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2019年3月の記事一覧
【連載】 魔法使いの街6(魔法仕掛けのルーナ18)
「ところで君、前にどこかで会ったかな?」
男が顔を近付けてきた。彼は顎に手をやり、目を細めている。
アレクは予想外の質問に面食らった。
「え? いや、それはないと思いますけど……」
「本当に?」
「だって僕は、この街に来たのは今日が初めてで……」
「そうか。うーん、どっかで見た顔だと思ったんだけどな」
男はまだ納得がいかない様子で、アレクの顔をじろじろと見ている。と思ったら、急に何かに驚いた
【連載】 魔法使いの街5(魔法仕掛けのルーナ17)
攻撃が止んだ。
ダランが手を下ろし、声がした方に訝しげな視線を送る。その顔がさも不快そうに歪んだ。
取り巻きの二人も同じように顔をしかめている。
「うわ、ミスター・ビーだ」
「まだこの街にいたのか」
(なんだ?)
うずくまっていたアレクは、呼吸を整えながら目だけを動かそうとした。すると、不意に何者かの手のひらが視線を遮った。
「君、大丈夫かい?」
声はすぐそばから聞こえた。いつの間に近付
【連載】 魔法使いの街4(魔法仕掛けのルーナ16)
声がした方を見ると、先ほどから何度も出くわしている男性客達が、ニヤニヤと無遠慮な視線をこちらに向けていた。
「迷子かぁ? 田舎モン」
一人が大声で言うと、残った二人があたりを憚らずに笑い声をあげる。
アレクは内心ムッとしたが、努めて表情には出さなかった。
(どっちも事実だ、落ち着け。意地を張ってもどうにもならないぞ)
彼は何食わぬ風を装って男達に近付いていった。距離が狭まるにつれて男達の顔
【連載】 魔法使いの街3(魔法仕掛けのルーナ15)
走りに走って、ようやく目指していた場所に辿り着いた時、アレクは疲労困憊といった様子だった。もう余計なものには関わるまいと気を張っていた結果だろう。
彼の目の前には森があった。
人工物にあふれた街中とは打って変わって、自然のままの姿を保っているように見える。ほんの入り口に立っているだけでも静謐な香りが鼻腔に届き、アレクの心は落ち着きを取り戻していった。
(兄さんの家は、この先だな)
ちらと背
【短編小説】 わたあめ姫
あるところに、ひどい癖毛の王女様がいました。
王様も王妃様も髪の毛には癖一つないのに、王女様の細い髪の毛はいつだってぐしゃぐしゃ。お城の召使いの手には負えず、あまりにも絡まりすぎてふわふわの丸い雲のように見えたので、王女様は国のみんなから『わたあめ姫』と呼ばれていました。
王女様は毎日鏡を見つめては、「こんな髪型じゃ、どんなに素敵なドレスを着ていたって台無しだわ」とため息を付いていました。