ショートストーリー№10「幸せな女」
彼女は幸せだった
あまりにも嬉しくてつい叫びだしたくなる
彼と出会えたことでそれまでの孤独から解放された
たとえ周りから嫌な女だと思われたとしても
そんなことしたら不幸になると分かっていても
なぜなら彼は同僚の夫だから でも平気だった
初めて二人きりで食事に誘われた時は
戸惑いの方が大きかった
なぜ?どうして?という気持ちが強かった
同僚は妊娠を機に退職していたけれど
彼は育児休暇までとっていたのに
会社に復帰してしばらくしての出来事だった
自分でもよくわかっていた
このような関係が長く続くわけがないと
でも彼と付き合うようになってからは
信じられないくらい眠れるようになった
どれだけ仕事が忙しくて疲れていても
けして熟睡することなどなかったのに
一度だけ同僚たちと彼のマンションに行ったことがある
出産祝いという名目だったけれど私は行きたくなかった
それなのにベビーベッドに眠る男の子を見ていると
「可愛らしい男の子ね羨ましいわ私は仕事を選んだから」
とつい口に出してしまった 同僚はどう思っただろうか
当時の私は結婚より仕事を選んだことを後悔していた
優しい彼は週に2~3回は私のマンションに来てくれる
そういった生活が20年近く続いているのはすごいことだ
出来ることならこの幸せが少しでも長く続くことを
願わずにはいられない 彼が来ない日には
祈るような気持ちで次に会える日を待っている
彼がいないときの私は別の世界を彷徨っている
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