まどろみ
まどろみ
その日、白くまばゆいひかりのなかで、
わたしはゆっくりと目を覚ましたのだった。
ぼんやりとする意識の中で、
これが彼の腕の中だと気づくのに、
少し時間がかかった。
「あぁ、夏至だ。」
わたしの待ち望んでいた、ミッドサマー。
私の薬指にはプラチナにムーストーンのちいさな石がはめ込まれた指輪が光っていて、
現実の世界に戻っていくのに、
このムーストーンの乳白色の色が、ナビゲーターになってくれていた。
最近のわたしは家の環境を整えていた。
居心地がよく、私がただそのままでいられる場所。
ベッドフレームを新しく新調し、白いシーツに変える。
蟹の甲羅が固く強靭なように、
わたしも自分の部屋という内側を優しく穏やかに過ごせるように整えていく。
「起きたの?」
寝返りを打てば、安心する手がすぐそばにある。
私のちいさな寝返りもすぐに気づく大きな手だ。
「大丈夫、少し、お水のみに行くだけだから。」
「すぐに帰ってきてね。」
ほんの僅かも離れないで。とわたしを閉じ込める腕。
ここでわたしは息をすることを許されている。
夏は短い。
今年は夏至と新月と日食が重なるという。
白い夜に、わたしは新しいベッドで、
夜明けをただただ眺めては、
そのまどろみから離れたくない気持ちと
隣で眠る彼の寝息のそばにいられる幸せをただかみしめるのだった。