Re;青春

Re;青春

「今だから言うけどさ、アンタ、パンツ見えていたからね。」
そんな台詞だってお手の物。
数えきれないアタシたちの思い出。

また桜の季節になる。
私たちのいたずらな季節。
短い制服のスカートに白いソックス。
生活委員の先生と校則ぎりぎりの攻防。
世界の中心は自分だと思っていた
最強無敵のアタシたちの時代。

アタシたち田舎の高校生なんて、せめてティーン向け雑誌で東京のギャル事情を知るくらいで、
実際のところ、こんな田舎には都会の女子高生が買ってかわいく着ている洋服なんか売ってなかった。
で、街で唯一、都会でも売っている洋服のショップに行っては、「都会の子はいいなぁ。」ってハイビスカスのロゴマークを眺めるくらいが精いっぱいだった。
だいたいそこで売っている洋服の値段は高校生にしては高すぎで、バイトして買えるかどうか、それはその人の力量にかかっていた。
それでも自分の使えるお金の範囲でできるオシャレをめいいっぱいするときで、
そのあやうい不完全がすべてで、それでとても完成された世界だった。

アタシと彼女は家が近所でかつ同じ高校っていう腐れ縁で、
背格好だってチビとノッポのでこぼこコンビで、
同じ○○君を好きになってバレンタインのチョコをあげるあげないで、
中学時代に大きなケンカをしたり、
運動部でしっかり汗を流してすっきりカッコよく歩く彼女と、
地味でおとなしくて図書室で本ばっか読んでいる私は、
周りから見たら共通点なんかぜんぜんなさそうに見えていたと思う。

わたしは地味ながらもたまにスカートを短くしたりしてみたり、
色付きリップをくちびるに塗ってみたりして、
自分なりの高校生活を楽しんでいたのだが、
それをいつも面白がってくれたのがこの腐れ縁の彼女だったりした。

あのころ自転車ひとつあればどこにでも行けた。
お洋服屋さんにも一緒に行ったし、桜の木があればその下に二人で座って、
コンビニで買ったお菓子とペットボトルのミルクティーを持って、
ずっと学校の友達のことや好きな人のこと、これから先の進路とか、ずっとしゃべっていられた。

今年も桜は咲く。
私は一人桜の木の下に立つ。
それでもスマホに送られてくるのは、
子供と一緒に映った彼女の写真と昔と変わらない口調のメッセージ。

「だいたいアンタ、あんときスカート短すぎて、パンツ見えてたからね。」
「えー?だってわかってたけど、短いほうがかわいいし、それに男の子にアピールできるとおもって。」
「はあぁ?なんでそれが男子にアピってることになるのかがわかんない。」

思い返せば笑い話ばかり。
そして今でもその笑い声は時々近くにやってくる。
桜のいたずらかのように、
そっと、それでいて優しく。
もう一度、巡り巡りゆく、そんな季節に。

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