんてのも良さそう!

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