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食堂の彼女

下品だと思う。食堂の彼女を。
なんて下品なんだろう。二本の箸がカチンカチンと音を立てる。

彼女はそれを一本ずつ片手に持って、あろうことか机を叩いていたのだ。

僕は途端にこの子が信用ならなくなった。
普段の彼女はとても健気で好きなんだけど、ねぇ、これは動物の思いなんだよ。

ご覧、彼女の皿の上を。あの芸術的に撒き散らされたミートソースを。あれを見ると僕はもう、もう痛い気分になったね。まるであのひき肉は僕の腹わたのような気がしたね。夢の跡。だいたいなんで、ミートソースパスタにお箸なんだ。僕はね、許せないよ。由々しき事態だよ。重ねて言えば、これは動物の思いなんだよ。たしかに、僕は神経質なほうだ。かといってーー

「おいしいねぇ」

転がり出てきた彼女の声につんのめって、思わず前かがみになる僕。にんまりした彼女の口の周りでは、ミートソースが前衛的な模様を描いてこちらを見てる。あぁダメだ、やっぱりダメだ、敵わない。バカみたいな五七五。

「……口周りを拭いてください」

頭を抱えた僕に、あっありがと、と彼女が僕のお手拭きで口を拭う。おいおいおい。やっぱりーー

「ね、明日も一緒に食べようね」

わかったから、そんなにふにゃふにゃ笑うなよ。度々言うけど、これは動物の思いなんだ。

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