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2019年2月の記事一覧
【連載】 魔法使いの街2(魔法仕掛けのルーナ14)
アレクは戸惑っていた。
黒髪を短く切り揃えた中肉中背の若者である。彼の深い緑色の瞳が、不安そうに揺れている。
いくつもの馬車を乗り継いでやっとたどり着いた都《みやこ》は見知らぬものに溢れていて、とても故郷と地続きとは思えなかった。
まず、街路を行く人の量が違う。実家で飼っている羊よりも多そうだ。加えて彼らの服装の華やかなこと! 結婚式でもあるのだろうか? だとすればこの人通りもある程度は納
【連載】 魔法使いの街1(魔法仕掛けのルーナ13)
フリードは、辺境で羊飼いを営むシアン家の第一子として生まれた。
彼は純朴で優しい両親のもとですくすくと成長し、やがては家業を継ぐものと思われていた。しかし、三歳になる年に魔法使いの適正を見出されると、彼の慎ましやかな人生は一変する。
魔法を使う能力を有する者は例外なく『学園』に所属し、何年もかけて自らの力を制御する術を学び、我が物としなくてはならない。この規則に逆らうことはできない。なぜなら
【連載】 ジョージ・ホーネット6(魔法仕掛けのルーナ12)
「あんたいい加減、私とフリード以外ともちゃんと付き合いなさい。いい歳なんだから」
フリード——俺のもう一人の友人。『学園』の管理する森の中に居を構え、魔法薬の研究をしている魔法使いだ。しばらく会っていないが、相変わらず男一人で静かに暮らしていることだろう。
フリードのことを考えていたら、思いついたことがあった。
「ハウスキーパーでもやってやるか」
「は? 何の話?」
「ほら、あいつ集中してると
【連載】 ジョージ・ホーネット5(魔法仕掛けのルーナ11)
結果だけ言うと、ミス・サリーはよくやった。あのような出鱈目な物体を歩行させることに成功したのだから。それも三歩もだ。
その後ゴーレムは転倒した衝撃と自重で崩壊してしまったが、女性二人は抱き合って喜んだ。見守っていた俺も思わず立ち上がって、彼女たちに心からの賛辞を捧げた。
だって考えてもみろ。せっかく四本もある足が密集して一列に生えていたんだ。歩けそうに見えるか? 俺は到底不可能だと思っていた
【連載】 ジョージ・ホーネット4(魔法仕掛けのルーナ10)
「見ればわかるでしょう」
「わからないから聞いてるんだよ」
ヴィヴィアンはキョトンとしている。「こいつは何を言ってるんだ」とでも思っていそうな顔だ。
俺はあらためて魔法陣の上に陣取っているそれを観察した。
まず、色は土の色そのままだ。着色はされていない。大きなナスみたいな形の、胴体? の下に、一列に並んだ四本の細長いパーツ——足かな?——が、ついている。地面と接する部分は、ボールに突き刺した