マガジンのカバー画像

アカネの小説

43
アカネが書いた小説を入れるマガジンです。
運営しているクリエイター

2019年7月の記事一覧

【連載】訪問者4(魔法仕掛けのルーナ22)

【連載】訪問者4(魔法仕掛けのルーナ22)

(このシリーズがまとまっているマガジンはこちら)

 アレクは砂利道に立っていた。両脇は背の高い石の壁で、正面にまっすぐ行くと左右に道が分かれているようだ。突き当たりに植え込みが見える。
「おっと、立ち止まるなよ。行った、行った」
 急かされて振り返ると、先ほどくぐった煙のカーテンからジョージが顔を出したところだった。アレクは慌てて後ずさった。
 間も無く煙の中からジョージが全身を現し、アレクの横

もっとみる
【連載】訪問者3(魔法仕掛けのルーナ21)

【連載】訪問者3(魔法仕掛けのルーナ21)

 アレクは控えめにあたりを見回した。
 通りから向かって正面、右側に戸があった。その他の壁面にはいくつも木の板が打ち付けられ、棚のようになっている。が、ほとんど何も置かれていない。どれも高い位置にあり、手前を天井から紐で吊って安定させているようだ。
 視界の端で何か動いた気がしたので何の気なしに振り返ると、棚の上で丸くなっていたまだら模様の猫が、ゆっくりと瞬きをしたところだった。
 えらくどっしり

もっとみる
【連載】 訪問者2(魔法仕掛けのルーナ20)

【連載】 訪問者2(魔法仕掛けのルーナ20)

 脇道に足を踏み入れたのは、ちょうどアレクが二つ目のサンドイッチを食べ終わった頃だった。大人二人が並んで手を伸ばせば壁から壁に手が届きそうな、細い道である。右方向に緩やかにカーブしており、先が見えない。ついさっき通り過ぎた地味な戸は、民家の戸だろうか?
 やや先行して歩いているジョージは涼しい顔をしている。右手にぶら下げている紙袋には、まだ確かな重みがありそうだ。
「お、いたいた」
 彼が独り言の

もっとみる