【詩】 child
体温を計ると庭先には春の匂い、ぼくは爪先から引力を疾走するムカデになりたかった。
お母さんについて酷く思い付くのはそうして朝を省みず後ろめたく家出した昨晩、泣きながら戸を叩くボーイフレンドの嘘つきな加減から、たまらなく虚しい夜の底を仰いだ気になる。
バターを切るときにバターナイフを使いたくてどうしても、ぼくはその指を仕舞った、朝。
人を化かす恋の季節が湖を埋めるとゆるやかなカーブで思い出す、塩味の青がもうパンへ染みた。
*
大胆な下着を譲り受けたぼくのクローゼットは涙でいつでもパンパンだった、地下鉄のルームメイトと地平を焦がす約束をして、わかれたホームはなるべく温度を失わなかった。
コバルトブルーのズボンの裾で言語のきっかけをさがし、滝のなか現れる残像をいつの日も追いかけた子供にすぎない。
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