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《読書感想文》 西加奈子さんの「うつくしい人」を読んで。
ありのままの自分――この世のあらゆるヒエラルキーから離脱した本当の自分であることが、あらゆる解決をもたらすのではないかと思うことがよくある。
でも、この世にはあらゆるところに「基準や価値観」があるから、「比較・批判・判断」の連続だ。
だから、本当の自分を見失いがち。
小説 “美しい人” の主人公――百合も自分を見失った。
「やらなくちゃ、やらなくちゃ、やらなくちゃ。しなきゃ、しなきゃ」
百合の心は忙しい。
外にアンテナを貼って、他人の目を気にしながらびくびくと生きていたから、社会人になったある日、突然鬱状態にストンと入ってしまう。
体が全く動かなくなり、涙だけがハラハラと落ちてるようになってしまった。それから、百合は発作的に旅に出て、とあるホテルに泊まる。
そこで、彼女はひと目を気にしない、あるいは気にできない「ありのままの人間」に出会う。世の中の波に飲まれることさえできない不器用な人たちに――その不器用な人たちはおそらく発達障害を抱えている――西さんの小説には、よく出てくる「ありのままでしかいられない尊い人々」に。
すると世の中の規定、条件、比較に翻弄されて自身を失った彼女の心に、変化が起きる。
「もうどうでもいいじゃない!」
「許せなかったことを手放してしまう」という心情のダイナミックな変化が描かれていた。
「自分の気持ちが変わると、見える景色が変わる。同じ海でも、同じ空でも、見え方が変わっている」
西さんは、そういう心が変わると見える景色が違うことを書きたいと言っていたけれど、そのガラリと見える景色が変わる感じが好きだ。
「フィルターがぱっと変わったら、世界は美しかった」っていう感じがすごく好きだ。
読み終えて想像した。
「百合は、吹っ切れはしたけれど、きっとこれからも悩むのだろうな。でも、悩みながら、時々転びながら、それでも立ち上がって進んでいくんだろうな……」と。
そして、共感したから救われた。
「みんな、人間弱いんだな。格好悪くてもいいじゃない!私も、悩みながらでも進んで行こう!」って思った。
落ち込むことも、もがくことも、そこから抜け出すことも、とても人間らしい。
誰かが言ったように、私達が、喜怒哀楽を味わうために生まれてきたのなら……。
「もうどうでもいいじゃない! 味わい尽くしてやるわ!」と思えた。
西さん。いつもありがとう!
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