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2019年1月の記事一覧
【連載】 ジョージ・ホーネット3(魔法仕掛けのルーナ9)
「オーケイ、今日も起動試験だね」
俺は手のひらの上の鉱石を——小石といった方がしっくりくるが——顔に近づけてみた。
見た目は、ライムグリーンの下地にミルクを散らしたような、細かいまだら模様だ。形や大きさは完全に角砂糖なのだが、サイズに反して確かな重みがある。
何の石かはわからなかった。魔法で一から生成したのだとしたら判別しようがないので、深く考えるのはやめておく。
俺は鉱石を上着のポケット
【連載】 ジョージ・ホーネット2(魔法仕掛けのルーナ8)
陽が昇り賑わい始めた通りを一つ一つ、通り抜けて行く。
雑踏に包まれるのは嫌いではない。長身のおかげでどこにいても視界は良好だし、大抵は周囲が避けてくれるのでぶつかることは少ない。
今も、遠くから俺の顔をチラッと見るなり「げっ」という表情になり、回れ右した男がいた。自慢じゃないが、俺は『ある人々』の間では有名人なのだ。特に同世代であれば俺の顔を知らない奴はいないだろう。きっとさっきの男も、俺を
【連載】 ジョージ・ホーネット1(魔法仕掛けのルーナ7)
君の友人は何人いる?
俺は二人だ。
羨ましいだろ? 分けてあげないよ。
寝起きはいい方なんだ。
俺は今日もいつも通りの時間に、自然に目が覚めた。まぶたを開くと波が引くように眠気が去り、意識が冴えていくのを感じた。
俺に身を寄せて一人の女が眠っている。昨夜買ったナンシーという名の娼婦だ。俺は彼女を起こさないようにそっとベッドから抜け出して、ローブを羽織る。疲れているだろうからもう少し寝
【連載】 フリード・シアン5(魔法仕掛けのルーナ6)
研究所の小さな窓は、あっという間にてるてる坊主で埋め尽くされた。僕らは別の窓を求めて廊下に出た。
「おや?」
僕はすぐに異変に気付いた。
ルーナは立ち止まった僕にはお構いなしに、僕の脇をすり抜け、廊下の窓の前でいそいそとてるてる坊主を取り出している。
僕は別の窓の前に立ち、思い切ってそれを開け放ってみた。
冷たい、湿った空気が頬を撫でながら入ってくる。同時にしとしとと静かな音が聞こえてき
【連載】 フリード・シアン4(魔法仕掛けのルーナ5)
既視感があった。
紐でくくられた白いハンカチ。丸く膨らんだところに書き込まれている点と線。あれは顔だ。僕も小さい頃に作ったことがある。
これをなぜ彼女が? いや、そう見えるだけで別の何かかも……。
「……ルーナ」
呼びかけると、彼女の手の動きがピタッと止まり、スーッと首がこちらを向いた。エメラルドグリーンの瞳が僕の顔を見据える。
「はい。ご主人様」
抑揚のない、判で押したような話し方だが
【連載】 フリード・シアン3(魔法仕掛けのルーナ4)
それはそうと……
「ルーナ?」
もう一度、声を大きくして呼びかけてみたが、聞こえてくるのは雨音だけだった。
ルーナは呼べば必ず返事をするか、そばまでやって来る。そのどちらの気配も無いということは、僕の声が届く範囲にいないか、その場を離れられない事情があるのだろう。
やれやれ、またどこかで立ち往生しているのかな?
僕は廊下へ出て、もといた部屋のドアを閉じる。そこで周囲を見回してみたが、人影
【連載】 フリード・シアン2(魔法仕掛けのルーナ3)
図書館の行き帰りくらいは問題なくできるようになったと見て、次は買い物を覚えさせようと、僕はルーナを連れて商店街へ出かけた。
雑貨店の前で立ち止まって買い物に必要なことを教えていると、店員の女性が話しかけてきた。
「いらっしゃい。お兄さん、よく来てくれる人よね」
「こんにちは。はい。お世話になってます」
おそらく60歳くらいだろう、人当たりのいい気さくなご婦人である。
彼女はルーナの全身をま
【連載】 フリード・シアン1 (魔法仕掛けのルーナ2)
「あれ?」
いつもの引き出しを開け、差し入れた右手が空を掴む。覗き込んで見ると、中は空っぽだった。
その下の段も開けてみたが、やはり何も入っていない。
僕はきょろきょろと部屋の中を見回した。しかし、探し物はすぐ目に入るところにはないようだ。
「ハンカチはどこに行った?」
僕の囁きは、窓を叩く雨音にかき消された。
仕事を始める前に身支度を整えようと思ったのだが、上着のポケットに入れておくハ
【短編小説】ぼうやとシロヒゲ うなるオバケ
小さなぼうやと小さな黒猫のシロヒゲは、仲のいい友達です。
ぼうやが庭で遊んでいると、時々ひょっこりシロヒゲがやってきて、のんびりぼうやとお話をしたり、おやつを分けてもらったりして、夕方になるとフラッとまたどこかへ帰って行くのでした。
その日、ぼうやは砂遊びをしていました。
「ヤァぼうや」
「やぁシロヒゲ」
シロヒゲの声が聞こえたので顔を上げると、ぼうやは「おや」と思いました。
シロヒゲ