日本いい橋探訪その2:あちあちアーチ橋編。
色とりどりのアーチ橋を楽しむ方法について、お話しします。
しゃあっ 橋解説の時間だああぁぁぁっぁぁぁあああ!!!
皆さんお待ちかねの「日本いい橋探訪シリーズ」、第2回はアーチ橋についてです。
アーチ橋の何よりの良さといえば、やはり、素人目でも理解るその構造的美しさ。
丹念に削られた素材が組み合わされ、宙を舞い弧を描き、不思議と心惹かれる物体として町なかに、自然の中に佇んでいる。
眼前にあるこのバカでかい橋は、いったいどのような原理で成立しているのか??
それは、よくわからないのだけれど… それでも、純粋な幼子のような心地でもって、美しいと確かに思える。
そんな魔性の魅力を秘めているのが、アーチ橋なのです。
というわけで今回も、工学的な知見については彼方に置いておいて、アーチ橋の名称をなんとなく諳んじることができる程度に覚えていきましょう。
トラス橋は漢字多めでゴツゴツした印象だけれども、アーチ橋は外国語多めのカッコイイ感じがして、ついつい口ずさみたくなる。
前回登場した要素もたくさん登場しますので、併せて閲覧していただけると便利だと思います!
素材面での分類
さあ始まりしたアーチ橋回、まずは素材面での話。
トラス橋は鉄骨が大前提でありましたが、アーチ橋は構造特性の優秀さ故に古くから選ばれてきた様式であり、それぞれの時代地域に合わせた素材でもって建造されてきました。
すなわち石材アーチ橋、煉瓦アーチ橋、鉄骨アーチ橋、コンクリートアーチ橋など。
もちろん、現代工学ではより頑強な素材である鉄骨やコンクリートを用いるのが常ですので、新造するに際しわざわざ石材や煉瓦を選ぶ理由は(景観上や話題性を除いて)無い。
つまるところ、歴史ある煉瓦アーチ橋などは貴重でとてもエモい、ということですよね!
そもそもアーチ橋とは、橋梁の主桁部分へ鉛直方向にはたらく荷重を、アーチ部への圧縮力と釣り合わせることで支持する構造です。
専門的なことは兎も角、すなわち、アーチ部の曲げる力に対抗する力をもたせ(剛性)、構造全体で断面が変形しないように抵抗する力(曲げモーメント)を分担しています。
ローゼ橋・ランガー橋
紙上談兵、学ぶよりも実例を見て検討しましょう。
まずはローゼ橋。アーチ橋の基本であり、アーチと桁が同じくらいの太さになっているもの。
アーチ部材と剛性のある主桁(補剛桁)により曲げモーメントを分担しているため、このような見た目となるわけですね。
アーチ橋の基本その2はランガー橋。
ローゼ橋と同じくアーチ部から垂直に吊り下げられている橋ですが、ローゼ橋に比べてアーチ部の部材が細いのが特徴です。
補剛桁が曲げモーメントを引き受ける一方、アーチ部材は圧縮力のみを負担するため、このような見た目となるわけですね!
工学の話は終いにして、ここで前回の復習を。
橋の基本的な構造のうち、路(=主桁)がどこにあるかで「上路式」「中路式」「下路式」に分類され接頭辞が付くのでした。
こちら祝橋は「上路式コンクリートアーチ橋」ですね。
というわけで、アーチ部が路の下にあるランガー橋・ローゼ橋も存在し、これらは「逆ランガー橋」「逆ローゼ橋」と呼称します。
アーチ部材による分類もあります。
というよりは、ローゼ橋・ランガー橋(補剛桁アーチ)ではないアーチ橋たちの一群を、アーチ部材の太さや素材で名前を付けた橋たちです。
ソリッドリブアーチ橋は、アーチが棒状あるいは主桁と同じような断面となるもの。
I形、箱型断面、鋼管を用いており、まァ、ふつうに想起する鋼製アーチ橋のイメージですね!
ボウストリング・バランスドタイドアーチ
続いてボウストリング橋・バランスドタイドアーチ橋は、上弦材の格点が円弧を描くアーチが特徴。
タイドアーチとは、アーチリブの両支点部に生じる水平反力を路面の桁に受け持たせる構造のこと。
主桁の下のアーチ端部間をタイ部材で連結し、アーチがふにゃっと曲がらないように(大きすぎる水平反力が生じないように)しているわけですね。
さらにこちらのブレースドリブアーチ橋は、アーチがトラス状で補強されているもの。
トラスドランガーのトラスを、アーチ部に濃密に重ねた印象であると言えましょうか。
その迫力の中に緻密で繊細な感じがもたらされ、実に美しい。
そして、アーチとその上に支えられる橋床を含む面全体がトラスで充腹される上路式の橋は、スパンドレルブレースドリブアーチ橋と呼びます。
声に出して呼びたいですね!スパンドレルブレースドリブアーチ橋!!
煉瓦隧道のアーチ部
ちょっと休憩。
せっかくアーチについて取り上げたので、煉瓦隧道のトンネル坑口アーチ部についても考えていきましょう。
美しい円形を描くそのアーチ環は「迫石・要石構造」と呼ばれ、要石はしばしば美麗な花崗岩であり、全体の印象に良いアクセントを与えています。
扁額には隧道名や揮毫者名、開通年などの記載があり、情報の宝庫。
ぜひ積極的に読んでいきたいですね!
トラスドランガー・ニールセンローゼ
それではアーチ橋の話に戻りましょう。
こちらトラスドランガー橋は、アーチからの吊材がトラス状に支えられている橋。
中規模な谷間にしばし架橋されているイメージがあります。
トラス橋とアーチ橋の良さが合わさって最強に見える。
こちら柔らかい印象を受けるアーチ橋はニールセンローゼ橋。
アーチと補剛桁を鉄骨ではなくケーブルで張った橋であり、大都市の中でもよく見かける気がしますね!
また、アーチリブが内側に集まる形式をバスケットルハンドル型と呼びます。
† バスケットハンドル型ニールセンローゼ橋 †
かっけぇ…
太鼓橋、その他例外
その他、アーチ橋?かどうかやや判断しかねる橋です。
太鼓橋はその名の通り、太鼓の胴のように著しく上へ丸く反ったアーチ橋。
こちら住吉大社のものは「反橋」との名称が付いていました。
このように神社境内や日本庭園、中国庭園でもしばしば目にしますね。
最後に、見た目は確かにアーチ状なのだけれど、構造上は全くアーチ橋ではないものたち。
羽田スカイアーチはアーチありきでケーブルを張っている特殊な斜張橋、ポートブリッジは橋の真横にアーチ状のモニュメントを置いているだけの橋。
「アーチ」という構造の美しさが故、わざわざ装飾として採用されたのだと言えますね!
まァ、ここまで読んでいただいた皆さんであれば、アーチ橋であるか否かの区別は容易でしょう。
おわりに
以上、アーチ橋を愛でつつその名称を覚えようという試みでありました。
改めてこうして分類してみると、トラス橋と同じく種類がなかなかに多様であり、理解していくのは大変ですね…
しかしながら、何よりも「アーチ」は観察していて美しさを感じるものであるし、その感動を知識で補強できるようならば、とてもステキな旅行の思い出になること間違いなし。
樹のあるごとにこのブログを読み返して、着実に覚えていきたいですね!
「桁橋、ラーメン橋、吊橋、斜張橋、エクストラドーズド橋、潜水橋、可動橋、…」
まだまだあるなァ(遠い目)
…近いうちに、また考察していきましょう。